アメリカHRブログ vol.17 – 訴訟を防ぐ方法
2016/04/13(最終更新日:2021/12/20)
訴訟を防ぐ方法
米国に進出してくる際に最初にお問合せをいただくのがビジネス保険、そして、雇用を始める段階になって労災保険の準備です。その後にEmployee Handbookのご用意をしていただくことになります。
よくある御質問はどうやったら訴訟を防ぐことができますか?という質問です。
残念ながら、訴訟を防ぐことはできません。
米国で事業を運営する以上、訴訟は起こります。という程度に考えておいた方がよいと思います。
なぜなら、米国と日本では訴訟に対する考え方や制度が違います。訴訟に対する考え方は、日本では話し合いではどうしても決着が付かない場合の最終手段と考えられるでしょう。一方で米国では、相手と交渉をする上でのツールの1つとしか考えられていません。
特に皆様が心配するのは、従業員から会社への訴訟だと思いますが、従業員から会社を訴訟する場合は、多くの場合、成果報酬型の弁護士が訴訟を行います。成果報酬ですので、従業員さんには金銭的負担はかかりません。時には、自分が訴訟を起こしていることもよく分からず、知り合いの弁護士に上手く対応するからと言われて訴訟を起こしてしまっているケースさえありました。
自動車に乗る機会が多くなれば、自然と事故の割合も増えます。自分が気をつけていても相手からぶつけられることもあるでしょう。米国での訴訟はその程度起こりやすいと思っておきましょう。
そこで、会社がとれる対策としては、できるだけリスクを減らすことです。Employee Handbookを始め人事関係の書類を整備することもその1つです。そして、訴訟が最も多い賃金、休憩、セクシャルハラスメント等の問題をしっかりと管理して問題を起こさないような対策を立てておくことが求められます。
また、採用時や解雇時の書類をきちんとそろえておくことも重要です。実際に、従業員が働いている時には、そのパフォーマンスや報酬の記録やフィードバックをしっかりしておくことも重要です。あたり前のことですが地味な記録をしておくことが人事部門を強くして、「この会社はしっかりしているから訴訟は難しそうだ」と従業員が思うようにしておくことが必要でしょう。
さらに、従業員が訴訟をしてきた場合の専門の保険があります。従業員訴訟対策保険ですが、この保険に加入しておくと従業員から訴訟が起こった場合に、保険会社に連絡をして、保険会社の弁護士がついて、会社の代わりに戦います。多くの場合は示談になると思いますが、万が一の場合には保険に加入しておくのも対策の1つでしょう。会社にまったく非がなかったとしてもそれを証明するために1年半戦うとその費用は$300,000程度はかかると思われます。
その費用を保険でカバーします。
米国の人事はいかに訴訟を防ぐか。リスクを減らすか。にかかっています。その点は日本の人事と最も違う部分ではないかと思います。
筆者プロフィール
Norikazu Yamaguchi
President of Philosophy
Philosophy Insurance Services
PROFILE
2004年に渡米。イマコンサルティング(奥山由実子社長 当時)にて西海岸地域の支店長。約4年間、奥山由実子社長の下で米国の人事コンサルティングを学ぶとともに多くの日系企業へサービスを提供した。米国人事だけでなくビジネスの師匠として奥山社長を師事。
盛和塾ロサンゼルス塾 塾生。
■著書
『A&R 優秀人材の囲い込み戦略』東洋経済新報社(共著)
■略歴
群馬県生まれ 血液型:O型 群馬県立高崎高等学校卒業。
東京外国語大学 外国語学部 中国語学科卒。
復旦大学(中華人民共和国)国際文化交流学院 修了。
慶應義塾大学 大学院 経営管理研究科 修士課程修了(MBA)。
全日本空輸株式会社(ANA)、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング シニア・コンサルタント等を経て現職。
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