習慣

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ビジネスマネジメント・レビュー

習慣



人の普段の習慣が、その方のパフォーマンスに及ぼす影響は大きい。かの松下幸之助氏も 「人間の運命を変えようと思ったら、まず日々の習慣から帰るべし」との言葉を遺している。 良き習慣が望ましい結果につながりやすく、その逆もまた真であることは想像しやすいであろう。
同じことは企業にも言えまいか。
例えば、先日も燃費データ偽称で苦境に陥った某自動車メーカーには、代表的な悪しき習慣の一つ「隠ぺい」が見受けらえれる。過去に2度、リコール隠しがやり玉に挙げられ、隠ぺい体質は以前より指摘される所であったが、それが習慣化していたことが裏付けられた形だ。ついには他の大手メーカーの軍門に下ることを許した、同財閥企業が匙を投げるのも頷ける。
こうした不祥事例には至らずとも、習慣はむしろその影響が短期的には表面に現れにくい代物だ。良い会社であっても潜在的に自爆的な習慣が潜んでいると指摘するのが、 Jagdish N. Sneth著の「The Self-Destructive Habits of Good Companies」だ。下記の7つの悪習が挙げられている。

1. Denial: The Cocoon of Myth, Ritual, and Orthodoxy
現実否認症:神話、定石、正統という呪縛
2. Arrogance: Pride before the Fall
傲慢症「おごれる者は久しからず 」
3. Complacency: Success Breeds Failure
慢心症「成功は失敗のもと」
4. Competency Dependence: The Curse of Incumbency
コア・コンピタンス依存症:「現状への固執による成功の呪い」
5. Competitive Myopia: A Nearsighted View of Competition
競合近視眼「将来への見通しに欠けた目の前の敵への偏り」
6. Volume Obsession: Rising Costs and Falling Margins
拡大強迫観念症「コスト上昇とマージン低下への意識低下」
7. The Territorial Impulse: Culture Conflicts and Turf Wars
テリトリー欲求症「コップの中の縄張り争い」
思いたる節があればお気を付け願いたい、表面化する前に。

習慣はその土地の文化に根差すものであり、日本企業にも特徴的な習慣が指摘される。なかには過去に上手く機能した習慣が今では足を引っ張るものに変質してしまうこともある。過去の経済成長期とは別世界の「1億総活躍時代」にその一端を担うと期待されるキャリアアップ志向の女性、そうしたクラスターに対してある民間企業が実施したアンケートでは、「おかしいと思う日本独特のビジネス習慣は」の上位3つは
1、決定の遅さ
2、年功序列
3、必要以上に謝る
だという。それぞれには効用もあり全面的に否定すべきでもなさそうだが、特に企業規模が大きくなるほど顕著になりがちな意思決定が遅さは、加速する環境変化への対応を困難にしてしまう。
一方、身に付けるべき習慣とは何か。ベタな所では「ほう・れん・そう」や5S「整理・整頓・清掃・清潔・躾」あたりであろうか、「良い会社のトイレがキレイ」 との指摘を聞く。また「朝が早い」のも、日本電産の永守社長など多くの名経営者が習慣とする所である。
その他、トヨタの「なぜ、を五回繰り返す。」、稲盛和夫氏の「毎日意識して反省をする」、サムソンの「最後は必ず勝つという執念を持ち、勝つこと自体を習慣にする」(元社員の著作による「Winning Habit(韓国最強企業サムスンの22の成功習慣)」から)といった習慣は見習いたい。
何か予定通りいかない外的な理由があると、すぐ「あきらめて」しまうようです。予期せぬアクシデントにも柔軟に対応していかなければなりません。ここでも黒字会社の経理社員は比較的柔軟ですが、赤字会社のほうは、何か1つでも変化があると、硬直してしまうように見受けられます。

さて、善しにつけ悪しきにつけ、習慣を形成するものとは何であろう。身に付けるために努力を要する習慣であれば、やはり本人による習慣化への意志が必要だ。一方、意志の存在に依らず、置かれた環境から自然と習慣化が進むこともあるであろう。人も組織もその行動は取り巻く環境に左右されるものだ。
ある事象を習慣になるまで根付かせる環境というのは長期継続的に存在するもので、そこには企業の文化が色濃く反映しているはずだ。というよりそもそも、習慣そのものが文化を表象しているとも言えよう。前述の「Winning Habit」も「習慣は思考のくせであり、思考に影響を及ぼすのが企業文化」と指摘している。
逆に言えば、良い習慣を組織に持たせるには、それを育む良き企業文化を浸透させるのが近道といえる。
環境から影響される受動的習慣化に加え、自ら良い習慣を身に付けようとする社員の能動性にも企業の文化が反映される。

経営者自身が、良き企業文化の浸透を進める努力を続けることを「習慣」とすることが、良い企業の習慣を形成することになりそうだ。



■筆者プロフィール
鈴木一秀
コンサルタント

■略歴 
横浜国立大学 工学部卒
University of California Los Angels校及びNational University of Singapore 経営大学院修了(MBA)
モルガンスタンレー証券など日・欧・米系の投資銀行で約20年勤務
その後経営コンサルタントとして独立

■資格
中小企業診断士
証券アナリスト
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