プラットフォームビジネスにおける日本企業
2016/04/06(最終更新日:2021/12/16)
今回は前回に続き、プラットフォームビジネスについて、日本企業にまつわるビジネスシーンについて考えてみたい。
典型例として携帯電話市場が揶揄された「ガラパゴス化」。そこに表現されるように、日本企業が国際的プラットフォーム構築に成功するのは容易ではないとみられている。
ん、でもちょっと待て、 プラットフォームの前提となる標準化、いやゆるディファクトスタンダード確立に過去にはビデオテープ規格をソニーと松下の日本勢で争った実績があるのでは?
確かに。ただ当時は電機製品市場での日本メーカーが圧倒的な勢力を誇ったいた背景にあり、今はどのセクターでもそうした可能性を見いだす余地は無さそうだ。
他にも複数のプラットフォームが棲み分けるゲームコンソール市場でも任天堂、ソニーが善戦した。しかし、ゲーム需要のオンラインへの移行とそこでのプラットフォーム提供者の台頭で、事業モデルそのものが新たな脅威に曝され過渡期にある。
今後、グローバルなプラットフォームビジネス構築者となる日本の企業があるかと問われた時、自分には候補として思い浮かぶ所がない。ブランド力含めあらゆる分野で日本代表であるトヨタ自動車でも難しく、EVのプラットフォームプロバイダーを狙うテスラなどの脅威を受けむしろ守勢側にたつ可能性の方が高い。
日本企業に光明が見出しにくい理由として、言語を含めた単一民族・文化に加え、戦略的なブランド構築への知見と視点に不足していることも挙げられよう。
ただ実際のところ、消費者の個別化・個性化と、世界中のあらゆる所から競合相手が勃興し得る環境ではグローバルなプラットフォームビジネス構築が難しいのは日本企業に限らない。
一方、特定の地域や市場セグメントにおける”ローカル・グローバル”プラットフォームを制する可能性を持つ企業は存在する。
例えば、セブンイレブンを筆頭に、コンビニチェーンは金融、配送・受取などのサービスのポータルとして、すでにプラットフォームの域に達しているといえよう。事業展開が進むアジアでも日本仕様を持ち込めれば、アジアローカルのプラットフォーム構築が手に届く。
そらにインバウンド需要の盛り上がりと2020年オリンピックが契機となり、急速にグローバル対応が進む、ツーリズムビジネスにチャンスがありそうだ。
タクシー配車や民泊ではUber, Airbnbが制することに贖えないであろうが、ホテル予約サイトやグルメサイトにはまだ日系企業にもチャンスがある。
その観点から歯痒さを感じるのが「じゃらん」などが外国語対応していないことだ。あの価値ある蓄積された情報を日本語リーダーしか利用出来ないのは勿体無いの一言である。さらに言えば、複数の日系サイトが競うだけでなく、プラットフォームそのものを統合し、JAPANブランド化を目指して欲しい所だ。止むをやまれず後手に回った「某産業のコメ」業界の轍を踏まないように。
プラットフォーム提供には(1)ブランディングへの高い意識、(2)多文化、多様な価値観に対応する人材育成と組織構築の重要性(遠くない将来に翻訳技術が解決するであろう多言語対応は置いておいても)は”ローカル・グローバル”でも軽減されるものではない。
■筆者プロフィール
鈴木一秀
コンサルタント
■略歴
横浜国立大学 工学部卒
University of California Los Angels校及びNational University of Singapore 経営大学院修了(MBA)
モルガンスタンレー証券など日・欧・米系の投資銀行で約20年勤務
その後経営コンサルタントとして独立
■資格
中小企業診断士
証券アナリスト