ニトリが大切にする「価値」とフラットな「組織文化」

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株式会社ニトリ

ニトリが大切にする「価値」とフラットな「組織文化」

株式会社ニトリ
社名株式会社ニトリ
所在地【東京本部】〒115-0043 東京都北区神谷三丁目6番20号
URLhttp://www.nitori.co.jp/
事業内容家具・インテリア用品(ホームファニシング商品)の企画・販売、新築住宅のコーディネート、海外輸入品・海外開発商品の販売事業

今回は「今、企業がブランド力を上げる理由」で取り上げている株式会社ニトリ、会社の成長の軌跡と自らの経歴が重なる白井社長の言葉から、成長の秘訣を探ろう。

■現場主義

入社時から28期に渡り継続する増収増益を渦中で体現してきた白井氏が強調するのが現場主義だ。自ら、日本を代表する流通企業のトップとなった今でも、店舗で過ごす時間を大切にし、売り場で商品の動きや顧客の様子などをチェックする。「来店客の行動の裏には必ず理由がある」とし、現場から引き出すことは多いという。

■「将来のなりたい姿」から逆算する思考法

「私がこれまでやってきたことを否定してくれ」、社長交代時の似鳥氏のメッセージに象徴されるように、ニトリの歴史は自己否定の連続だった。成長を続けるには変革は必須だが、現状から考えたのでは、強力な現状維持への誘惑に負ける。しかし将来のビジョンからスタートすれば「どこかで変えなければならない」という合意が得られ、「いつ変えるか」という議論になる。そうした「将来からの逆算」の思考法は、会社そのものだけでなく、社員にも将来を見据えた働き方にも反映される。例えば、生涯設計まで考えて記入するキャリアアップシートを毎年更新していくうちに社員自身のイメージがクリアになるという。将来からの発想を身に付けた社員の成長が企業を強くする。個人と企業の間で作用する成長の好循環がニトリの組織内で巡っている。

■チャレンジを促す企業文化

新しいことにも挑戦する企業文化を根底で支えるのが「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」という企業理念だ。その強固な土台があるからこそ柔軟に変化できる。「お、ねだん以上。」の実現へ良い商品を安く提供する工夫は、創業以来の「お客様のために」という姿勢を反映する。
ニトリでは「意欲」「執念」「好奇心」そして「チェンジ」「チャレンジ」「コンペティション」「コミュニケーション」の4Cという哲学を大切にしているが、「社内共通の価値を常に大事にしているトップの姿勢が伝わることはとても重要」と白井氏は考える。
価値の捉え方も一つではない。コンペティションであれば、競合企業、他の社員に加え、「自分」も競争相手になる。「自分の将来像に照らし合わせながら、自分の行動をチェックし、自分の強みを磨いていく」のに前述のキャリアアップシートや社員教育制度が一役買っている。

■革新的ビジネスモデル

自ら“製造物流小売業”と称するニトリは、製造、商社・物流、販売、広告宣伝に渡る複雑なバリューチェーンを構築し、一連のプロセスをニトリグループ全体で管理する。日本の家具業界を革新的な事業モデルだ。
大きなきっかけは80年代、急激な円高で業界がこぞって海外調達に乗り出すも、多くが品質管理の困難さで諦める中、ニトリは果敢に品質向上に挑戦。その結果、海外生産比率は今や9割に上る。「大きな岐路では難しい道を選ぶ。課題を乗り越えることでノウハウを培う、その積み重ねが企業としての財産になった。」
業界には専門メーカーや関連業者が多い中で自前主義にこだわり、垂直統合モデルを作り上げた。「製造、販売以外の課題も誰かに任せず自分たちでやってきたのが大きな強み」という。事業モデルそのものが、そのチャレンジする文化の下で困難を経て構築されたのだ。
その姿勢は社員にも浸透しニトリ文化の背骨を貫く。白井氏は「より大変な仕事を選ぶ人は成長も速い。リーダーの資質として、仕事が出来ること以上に、仕事に向き合う姿勢が問われる」と語る。

■活発な人事異動

ニトリの社員は、上下関係を問わず「さん付け」が浸透するフラットな組織で、多くの職種を2,3年毎に配転する。本部と店舗を行き来するジョブローテーションにより、現場と本部、部門間のコミュニケーションと知の共有が進み、部門を超えたアイデアにもつながる。
自社の見方が変わり、新しい気づきを得る機会となる配転は最高の教育機会と協調する白井社長自身も5店舗の店長の他、本州進出時の新規出店責任者、物流、商品部、人事といった部門のマネージャーも経験している。
ニトリの垂直統合モデルが価格競争力に加え、環境変化への対応力も持つには、バリューチェーン全体の方向性修正に向け、統一的な意思に基づいた組織運営が必要となる。部門の利害を超えた全体最適の意識付けの強化は、複雑なバリューチェーンを廻す管理能力構築にも求められる。各長が部下を囲い込むことが出来ない人事権の中央集中と合わせ、そこにも人事異動が機能し、その効果は、2012からの急激な円安時にも「年間百数十億円のコスト増分をグループ全体で吸収」に発揮された。

優れた事業モデルと、志とチャレンジ精神を培う企業カルチャーの融合、という真の強みを持つニトリがいま挑戦しているのが、グローバル化とダイバーシティである。さらなる成長へのグローバル化加速で、海外採用の社員も増える、独自のカルチャーは、いくら良いものでも、グローバルで通用するかを考えなければならない。年功的要素のある現在の報酬制度はグローバルに統一しにくい。多部門を経験させる人事異動も専門家育成には非効率だ。現状は手探り状態だが、目指す姿から逆算して望ましいかどうかを判断基準はぶれていない。海外に限らず人材獲得は大きなテーマであり、他業界からの転身者や女性が活躍できる家族環境整備にも取り組むが、「企業のケースを学んで確信したのが、人事制度はどこかのマネをしてもダメ、自社の歴史やビジネスに適したものを作り上げるしかない」と白井氏と語る

ニトリの成功要因と聞かれ、革新的とされるその事業モデルに目が行きやすい。だが、その構築も結局の所、理念と文化の強烈な浸透による人材育成があればこそ、である。社員の成長段階に合わせた研修やセミナー等に充てる年間教育費、ニトリの社員一人当たりの金額は平均的会社の5倍に上る。その企業ならではのブランドコンセプトを明確にし、その実現に向けた人材投資で、会社も個人も成長を実感できる環境を創る、イマジナの提唱する成長戦略の模範例ともいえる。

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