Hot HR vol.147 – 「従業員の力を最大限に活かすために経営層に求められるもの」
2014/03/24(最終更新日:2020/07/10)
◇はじめに
近年、ほとんどの業界で企業間の競争は激しくなっており、
商品やサービスにおける差別化として
「いかに顧客を満足させるか」
が必要な要素となっている。
顧客満足度を上げるための近道として、どこかで
ホスピタリティ研修のようなものが開かれると
業種を問わず参加者があつまるなど、
すべての企業が顧客の満足度を高める事の重要性を
認識していると言えるのではないか。
今回は、そのようなトレンドのある現代において、
「従業員第一、顧客第二主義(EFCS: Employees First, Customers Second)」
を理念としている企業をご紹介する。
従業員を一番大事にするという
企業理念の狙いとは何か、を知っていただければ
幸いである。
◇従業員が一番大事と掲げる企業とは。
HCLテクノロジーズというインドのIT企業は、
従業員を第一に考え、顧客を二番目に考える「EFCS」の企業理念
を追求し、インドにおけるIT企業の先駆者として名をあげた。
そして今では、従業員数88,332名、売上高約5,000億円、
世界31か国でビジネスを展開するグローバル企業に成長している。
「EFCS」という言葉を聞くと、
「では、顧客はそんなに大事ではないのか。」という疑問が生まれる。
しかし、この考え方にはしっかりとした根拠がある。
◇社内の階級ピラミッドをひっくり返す
この、従業員を第一に考える事の真意は何だろうか。
HCLテクノロジーズでは、経営層が自分たちの役割を
『顧客と直接接するのは自分たちではなく、従業員である』
という理由から、従業員がよいパフォーマンスを
発揮することができるように支援をする、と定義した。
今までの仕組みであった、
現場で働く従業員を最も下に置き、最上に経営層を置いていた
企業のピラミッド構造をひっくり返すことをめざし、
日々の仕事の中で経営層が従業員からの要望に応え、
また説明責任を果たすように努めたのだ。
経営層に対して、従業員が現場で感じた
経営方針に関する疑問や課題に関して話し合うための
ミーティングを設けたほか、従業員からの質問や意見を募る
オンラインフォームを作り、それに経営層が回答するなど、
逆ピラミッドという新たな仕組みを実現する為に
様々な取り組みを行ってきた。
◇「EFCS」が生む効果
経営層が従業員に尽くし、従業員が顧客に対して
優れた商品・サービスを提供することにより、
最終的には顧客満足度が上がるという形づくりに成功した。
この結果、HCLテクノロジーズは4年で、離職率半減を
達成しただけではなく、売上・利益、共に3倍、顧客数5倍
を達成している。
従業員が満足して働き、顧客も満足できるという状態は、
まさに理想の状態として言えるのではないか。
理念という判断基準を設け、さらに経営層が
説明責任を果たすことによって透明性を高め、
意見交換によるサポートやアドバイスをすることは、
結果として従業員の持つ力を最大限に活かすことに繋がる。
2014年3月12日、HCLはインドを代表するグローバル企業として、
CRF研究所により、8年連続で「イギリスにおけるベスト
エンプロイヤー賞」の1社に選ばれた。企業文化や教育制度、
労働条件など様々な要因によって選ばれる賞だが、
共に選ばれたのが世界的なグローバル企業という高レベルの中で、
8年連続という数字は素晴らしいものであるといえる。
この例からも、顧客を満足させるには、従業員自身を
満足させることが重要なことがわかる。
皆さんの会社では、従業員がいきいきと働くことが出来る
工夫をしているだろうか。