様々な出来事があった2020年が終わり、新たな年が幕を開けた。多くの変化が生じているが、今後は「デジタルトランスフォーメーション」、そして「ブランドパーパス」という概念が重要になっていくと思われる。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は、必ず生じる企業の変化
2020年は、皆様にとってどのような年だっただろうか。刻一刻と変化する生活や経済状況に対して、企業は対応を余儀なくされ、採用や育成、また事業計画についても変更せざるを得ないケースが多々あったのではないかと思う。コロナ禍/ウィズコロナ/アフターコロナなど様々な表現が飛び交った1年だったが、その影響は年が明けても続いている。
2021年の私たちの生活がどのようなものになるかは予想し難いが、すでに起こり、今後加速していくと言える変化はある。それは、政府や企業の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進だ。
デジタルトランスフォーメーションという言葉をご存知だろうか。“DX”と略されることも多く、経済産業省はこのように定義している。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。
分かりにくい表現ではあるが、これは単にITを導入して、日常業務を効率化させようという従来のデジタル化やIT化ではない。データとデジタル技術をフルに活用して、業務そのものや、場合によっては経営そのものを変革していこうという取り組みである。
昨年より、打ち合わせや営業の現場において、急速にオンラインMTGツールの活用が広まっているが、それに伴い働き方や業務の進め方は変化している。これもデジタルトランスフォーメーションのひとつだと言えるだろう。今後も、このような変化の潮流は大きくなっていくと思われる。
「ブランドパーパス」が、今後いっそう重要になっていく
そして、このデジタルトランスフォーメーションとともにいっそう注目を集めているのが、「ブランドパーパス」という概念だ。ブランドパーパスとは、直訳すると「ブランドの目的」。つまり、「どのようなブランドになりたいか」に加えて、「自分たちのブランドを通じて世の中にどのような影響を与えたいか」、「どのように社会を変えていきたいか」という事業の存在意義、ブランドの存在意義そのものである。
数年前からブランドパーパスは注目を集めていたが、今回のコロナ禍、またデジタルトランスフォーメーションの変化によって、その重要性はいっそう増していると言えるだろう。昨今の企業の不正はもとより、経営陣や社員のちょっとした言動がSNSで流布される現在では、「そのブランドは、生活者に対して何を約束してくれるのか」という、機能や利便性を超えた、信頼そのものが試されている状況にあるのだ。情報があふれ、対面でのコミュニケーションが難しい時代だからこそ、ブランドパーパスという言葉が、改めて注目を集めていると言える。
富士通グループが推進する、ニューノーマル時代のブランドパーパス実現
実際に、デジタルトランスフォーメーションを急速に進めながら、ブランドパーパスの実現を図ろうとしている企業がある。富士通グループだ。
富士通グループの従業員は、現在約8万人。この超巨大とも言える企業グループが、昨年のコロナ禍において、従業員の90%以上を在宅ワークに切り替えたことをご存知だろうか。
富士通の<パーパス>は、<わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくことです。>とある。
昨年夏頃、このパーパスの実現に向けて、「Work Life Shit(ワークライフシフト)」と銘打った改革を実施。「Work Life Shift」は、「働く」ということだけでなく、「仕事」と「生活」をトータルにシフトし、Well-being(ウェルビーイング)を実現するコンセプトだ。
このコンセプトをもとに、オフィスへの出勤を取りやめ、リモートワークを推進。またそれに伴い、オフィス面積を50%削減するとともに、サテライトオフィス・ハブオフィスを設置。さらに併せて、人事制度を中心とした社内カルチャーの変革も推進していくことで、多様な人材が自律的に働ける組織を作り上げている。
働き方を含めた組織全体のカルチャーを一気に変え、顧客だけでなく従業員に対するパーパスも推進していく富士通は、まさにニューノーマル時代のブランドパーパスのあり方を示していると言えないだろうか。「Work Life Shift」は昨年から始まった取り組みのため、まだ発展途上にあるが、他社に先駆けて改革を行なっていく姿勢からは様々なことが学べるはずだ。
まとめ
駆け足で、現在注目を集めており、また今後大きな影響を及ぼしそうな事項を見てきた。
2021年はどのような年になるだろう。前述の通り、それは誰にも予測できないが、ブランドのあり方を含め、企業の存在意義が再考される年になるのではないか。
様々な変化が、これからもあると思う。しかし、その先には明るい未来がきっと待ち受けているはずだ。