テレワークが定着し、オフィス以外の場所で働くことも日常化してきた。しかし、そこで生まれるのは、会社への帰属意識の低下や、過失による情報流出をはじめとしたセキュリティの問題だ。こういった課題に対して、企業はどのように向き合っていけばいいのだろうか。
テレワーク率は40%。2,000万人近くが実施している計算に
2度目の緊急事態宣言が発令され、1ヶ月以上が経過した。それに伴い、多くの企業でテレワークが定着してきた。
野村総合研究所は先日2月5日、テレワークに関する調査レポート『2020年のテレワークを総括する』を発表した。レポートによると、2019年には8.4%であったテレワーク利用者比率が、2020年5月には40%近くにまで増加。緊急事態宣言が出されていない12月時点でも、29%がテレワークをしているとの回答になった。
日本の労働者は約6,000万人と言われているので、この割合を当てはめると、約2,000万人近くの方がテレワークを経験している計算になる。もちろんその頻度は、毎日、週に一度などばらつきがあるものの、テレワークが拡大しているのは明白だろう。そしてこの数字はより大きくなっていくものと思われる。
これは実感よりも、かなり大きな数字ではないだろうか。現在はニューノーマル(新常態)時代と言われているが、たとえ新型コロナウイルス感染拡大の影響が収まったとしても、かつてのような働き方には戻らない。業種業態問わず、リアルの出社とテレワークを織り交ぜる企業が主流になっていくだろう。
効率化の背後には、会社への帰属意識の低下がある
テレワークには様々なメリットがある。一番に思い浮かぶのは、「通勤時間の消滅」だが、野村総合研究所の計算によると、日本全体で通勤時間が、17億7,500万時間削減されたという。テレワーク利用者1人当たりの平均でみると、実に年間90時間の削減になるというから驚きだ。もちろん空いた時間は自由に使えるため、「家族と過ごす時間が増えた」「家事に使える時間が増えた」という人は多いのではないだろうか。
しかし、良いことばかりではない。反対に言えば、その分会社の仲間と過ごす時間が減っているため、組織への帰属意識が低くなっているという問題もある。
「今どき、会社に帰属意識なんていらないのでは」と考える方もいるかもしれない。しかし帰属意識がないと、「会社のために」という働き方が生まれにくくなり、すべてが自分目線の発想になってしまう。最悪の場合、何かミスや間違いがあっても、「バレなければいい」という考えに至ることもある。特にテレワーク環境下では、そういった発想が生じやすい状況にあるのではないだろうか。帰属意識、エンゲージメントがあまりにも下がってしまうと、仕事に積極性が生まれないばかりか、質が低くなり、想定外の事故が起こってしまうこともあり得るのだ。
意識が低くなることで高まっていく、セキュリティの問題
またテレワークにおいては、セキュリティの問題もより高まる。社内であればセキュリティが担保されているところが、自宅のインターネット環境ではそうなっていないケースも多いだろう。現在、オンラインMTGツールや情報管理ツールを様々な会社が提供しているが、ツールが多くなればなるほど、よりサイバー犯罪に合う可能性は高まっていく。
サイバー犯罪というと、自社にはあまり関係のない話のように思える。しかし世界では毎秒12人の被害者、日本では10秒に1人の被害者がいると言われていることから、決して他人事ではない。
もちろんこれらに対しては万全の対策を取る必要がある。しかしそれ以上に、個々人の意識を高めていくことが大切だ。
問題が万が一起こった時、前述の通り一人ひとりの仕事の質が低ければ、対処が後手後手になり、小さな問題が大きな問題に発展してしまうこともある。また従業員自身に過失があったなら、問題が表面化するまで黙ってしまうといったことも起こり得るだろう。先ほどあった「会社のため」という想いが低くなると、相対的に高まるのが「自分さえ良ければ」という発想である。この手の話は、意外と近くにあるように思うのだ。
社員の意識の低下に必要なことは、可能性を感じる期待感。
問題を防ぐのにもっとも有効なのは、一人ひとりの意識を高めていくこと
「どのように仕事を効率化していくか」は今後も注目されるテーマだが、「効率化に伴って、一人ひとりの意識をどう高めていくか」も合わせて考えなければいけない。
対処法のひとつとして、ルールを決めるというのがある。しかしそれ以上に、従業員の心持ちを変えていくことも大切ではないか。仕事の質を高めたり、情報流出をはじめとしたセキュリティの問題に対処したりする上で有効なのは、一人ひとりの意識を高めることだ。
意識を高めていく上で大切なことは、会社が何を大切にするのか、またなぜそれを大切にするのか、きちんと方針を明示すること。何を守るべきなのか、何をやってはいけないのか、なぜこれらの方針が存在するのか。ハンドブックのような冊子や、スマホアプリでもいい。これらの事項を明文化して、一人ひとりに浸透していくよう施策を講じていく。この繰り返しが大切である。
まとめ
意識を高めることで事故を未然に防げたという事例は無数にあるが、なかなか表には出てこない。そのため、他社の事例を学びにくい部分はある。
しかし意識の低さゆえに、小さな問題が大事故につながってしまったという事例は、毎日のように起こっている。データの改ざんや不正は、日々メディアを騒がせている。
テレワークが進む中で、一人ひとりの意識の見直しや、自社の方針を見直すのもひとつではないだろうか。今だからこそ、自社の体制を振り返ってみたいと思う。
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