従業員エンゲージメントの向上が、企業成長を促進させる

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従業員エンゲージメントの向上が、企業成長を促進させる

 先日11日、組織人事のコンサルティングにおいて世界的規模を持つエーオンヒューイット社が「従業員エンゲージメント」に関するグローバル調査結果を発表した(実施は2015年)。本調査は90年代後半から毎年実施、公表されているもので、対象国数は170カ国、企業数は約9,000社、社員900万人以上(内、日本人は9万6,887人)という非常に大規模な調査だ。日本では今回、1,000社以上の企業が調査対象となった。

 エンゲージメントは通常「ブランドとの結びつき、共感性」等と訳される。企業やサービスに対しユーザーがどれだけ親密さを感じているか、親しみを持っているかという指標だ。 

本調査のエンゲージメントは「従業員から見た、従業員と企業の結びつき」とでも言えるだろうか。同社は独自指標として「企業ブランド」「リーダーシップ」「パフォーマンス」「業務」「生活の質」「会社の諸制度」という6領域で約100問の設問を設置。その解答から所属企業に対するエンゲージメントを計っているのだが、残念ながら日本はこのエンゲージメントにおいて長年にわたり世界で最下位層に位置し続けているそうだ。

 これらの調査は最終的に3つのベクトルで数値化される。その数値の世界平均は65%で、多くの国が60%前後に集中していた。これはつまり、100人のうち60人が自社と仕事に対する愛着心を持っているということ。そうした中で、日本の従業員エンゲージメント平均は40%未満であったとのことだ。

 このような結果をどう受け止めるべきだろう。従業員エンゲージメントの低下は、離職率や生産性にネガティブな影響を及ぼす可能性があるのは、想像に難くない。この問題に、企業経営陣や人事は、どう対処していけば良いのだろう。

 日本企業のエンゲージメントが低いワケには様々な要因が考えられるが、その1つに「従業員が企業に求めるもの」が変化、多様化している現状が挙げられる。例えば、かつての日本の高度経済成長期やバブルの時代などにおいて従業員が求めるものは「高い給与」「(良い組織に属することで得られる)社会的ステータス」が主であった。しかし、現在のそれは明らかに変わりつつある。

 様々なメディアでも言われているが、例えば現代の従業員は、企業に「仕事のやりがい」「社会貢献性」「キャリアの構築性」などを求める兆候にある。読者の方々も一度は聞いたことがあるだろう。優秀な若者が社会的貢献性の高いNGOに入ったり、給与は下がるが仕事の自由度が高いベンチャー企業に転職したりするなど……。またそれに加え、グローバル化による人材の多様化や、女性の社会進出において働き方の多様化などが叫ばれている。一義的にはまとめられず、様々な価値観が錯綜しているのが、現代の雇用環境なのだ。

 様々な価値観があるなかで、どのように経営の舵を取っていけば良いのだろうか。選択肢の多様化を大事と捉えず、変化に合わせた経営をしなければ、従業員エンゲージメントが低下し、時代に取り残されてしまうのは想像に容易いだろう。企業はこの流れに、どう対応していくべきだろうか。

 1社、現在まさに従業員エンゲージメント向上に力を入れている企業がある。コマツグループ(小松製作所)だ。
 同社の設立は1921年。2015年3月期の売上高は約2兆円で、世界に138社の子会社を持つ。従業員は約47,000人おり、そのうち約60%が外国人という日本発のグローバル企業だ。BtoB企業ながらテレビCMを放映しているので、ご存じの方も多いだろう。
 
 同社は12年4月、従業員エンゲージメントの向上を目的に「コマツウェイ」の強化に乗り出した。コマツは前述の通り、長い歴史を持ち、多様な人材で構成された大規模組織である。そうした中でいかにコマツがコマツとして持続していくのか、多様化する社員の価値観と向き合い、会社の文化と目標を統一化していくのか。そういった課題の解決を目指すべく06年に「コマツウェイ」を制定した。コマツの強みを具現化するために、「人が変わっても脈々と受け継いでいって欲しい考えや心構え、行動基準」を、世界中のコマツグループ社員が共有すべき価値観として明文化したのだ。

 同社はこれを世界中のグループ会社に配れるよう多言語で作成。また内容をトップマネジメント編、全社員共通編(モノ作り編)、ブランドマネジメント編の3編に分け、あらゆる国柄、あらゆる階層の従業員にも対応できるようにし、コマツに所属する限り、永続的に活用できるよう1冊の冊子にまとめた。またそれだけでなく、12年度から国内主要拠点とグループ会社において管理職層に対する説明会を実施。また同層が自ら、現場の従業員に日常業務を通して考え方や心構えを伝えるという活動も開始。あらためて、より一層の浸透を強化したのだ。

 もちろんその活動は一過性のものではない。現在でも引き続き行われているが、今ではその輪が全世界に広がり、説明会もグローバルマネジメントを基軸としたセミナー、またグループ会社の経営体制そのものもコマツウェイを継承しながら、現地主体の経営に移行しつつある。

 従業員エンゲージメントの強化。それは従業員の価値観の多様化、また企業のグローバル化に備えて決して避けては通れない道だろう。
また、これらの施策はコマツだけに必要であった施策ではない。より複雑になっていく経営環境において、より一層従業員に対する、帰属意識や誇りの醸成、この組織で働く意味付けなどが求められているのではないだろうか。

経営環境の複雑さは、今後さらに加速していく。そうした中で、いかに従業員のエンゲージメントをあげ、生産性を向上させていくか。あらゆる企業が考えるべき課題であり、企業の発展には欠かせない要素である。

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