「色」から始めるブランド戦略~自治体にも「ブランディング」が必要
2015/03/09(最終更新日:2020/07/15)
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多くの企業にはそれぞれの「コーポレートカラー」というものがある。例えば、コカ・コーラやユニクロなら「赤」、みずほファイナンシャルグループであれば「青」、JR東日本なら「緑」などというように、かなり多くの人が考えずともパッとそれぞれの企業と色を結びつけて思い起こすことができる。
われわれがこのように各企業と「色」を結びつけて連想できることそのものがそれぞれの企業にとっては「ブランディング」の重要な要素になっている。企業はそれぞれの色(コーポレートカラー)と自分たちを結びつけてブランドとして認知してもらうように「意識的に」さまざまな工夫と努力を続けている。
ユニクロであれば、すべての店舗にあの印象的な赤字に白抜きのロゴが掲げてあることは勿論、スポーツ中継を見ればそのロゴが胸元についたユニクロ製のユニフォームを着たスポーツ選手が画面に映し出される。JR東日本の電車に乗れば、どの駅の表示板にも必ず緑のラインとJRロゴが記されている。そうしていくうちに、われわれは各企業と色をセットで「ブランド」として認知するようになる。
自身をブランドとして認知してくれている消費者に対して施策を打てば、商品やサービスの訴求効果が高くなる。とくに、「色」による認知はイメージそのものが感覚として残りやすく、浸透しやすい。企業そのものと色をセットでブランド化することは業態業界問わずビジネスにおいての基本、かつ非常に有効な手法なのだ。
このような「色」を使ったブランディングが有効に働くのは営利を目的とする企業だけに限った話ではない。市町村や都道府県などの自治体、そして国が「色」と自身を一体化して「ブランド」として内外へ認知・浸透させることは国や自治体の政策としても多大な効果をもたらすはずだ。
例えばスポーツの国際試合でのオランダの選手のユニフォーム。サッカーのオレンジ色は有名だが、サッカーに限らず、オランダのナショナルチームはスケート、テニス、バレーボール等、必ずオレンジを基調としたユニフォームを着用している。オランダ人ではないわれわれであっても、国際試合の中継を見ればオランダのチームはすぐに「認知」できる。ブラジルなら緑と黄色、中国なら赤と黄色なども、「色」を上手く使い、競技を超えてトータルに国そのものがブランディングされている好例である。
日本はどうだろうか。国際試合において、サッカーはブルー、野球は濃紺、バレーは赤と白、卓球は赤と黒、スケートは黒と金。「色」を使ってのトータルなブランディングを実行していない。ここに掲載した複数の競技の選手の姿から「日本」という統一されたブランドイメージは湧かない。各競技の協会間の連携の問題が大きいのだろうが、国際スポーツ大会は国のブランド認知を強める好機であるだけに実に勿体無い。
日本の都道府県、市町村などの自治体と「色」、人々との関係を見てみよう。例えば、わたしは神奈川県民だが、神奈川県の色が何色なのか知らない。また、日本の首都である東京都の色というものが存在するかどうか知っている国民はどれほどいるのだろうか。多くの市町村ではそれぞれの色を決めているのだろうが、それは市町村の内外の人たちにどれだけ浸透しているのだろうか。
ちなみに、神奈川県について調べてみると、県の色は「神奈川ブルー」となっているが、県の旗のロゴマークは「赤」である。
そもそも「色」以前に自治体には一般企業のような「ブランディング」という概念がほとんど無い。例えばA市の「市の色」が水色の場合、市のホームページの基調に水色が使われていない、あるいは水色を基調としていたとしても、市の商工会や観光協会のホームページは全く別の色を基調としている、また、A市を基盤とするプロサッカーチームのユニフォームの色が他の色である、など。国際舞台を見ればわかるとおり、なにしろ国自体が実行できていないのだから自治体ならば推して知るべしである。
少子化による人口の減少と都心部への人口一極集中によって、多くの自治体が人口、とくに若者の減少とそれに伴う地元ビジネスの縮小・衰退に悩んでいる。それを食い止めるための方策として自治体は「ブランド化」をすすめるべきだ。ブランドとして内外に認知され、浸透させることによって、ブランディングを基盤とした活性化施策を自治体内外の人々に向けて効果的に訴求することができるようになるからだ。
自治体をはじめとする公共機関・団体も、今後は「ブランディング」によって自身の「理念」や「カルチャー」を体系的に訴求し浸透させていかなければ生き残りは難しくなっていく。「色」を基盤とするブランディングは多くの企業が実施している参考例が豊富にあるだけに自治体ブランディングの第一歩として非常に踏み出しやすいはずだ。
まずは、自治体そのものはもちろん、関連団体のホームページや地元チームのユニフォームなど、身近なものを自治体の「色」を基調としたものに変更していくところからスタートし、自治体そのものの「理念」や「カルチャー」を確立する「プランディング作業」の基盤にしてみてはいかがだろうか。
筆者プロフィール
野田大介
コンサルタント
■略歴
神奈川県生まれ 神奈川県立七里ガ浜高等学校
立教大学 理学部 数学科卒。
The University of Alabama MBA 経営大学院修了
14年半の米国在住後帰国。MBA修了後、米国にて建設会社でプロジェクトマネジャー、化粧品会社にて米国支社長、帰国後マーケティングリサーチ会社勤務。