Hot HR vol.17-外国人から見た日本企業
2013/12/18(最終更新日:2021/11/12)
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5分で分かる最新人事トレンド
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スイス・ローザンヌのビジネススクールIMDによる「世界競争力ランキング」
2008年度版によると、日本は世界で2番目の経済力があるにも関わらず、
競争力では22位に甘んじているというデータが出ていました。顧客満足度
や労働者の熟練度は高いものの、圧倒的に劣っていたのが「起業家精神」
「海外の考え方への開放度」そして「国際経験」でした。今回はこの結果
を受け、”外国人の目から見た日本企業”に目を向けてみたいと思います。
◆外国人が感じる日本企業の壁◆
様々なアンケート・ヒアリングデータを見ていても「働く場」として外国人
から見た日本企業の印象は依然として「昇進のスピードが遅く仕事を任せ
てもらえず、キャリアアップに限界がある」という色合いが濃いものです。
最近は大手メーカー、総合商社をはじめ、グローバル人材戦略に力を入れ
る企業が増えてきたという記事を目にする機会は多いものの、今まで定着
した「日本企業のイメージ」を払拭するのはそう簡単ではないということ
が伺えます。
2004年に三菱総合研究所が行った調査でも、留学生が日本での就職を希望
しない理由として「母国で暮らしたいため」に次いで圧倒的に多い意見が
「日本企業において外国人が出世するのには限界があるため」でした。
2006年のヘイコンサルティングによる中国人大学生への調査でも、働きた
い企業の国籍ランキングで日本は、欧米、韓国、香港・台湾、中国につぐ
5位に甘んじています。
◆外国人労働者を活かせない日本企業◆
日本企業で働く外国人からはこんな意見もよく聞かれます。
「外国人は会社に忠誠心を持っていると思っているが、日本人は外国人に
忠誠心がないと見ているというギャップがある。」
日本人のように滅私奉公で働かないからと言って彼らにやる気がないわけ
ではありません。むしろそれを理解できないという点それ自体に問題があ
ると言えるでしょう。
昨今中国を始めアジアに進出する日本企業は後を絶ちませんが、多くの企
業が現地社員の離職率の高さに頭を抱えているようです。しかし「すぐ辞
める」ということが現地の特性ではありません。中国に進出している外資
系企業の中でも、日本企業における現地社員の離職率の高さは、他欧米企
業に比べ群を抜いて高いというのが現状です。
『人材教育06年3月号』によると、現地の技術者や主任クラスの社員に至
っては欧米企業に比べ日本企業の現地社員の離職率は4倍以上というデー
タが出ています。
離職の高さの原因を外部のせいにしていては、いつまでたっても国際競争
力を上げることはできません。相手が変わることを望むのではなく、自ら
が変わらなければ問題は解決せず、またそのことでより強い会社になるの
です。
◆日本企業のよい点、でも裏を返すと・・?◆
では一方で、外国人から見た日本企業の良い点はどのような点でしょうか。
日本の外国人留学生・労働者からは「日本企業は社内教育・訓練をかなり
重視する傾向にあるので、専門知識とビジネスノウハウの取得ができキャ
リアアップに役立つ」「経営者、従業員とも勤勉」「規律正しく、まじめ」
という意見がありました。
ただし、スキルアップした優秀人材を引き留められるような魅力的な評価
報酬制度、インセンティブがない限り、いくら人材育成に力を入れてもス
キルアップした段階で他社に引き抜かれ「育て損」に終わってしまいます。
これは日本企業で既に起きている問題です。「会社のお金でMBA留学をし
たものの、帰ってきたらすぐに外資系企業に転職してしまった、、」
というのはよく聞く話です。
◆国際競争に勝つために取り組むべき課題とは◆
もちろん、優秀な人材が働く理由はお金だけではありません。モチベー
ションに影響を与えるものは「キャリアアップの機会」「チャレンジしが
いのある仕事」「明確なフィードバック」など様々な要素があります。こ
れらを、国籍・性別・年齢を問わず優秀な人材にアピールする最適な方法
を模索し提供し続け、見えない壁を撤廃することこそ、日本企業の国際競
争力を向上させるために重要な要素です。
前回のHot HRでもお伝えしたとおり、日本の製造業の海外売上比率は50%
に迫る勢いとなり、商品・サービス開発の観点だけでなく、従業員を雇用
するという観点においても「日本人だけにアピールする人事制度」を構築
・運営することのリスクは益々高まっています。