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プラットフォームビジネス

2016/02/22(最終更新日:2021/12/13)

ビジネスマネジメント

技術革新から顧客の嗜好まで、企業や事業の命運さえ左右する市場環境変化の加速化が喧伝される。
スピード化する変化に翻弄されている経営者には、ご自身の事業のプラットフォーム化で、追われる立場からの脱却を図る向きも少なくないであろう。
もちろんプラットフォームビジネスにしても環境変化から無縁ではないが、変化と業績の「ギア比」低減は確かに期待出来る。

 

さて「プラットフォームビジネス」と聞いて、皆さんはどんな企業を思い付くであろうか?
Microsoftやgoogle、Amazon、国内では楽天といったIT系の企業が浮かべる方が多いのではないか。それはネットが、従来の電力、鉄道のように社会インフラとなった証しでもある。蛇足ながらAmazonはキラーコンテンツが物流システムという意味ではむしろ従来型、またはハイブリッド型ともいえようか。今、足元を固めつつあるUber、Airbnbあたりもハイブリッドの一種かもしれない。
念のためだが、プラットフォームの提供そのものは、プラットフォームビジネスの成立を意味しない。
純粋なプラットフォーマーは本来、他者がそれを利用して付加価値を生み出す「場」の提供に徹するべきで、それ故に運営費用をどう賄うかが課題となる。
水道、送電網、郵便といった公共インフラは税金等を財源と出来るし、Linuxの様に開発負担までオープン化するケースもあるが、wikipedia, YouTubeといった事業ではどこかで越えなければならない課題となる。YouTubeはgoogleによる買収で時間を稼いだが、持続的な事業モデルには至っていない。

 

何がプラットフォームビジネスを築くのだろうか。その裏には複数の要素の絶妙な重なり合いがあり、FIFAの各国チーム、例えばイタリアとブラジル、で勝利への方程式が異なるように、構築までの道筋は各々ユニークなものだ。ただ行き着く所、ユーザーからの信頼が共通の必要条件となり、ブランド力は強力な武器になる。プラットフォームビジネスの構築そのものがブランド力を形成するとの意味では「鶏と卵」の関係でもあるが、卵の状態からでも、構築に向けた確固たる理念が、社員をはじめそこに携わる人々へ浸透し、それが事業活動全般に統合的に表れることでブランドは醸成できる。すべての鶏は卵から育っている。
さらに、プラットフォーム・ユーザーの多様さに対応する柔軟性と長期的な視点が挙げられる。
プラットフォームビジネスにおける収益の源泉はその「ネットワーク外部性の効果」(ユーザー数拡大がサービスの効用を産むこと)にある。対象層が広範か限定的かを問わずユーザー数を増やすことは必須であり、それに伴って拡散する様々なユーザーニーズを満たしていくために、多様なタレントからなる柔軟な組織体制が求められる。またネットワーク効果が発揮されて、プラットフォーム構築コストの回収と持続的な収益化が達成されるまでには相当な時間がかかるため、組織全体へのビジョン浸透と、長期的な戦略を貫ければならない。
比較的短期的な市場予測の下、既存の顧客層、製品・技術の延長で製品を開発・製造販売する多くの「メーカー」思想の企業が、プラットフォームビジネスに取り組むには発想の転換が必要だ。

 

ブランド構築、柔軟性に富む組織運営、長期的な戦略・ビジョンの共有に貢献するのは、社員の多様性と自主性を活用しながら機敏なリソース育成の配置を可能にするHRシステムと働く環境の整備、全社的にビジョンを共有化して社員の意識や行動の目標を統一化する「インナーブランディング」の構築だ。プラットフォームビジネスに留まらず、継続的な事業発展をもたらす鍵となろう。

 

ちなみに、その世界ランキングにおいて頂点に君臨の経験のある企業を見ると、株式時価総額も、大規模なプラットフォームビジネスを築いた会社の事業基盤が強固となることを物語っているようである。
例えば、前述のMicrosoftの他、Cisco、エクソンやペトロチャイナといったエネルギー供給者、そして唯一の日本企業NTTなどだ。

 

ここで、現在、時価総額、ブランドのダブルタイトルホルダーであるAppleはプラットフォームビジネス構築企業であろうか?ipodとiTuneでそこに手を掛け、中国の銀聯や再大手の商工銀行と組んで、VisaやMasterといった既存のビック・プラットフォームに対抗するApple Payにその望みを残すがあるものの、道半ばに留まるように見受けられる。そしてその背景には、「メーカー」としての企業文化・価値観が今でも脈々と流れていることにあるのではないか。Apple Payも「Apple Watchのアプリ」という発想を引き摺ることにならないか。そうであるなら、プラットフォームのユーザー側となる宿命から逃れられず、「ソフト」サービスでプラットフォームを提供する側にいるgoogleにそのタイトルを奪われる日も遠くないであろう。実際、すでに時価総額ではAlphabetが瞬間風速で抜かれおり、当面のデッドヒートは見物だ。

 

インドでは$4のスマホが販売されるという。今の自分のスマホは$700するiphoneだが、5年後にもiOSユーザーで居続ける自信はない。一方、5年後にもググっているか、それはかなり確かだといえる。

 

 

 

■筆者プロフィール
鈴木一秀
コンサルタント

■略歴
横浜国立大学 工学部卒
University of California Los Angels校及びNational University of Singapore 経営大学院修了(MBA)
モルガンスタンレー証券など日・欧・米系の投資銀行で約20年勤務
その後経営コンサルタントとして独立

■資格
中小企業診断士
証券アナリスト

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