幼かった頃「あれは何?」「どうして空は青いの?」と様々な疑問を抱いていた。
答えを聞き自ら納得するまで、なになに攻撃をされた親御さんも多いかもしれない。
大人になった今、「なぜ」を問いかけることを忘れてはいないだろうか。
袋有料化による心的影響と、問われるブランド価値
2020年7月からプラスチック製レジ袋の有料化が小売店に義務づけられた。コンビニに行く際も「袋をお付けしますか?」などという会話が生まれるようになった。しかしながら、そもそもこの袋有料化はなぜ行われたのか。
本記事では有料袋に対して、ブランディングの視点から分析を行う。
2018年UNEPの報告書によると、日本の人口1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は世界第二位。世界的に持続可能な開発目標が設定される中、日本もプラスチックの過剰な使用抑制のため有料化が義務付けられた。こうした背景の中、スーパーやドラッグストアなど様々な小売店で袋にお金を払う必要が出てきた。
地球規模の視点においては、有料化を行いプラスチックゴミの排出量を減らすことは大変価値のある行為である。ただし、消費者の視点において、レジ袋の有料化が店やブランドに対する不信感を抱くこともある。
「なぜ袋を有料化するのか」という疑問に対し、明確な想いを持たない企業は消費者の心が離れていく一方である。
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たとえばケーキショップや惣菜店など、店で買ったものを自宅で食べる場合を想像して欲しい。消費者が有料の袋なら必要ないと選択し、手提げ袋を使用せずに持ち帰った場合、中の商品は原型を留めていないかもしれない。せっかくの美しいケーキが横に倒れているかもしれない。楽しみのために購入したケーキが、かえってガッカリを生み出す。
また、年に1度のご褒美のため、高級志向のスキンケアショップで買い物をしたときをイメージしてほしい。仕事を頑張った自分に対し、清々しい気持ちで質の良い高級な商品を手に取る。レジでお会計をすると店員から有料ですと告げられる。この時、消費者の気持ちとしてはモヤモヤした思いになるのではないか。袋の値段がかかることに対し、何となく損をした気持ちになり、お店に対してもまた、言葉にならない不満が残るのではないか。
買い物袋は購入した商品の保護や運搬といった目的のためにあるのではなく、その先の体験を高める存在である。つまり、お店と相違ない状態で運ばれることにより、誰かの笑顔を作り出し、顧客の満足度を高め、喜びを提供することを目的とする。
エコ活動の一環として袋の有料化は大変価値のある行為であり、称賛されるべきことだ。
ただし、自社で袋を有料化する際は「なぜ袋を有料化するのか」「有料化するという変化でどのような損失が生まれるのか」と疑問を持ち、心理的な影響も考慮するべきである。
単に時代の流れに合わせて行動を決めているようでは、愛されるブランドには育たない。
【愛されるブランドの作り方事例はこちらより】
今こそチャンスの時。ブランド価値を再考せよ
他方、地球環境保護の動きが全世界に広がる変革期は「チャンスの時代」ともいえる。
ナチュラルコスメブランドであるLUSHでは、プラスチック素材での包装200万個を廃止したところ売り上げが約3倍増えた。(参考文献:https://www.businessinsider.jp/post-178763)
消費者もまた企業と同様、「環境に優しくするためには何を消費すべきか」を判断軸におき、LUSHというブランドの取り組みと顧客の想いが一致した例であろう。
三井住友海上火災保険では、社員食堂でのプラスチック製のストローと飲料カップの提供を廃止した。結果、CSRの一環として社員とともに海洋汚染問題に取り組み、紙製品を扱う企業を新規開拓するなどの波及効果が見込まれる。企業としてだけでなく、社員全体を巻き込んだ取り組みは、当事者意識の醸成に繋がり、ブランドの帰属意識もまた高めるであろう。
人々の意識が大きく変化するとき、そこにはチャンスが隠されている。コロナ禍によって、これまで好ましいとされていた考え方が一変し、新たな価値観の形成に繋がった。
それはまた、ブランドも同様であると指摘できる。改めて「ブランドがもたらす最大の価値は何であるのか」と問いを立て、判断軸を持つことが求められる。
想いを明確にし、ブランドとしての価値を再考できたとき、企業はこれまで以上に大きな市場の獲得に繋がり、結果として長期的に愛されるブランドとなる。
変化の激しい時代だからこそ、確固たるブランドを構築し、
まだ見えぬ機会を掴みたい。
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