「NIKE(ナイキ)」というブランドがある。今さら説明をする必要もないが、なぜナイキが世界中の人々の共感を生み出しているのか、考えたことのある人はそう多くないのではないだろうか。改めて、そのブランドメッセージの強さを探ってみたい。
物議を醸しながらも、「らしさ」を伝えた最新のWeb動画
「世界最高のスポーツブランドは何か」と考えた時、多くの人の頭に浮かぶブランドのひとつが、「NIKE(ナイキ)」だろう。
ナイキは1968年設立。アメリカ合衆国・オレゴン州に本社を置き、スニーカーやスポーツウェアなどスポーツ関連商品を扱う世界的ブランドだ。スポーツ経験の有無を問わず知られているし、シャツや靴下、スニーカーなど、あらゆる家庭にはナイキのロゴが入ったアイテムが必ずひとつはある(と言っても、言い過ぎではないのがすごい)。
そんな強いブランドを持つナイキが、先日11月28日にあるWeb動画(CM)を公開。これがSNSで議論を呼んだ。
動画のタイトルは、「動かしつづける。自分を。未来を。 The Future Isn’t Waiting. | NIKE」。3人の少女がスポーツを通じて、学校や社会でのいじめ(差別)、自分のアイデンティティに関する悩みから解放される様子が表されているのだが、動画を見て感動したという声がある一方、テーマがテーマだけにネガティブな意見も散見された。
様々な見方があると思うが、動画自体は「非常にナイキらしい」ものである。この動画を見て、ブランドの強さ、そしてメッセージの確かさは健在であると強く感じた。物議を醸しつつも、今日に至るまで世界中の人々から支持され続けている理由が垣間見えるのだ。
<Just Do It.>は、創業前から抱いていた想いを言葉にしたもの
今さら語る必要もないほど強大なブランドであるナイキだが、そのメッセージ・哲学は非常にシンプルだ。<Just Do It.>。これだけである。あえて関連キーワードを列挙するならば、「挑戦」「革新」といった言葉が並ぶだろうか。
2017年に、ナイキ創業者であるフィル・ナイトが書いた自伝『SHOE DOG(シュードッグ)』が発売されたが、この本の序盤にこんな一節がある。
「友人たちと同じように、成功を望んでいたのは確かだ。……金? そうかもしれない……だが心の奥深くでは別の何か、もっと大きなものを目指していた。……そして閃いた。私は自分の人生もスポーツのようでありたいと思った。
そう、それだ。まさにピッタリの言葉だ。幸せのカギは、美や真実の本質は、あるいは私たちが知るべきあらゆることは、ボールが宙に舞う瞬間にあるのではないかと以前から思っていた……」。
フィル・ナイトが会社を創業する前の、ある朝のランニング風景とともに描写された一節だが、ナイキを貫く哲学のすべてがここに表されている。
「ボールが宙に舞う瞬間」という表現が面白い。その後に、ボクサーなら「ゴングが鳴るのを感じる瞬間」、ランナーなら「ゴールに迫り観客が一体となって盛り上がる瞬間」と説明が続くが、まさに<Just Do It.>の瞬間に、ナイキは追い求めるべきテーマを見出し、人生さえもそこに重ねている。このキャッチコピー自体は比較的最近のものだが、その思想は、創業期から健在だったのだ。
「このコピーは訳せない」。商品開発から広告まで、一貫する想い
<Just Do It.>の広告を準備する過程で日本のコピーライターが的確な訳を考えていたら、フィル・ナイトに本社の社長室に呼び出され「<Just Do It.>を翻訳するな!」と叱責を受けた、という話がある。
そのコピーライターはせっかくの機会だということで、どのような想いが込められているか、なぜ翻訳してはいけないかを尋ねたら、「いかなるアスリートにとっても、最初の一歩を踏み出すことは決してやさしいものではない。行動に移る、その小さな勇気を持つ人々を、そしてそうなりたいと思う人々を、応援しサポートしてゆくのが我々の仕事なのだ」「ナイキの哲学を表した英語なので、翻訳はできない。知りたければその意味を直接、英語の表現から感じ、理解してほしい」といった趣旨の返答があったという。
前述の動画でも、これまでの商品開発、またあらゆる広告キャンペーンでも、ナイキの主張は一貫している。その背景にある想いが本物かつ本質を貫いているからこそ、時に賛否両論あっても、世界中の人々の心を揺さぶり、共感を生み出し続けているのだ。
これが店舗でナイキ関連商品を選びたくなる理由であると思う。まったく同じ素材を使っていても、ノーブランドの商品よりも、ナイキの商品の方が、気持ちが高まっていくのを感じないだろうか。
ナイキはこれからも様々な商品を開発すると思われるが、その哲学は変わることはないだろう。世界一のブランドのメッセージは、世界一シンプルであり、本質的なのだ。
まとめ
ナイキというと規模が大きすぎて参考にならないと思われるかもしれないが、その背景にある想いは非常に単純である。スポーツをやる人なら誰もが感じたことのある「喜び」を言葉にしただけとも言えるが、だからこそ普遍的なブランドを形成することができたのだろう。
強大なブランドではあるが、理念の一貫性や、ブランド理念の立ち上がり方はとても参考になると思うのだ。
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