ラグビー日本代表からみる人材の活用
2015/11/24(最終更新日:2021/12/13)
今回は今も熱気が続いているラグビー日本代表の活躍から感じたことを発信していきたいと思う。
今年イギリスで開催されたラグビーワールドカップで、日本代表が強豪南アフリカを下してから約二ヶ月が経とうとしている。現在は日本でもトップリーグが開幕しにわかにラグビーの人気が大きく上昇しているこの頃だろう。
ラグビーの日本代表では他のナショナルチームとは異なる点が一つある。外国人選手が日本代表として戦っている事だ。多くのメディアで取り上げられているがここでも述べていきたいと思う。
ラグビーの代表チームは所属協会主義
今現在ではラグビーの日本代表に外国人選手がいることに違和感を持つ人は少ないと思う。しかし、自分をはじめ少し前まではなぜ外国人選手が代表のチームにいるのか疑問を持つ人は少なくなかったと思う。だが、外国人選手が代表チームで活躍するのは他の国でも当たり前となっているのだ。
その理由としては、世界的に統括を行っているワールドラグビーが定めている条件による。代表チームになる条件は①出生国は当該国、②両親及び祖父母のうち一人が当該国出身、③当該国で3年以上継続して居住しているという三つである。この上記の条件を一つでも満たせば当該国の代表としてプレーすることが国際的に認められている。五郎丸選手もつぶやいていたが、ある選手が自分の生まれたところとは別の国でも、そこにチャンスがあり、発揮できる能力があれば、固定的な概念を超えて、国を超えて活躍することができるのである。それが、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という精神を大事にするラグビーというチームスポーツの性質なのである。
一つのチームとしてまとまる
日本代表として活躍する選手には母国の代表チームのオファーを断ってまで日本で活躍する事を選んでくれた選手もいる。各選手日本でプレーするきっかけ・理由自体は異なるものだろう。だが、彼らは日本代表として一つにまとまった。それはなぜか。
エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチが考えた日本人に合った世界一ハードな練習も耐えきったのは、この日本代表チームが、これまで一度も成し得てこなかったワールドカップベスト8進出を実現するためのチームであることを、すべての選手が理解し、本気でそれを信じていたからである。しっかりとチームが目指すべき目標を掲げたことが、チームをまとめた主因となったのである。
外国人選手の活用の仕方も勝利の要因になったとも考えられる。「エディ・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)は日本人選手にはない強みを持つ外国人選手をうまく起用しているようにみえる」(10月8日東洋経済オンラインより)。ベストのプレイヤーをベストのポジションでプレーさせる。日本人選手が単純に出来ない部分を担ってもらうだけでなく、チームとして必要な部分に外国人選手をベストに配置していくことが今回の活躍の一因にもなったのではないか?
自分たちの社会に活かせることは?
中長期の目標を定め、計画を立ててチームが一つにまとまった点。そして、適材適所の人材を登用した点はラグビー以外の場面でも必要になるものだろう。特にグローバル化によってラグビー日本代表のように外国人社員の数が今後増えてくることを考えると、今回ラグビー日本代表が示してくれた形というものは大変参考になるのではないか。
外国人社員を日本で雇用する際や、日本人が海外で勤務する際など、図らずも今後外国人社員と関わる機会が増してくるだろう。その中で一つのチームとしてまとまるためにも、今回のラグビー日本代表のまとまりを大いに参考にすべきではないだろうか。そのためには、チームとしての求心力、つまり、このチームは何を目指しているのかを明確にし、共有することから始まり、その達成に向け、チームに必要な能力・スキルを可視化し、そのすき間を埋めるための人材を、国籍に関わらずオープンでフラットな視点で獲得する。その選抜理由が明確で明白だからこそ、選ばれなかった控えの選手も含めて、目標に向かうチームとしての一体感が醸成されるはずである。また、チームの足りないスキルが可視化されているからこそ、現状のプレイヤーがどんな練習をして、どれだけ成長していけばいいのかがわかるのではないだろうか。
これからの日本企業のありかたを、今回の日本ラグビーは指し示していると思えるのである。ラグビーの人気を単純なスポーツの一過性の人気にするのではなく、参考にできるところは十分参考にしていく必要がある。
編集長プロフィール
武正泰史(たけまさやすふみ) 法政大学人間環境学部二年生
2015年1月からイマジナにインターンとして活動中。主に資料作成等を担当している。編集長同様、アジア最貧国の一つである東ティモールの支援を行う学生NGO HaLuzで活動を行っており教育支援事業や交流事業などを行っている。