人手不足と騒がれ続ける現在、特に地方企業は、優秀な人材が都市部に流出してしまうことで新卒採用に難しさを感じる企業も多いのではないだろうか?今回は、ブランディングの観点から地方企業について述べていきたいと思う。
地元に戻らない新卒生
場所は関係なく、魅力的な企業が多数存在しているのに多くの人材が都市部に流れ続けているのは事実である。マイナビが発表した「2021年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」では、地元外の大学に進学した学生の地元就職希望割合は30.9%(前年比2.5pt減)となった。地元外に進学した学生の地元就職希望割合は、ここ10年減少傾向にある。また別アンケートの最も働きたいと思う勤務地の上位3位には「東京都(34.5%)」、「大阪府(13.3%)」、「愛知県(8.9%)」と都市部の地域が挙がっている。
地方企業の新卒採用課題を乗り越えるポイント-語りたくなるストーリーを作る-
では、そのような状況下でどのような採用戦略を取れば良いのだろうか?そこで大切なのは、他企業では代替できない「自社ブランド」を作るということだ。自社でなくては学べない、体験できない付加価値をつくり、魅せていく。ここで気をつけて欲しいのは派手な広告戦略はあくまでも「注意」を惹きつけるだけで、実際にその企業を「好き」になりそこで働きたいと思ってもらうことにはならないということだ。自社ブランドを確立するためには、なぜその事業をやっていて、その事業は顧客・社会にとってどんな価値をもたらすのか、自分たちがどんな世界を創造していきたいのかといった共感できるストーリーが必要である。
地方企業のデメリットだったものが大きなメリットに
昔は地方企業にとって都市部から距離が物理的に離れていることが採用面でもビジネス面でも大きなネックだった。しかし今では、ネット技術の進歩で物理的な空間の問題はほとんどない。それどころか日本中、そして世界中とつながることができる。地方から都市部へ進出してそこから日本全国へと順序だてて進めなければいけなかった商流の広がりも、いまでは地方から一足飛びに日本全国、そして世界を相手に事業を広げていくことができる。どこにいてもダイナミックな仕事に取り組めるのだ。さらに言えば、昨今のコロナ禍で人々の働き方、価値観は大きく変化して、自然豊かな環境で、オンオフともに充実した就業環境が求められるようになってきた。パソナが淡路島に本社移転したように、現在では都市部の企業が地方へ回帰していく時代である。そしてなにより、地方にはまだまだ活用しきれていない貴重な価値が多く眠っている。弊社でもよく伝統工芸・伝統産業のブランディングに関わることが多いが、地方には簡単に真似することができない技術や製品が溢れている。しかしその多くは時代環境にあった見せ方・伝え方ができずに、「本質的な価値」や時代環境にあった「新しい価値」に気づかれずに、見過ごされているのだ。
「見せ方・伝え方」を変えることができれば、その事業や製品は日本全国、そして世界へと大きく広がり成長していくことができる。以上のことを踏まえても、今まさに地方企業にとって、事業面でも人材面でも大きなチャンスが到来しているのだ。
地方企業・採用戦略の第一歩
ここまで述べてきたように、地方企業はこれまでデメリットだとされていたものが技術の進歩や人々の価値観、働き方の変化を受けて都市部企業とは違う「地方だからできること・学べること」を自社の強み、自社で働く意味といった大きなメリットに変換することができる。それを言語化し、まずは自社内で社員が語れるようにすることが採用戦略を始める第一歩である。そうすることで地域、全国とそのストーリーは語り継がれ、他企業では代替できない多くの人に選ばれる自社ブランドが確立されていくのだ。
まとめ
ブランディングとは、こちら側から一方的に「自分たちの会社は素晴らしい」と言うのではなく、相手側(顧客・自社に関わる人たち)から「あなたたちの会社は素敵ですね」と言ってもらえるような仕組みづくりをするものである。その仕組みとは、この企業に入れば自己成長ができる、この企業にしか生み出せない価値を学び、自分も顧客や社会に提供したいといった「期待感」を創出することから始まる。そして、実際に自分がその企業に入って関わるイメージを明確に持ってもらう。これが採用戦略において必要不可欠なことである。
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