【特集】東ティモール紹介レポート~国際関係編~&<Hot HR ニュース10月号>
2014/10/22(最終更新日:2021/12/16)
【特集】東ティモール紹介レポート~国際関係編~
2014年8月25日から9月13日の約3週間、筆者が所属する学生団体HaLuz(※1)が21世紀最初の独立国である東ティモール(※2)において視察および複数のプロジェクトを実施した。今月号から複数回にわたって、渡航中に見聞きした話を交えながら独立から12年たった東ティモールの現状を紹介する。テーマとして、東ティモールの国際関係、ビジネス環境、MDGs(※3)という国際的な発展目標で中心にあげられている「教育、食事、医療に関する問題」に関して、順に東ティモールの現状を紹介する。初回は国際関係編。
▼東ティモール紹介レポート~国際関係編~
東ティモールは人口約120万人の小さな国であり、インドネシアやオーストラリアのような大国に囲まれている。独立までは石油の権益をめぐって、国際社会に翻弄されてきた。2002年の独立ののちも日本が明治維新後約150年、戦後約70年という長い時間をかけて徐々に国づくりをすすめ発展してきたのに比べて、インフラ問題などまだまだ国内に多くの問題を抱えている一方で、非常に短い12年余りの時間で、国際社会にプレゼンスを発揮するために国外へのアピールを続ける事が求められている。
▼着実に国際的プレゼンスを高めている東ティモール
例えば、G7+という紛争の影響を受けたあるいは受けている脆弱国グループでは、初代議長と事務局を務めるなど、同国は中心的存在となっている。中でも天然資源の扱い方(「石油基金」と呼ばれる、石油資源による収入を入れる基金を作り、承認を受けた金額のみを予算に活用し、その他は資産運用チームによって運営を行うなど、天然資源が尽きた後も国庫収入を維持する為の取り組み)では国際的なモデルケースとなっている。また、ポルトガル語諸国共同体加盟国(CPLP)の現議長国を務め、今年東ティモールにて第10回CPLP首脳会議が行うなど多方面でプレゼンスを発揮している。他にも、ASEANへの加盟をめざしている。
▼国内国外の差。東ティモール国内の実情
以上のような状況を見た限り、比較的順調に国際的なアピールを行えているように感じられる。しかし石油収入以外、ほとんど収入源のない東ティモールにとって、近年毎年のように政府が巨額の金額を使っていることが問題視されており、特に財務省のビルに関しては東ティモール最高の高さの既存建造物が4階建であるのに比べはるかに高い10階建のビルを作ったことなどに関して国内で大きな反発をよんでいる。首都のまだまだ貧しい環境で暮らす人々の家の背景に財務省ビルが見える光景は悲しい印象を受ける。
今回の渡航時に聞いた話によれば、それほど国民の政府に対する支持率は低くはないという。しかし失業問題、特に若者の働き口がないという問題など、ほかの脆弱国において再び騒乱を起こした際の条件と同じものを東ティモールは抱えている。他にも、教育やインフラ、医療など多くの面で課題をもち、まず国内の整備を進めていかなければいけない中、国際関係をうまく進めていくことのむずかしさを今回強く実感した。2011年に東ティモールは2030年までの開発目標「Strategic Development Plan」を定め着実に国造りを進めている。日本からの支援も、国道第一号の建設を円借款によって行うなど、大きな規模で行われている。その一方民間の支援はまだまだ少ない為、今後東ティモールの人々と手を組んだ支援が求められる。
次回は、国造りの上で欠かせなくなっている経済の問題に関して、東ティモールのビジネス事情を紹介したいと思う。
※現在東ティモールにおける多方面での支援を企画中です。もし社会貢献事業などを考えられている企業様がございましたらぜひご連絡ください。
ご連絡先:keitakatoh1115@gmail.com
※1 学生団体HaLuzについて
著者が代表を務める学生団体。法政、早稲田、東京などの大学からメンバーが集まっている。東ティモールにて活動を続けており、関連団体を含めると12年の活動歴を持つ。
活動詳細はこちら↓
https://www.facebook.com/haluz2014/info
※2 東ティモールについて
正式名称は東ティモール民主共和国。
東南アジアに位置する人口120万人程度の島国。東経123~127度,南緯8~10度に位置し日本との時差はない。南側に位置するオーストラリアとの間にはティモール海があり、石油・天然ガスの埋蔵地となっている。
LDC(後発開発途上国)に指定されている世界最貧国の一つ。
16世紀以降ポルトガルの植民地であったが、1975年にポルトガルからの独立を果たした。しかし、隣国インドネシアによって不法な占領を受け、完全な独立(主権回復)は2002年5月20日となっている。また、第二次世界大戦中である1942~1945年の期間には日本軍による占領も受けていた。
※3 MDGsとは?
Millenium Development Goals(ミレニアム開発目標)の略字であり、国連や国際機関が2015年までに極端な貧困人口の割合を半減させるといった、達成すべき共通の発展目標である。貧困と飢餓の撲滅、教育、環境、死亡率の改善等、
8つのゴールとそれに対する具体的な21の目標と60の指標が設定されている。
編集長プロフィール
加藤啓太(かとうけいた) 法政大学キャリアデザイン大学2年生。
1年間大学を休学し、2013年6月からイマジナにてインターンとして活動。2014年4月から復学している。イマジナでは主に資料作成やHotHRメルマガの記事を作成している。学生としてアジア最貧国の一つである東ティモールの支援を行うNPO法人LoRoSHIPで活動を行っており、「タイス」という現地伝統の織物を生産するコミュニティーの支援活動と交流活動を行う。今年の夏に2度目の東ティモール渡航を実現積極的に海外支援に取り組んでいる。