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企業のブランディングは、競合他社との差別化や顧客ロイヤリティの向上に欠かせません。
また、企業ブランディングを成功させるためには社員が積極的に企業ブランディングにコミットすることが必要となります。
では、社員が企業ブランディングに対して積極的に取り組むようになるためには、何が必要となるでしょうか。
それが、近年注目されるインナーブランディングです。
当記事では、インナーブランディングの目的や重要性、メリットとデメリットについて解説します。
各企業の活動事例も紹介するため、自社のブランディングを考えている経営者の方や人事担当者・企業経営に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
インナーブランディングとは?
インナーブランディング(インターナルブランディング)とは、社内に向けて行うブランディング活動のことです。
企業イメージを作る社員に理念を浸透させ、ブランドの価値向上を実現することが目的となります。社外に向けたアウターブランディングと並行して取り組めば、ブランドに一貫性を持たせることが可能です。
とはいえ厳密には、ブランディングはインナーブランディングありきの活動です。この点を押さえた上で、インナーブランディングとアウターブランディングを解説します。インナーブランディング(インターナルブランディング)とは、社内に向けて行うブランディング活動のことです。
企業イメージを作ったとしても、その企業イメージと合致する行動や態度を社員がとらなければ、その企業イメージを顧客・取引先・銀行・株主などの外部のステークホルダーに正しく伝えることはできません。
そのため、社員に理念を浸透させて適切な企業イメージが外部に伝わるようにすることによって、ブランドの価値向上を実現することがインナーブランディングの目的となります。
社外に向けたブランディングであるアウターブランディングと並行して取り組むことで、ブランドに一貫性を持たせることが可能です。
このように、アウターブランディングだけでは、実際の企業の行動が伴っておらず、ブランディングに失敗してしまう可能性があります。
そのため、企業ブランディングを成功させるためにはインナーブランディングが必要不可欠です。この点を押さえた上で、インナーブランディングとアウターブランディングを解説します。
アウターブランディングとの違い
インナーブランディングとアウターブランディングの違いを理解する際には、「誰に対する施策か」を考えるのがよいでしょう。
インナーブランディングのインナーとは、内側を指します。つまり、企業内の「社員」に対して行われるブランディングがインナーブランディングです。
それに対して、アウターブランディングのアウターとは、外側を指します。つまり、企業外の利害関係者に向けたブランディングがアウターブランディングです。
ブランディングという言葉で一般的にイメージされるデザインや広告などは、アウターブランディングの1つといえます。
インナーブランディングとアウターブランディングの特徴は、下記の通りです。
アウターブランディング | インナーブランディング |
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アウターブランディングは、消費者を対象に「広告」や「販促イベント」などの直接的なブランディングを行うため、収益に直結しやすい活動です。
ブランディング全体の中でも、短期的な成果が期待できます。
成果が出る期間でいえば、インナーブランディングは社員への理念浸透など心理的変化を期待するものであるため、時間がかかります。
しかし、中・長期的に見たとき、企業を組織から強固にするための重要な活動です。
以上のように、インナーブランディングとアウターブランディングは分けて考えることができますが、「ブランディング」という活動全体の中で一貫して行うことが重要です。
なぜなら、アウターブランディングでPRする企業のイメージや製品・サービスは、社員(インナー)が生み出すものであるためです。
インナーブランディングがうまくいっていなければ、社員が生み出す新商品・広告・外部のステークホルダーへの対応などが企業イメージと異なるものになってしまう可能性があります。
このように、インナーブランディングがうまくいっていなければ、アウターブランディングも十分な効果が期待できません。
つまり、両者は本来切り分けられないものであるため、インナーブランディングとアウターブランディングは一貫して行う必要があります。
インナーブランディングの目的
インナーブランディングの目的は、「企業文化つくり」を通じて社員一人ひとりがブランドアンバサダーとなることです。
つまり、社員が自社の価値観や社会提供価値を十全に理解すると、誇りを持って自社の魅力をステークホルダーに語れるようになります。
インナーブランディングにおける企業文化つくりは収益の向上だけでなく、一体感のある組織になる効果が期待できます。
なぜなら、企業文化の醸成によって、会社が目指す方向性が明確になり社員の意識や仕事に一貫性を持たせることができるためです。
そして、会社と社員の意識のズレがなくなれば、結果として社員のエンゲージメントが高まり、生産性向上や離職率低下にもつながります。
インナーブランディングの重要性
なぜ、インナーブランディングは重要なのでしょうか。
ディズニーを例に考えてみましょう。
どんなにオリエンタルランドの社長がディズニーのハピネスについて考えていても、CMやホームページでキラキラしたイメージを発信していても、「キャスト」の接客次第でディズニーに対するブランドイメージが左右されます。
「キャスト」がハピネスを提供してくれる瞬間に、ディズニーが夢の国であることを実感できるのです。
このようにインナーブランディングが徹底されており、自社の提供価値を理解し賛同している「キャスト」がもたらす行動が、ディズニーのブランド価値を向上させ続けているのです。
一方アウターブランディングではブランドの一貫性が重要ですが、一貫性はインナーブランディングによって生まれます。
ディズニーがお客様に「ハピネス」を提供するためには、キャスト全員による「お客様が楽しく過ごせる夢の時間を提供する」という想いの共有が必要不可欠です。
インナーブランディングはこのような一貫性をもたらすことができます。
ブランドを作るのは「社員」です。
社員がブランドイメージを理解し、共感し、行動に移すことができるような教育と、想いに共感した人材の採用がブランディングにおいて最も大切なことです。
インナーブランディングに使われる「ブランドコンセプト」とは?
ブランディングにおける「ブランドコンセプト」とは、企業が大切にしている理念(大義)や、目指している未来像を端的且つキャッチーに表現したフレーズです。
インナーブランディングにおいて、ブランドコンセプトは社員が取るべき行動の指針ともなるもので、企業文化つくりの基礎となります。
なお、ブランドコンセプトは企業によってさまざまな呼び名があり、ビジョンステートメントやコーポレートスローガンなどとも呼ばれます。
「ビジョンステートメント」と同じように語られることが多い言葉に、「ミッションステートメント」があります。
ミッションステートメントは、企業が日々社会に果たす役割・使命を明文化したものです。
両者の意味があやふやになった場合は、「ビジョン=未来像」「ミッション=役割」と理解すればよいでしょう。
インナーブランディングのメリット
企業のブランディングにおいて、インナーブランディングは必須といえます。インナーブランディングを行うメリットとして、下記のものが挙げられます。
- 従業員満足度・従業員エンゲージメントの向上
- 社員定着率の向上
- 社員間の連携強化
- カルチャーフィットする人材へのアプローチ・採用強化
- 他社との差別化
- コンプライアンスリスクの軽減
インナーブランディングを行うことで、会社の目指すべき姿が社員に共有され生産性の向上を望めるだけでなく、組織の強化にも繋がります。
ここでは、インナーブランディングのメリットをより深く理解するために、それぞれについて詳しく解説します。
従業員満足度・従業員エンゲージメントの向上
インナーブランディングを通じて企業の理念・価値観に共感する社員を増やすことで、従業員満足度・従業員エンゲージメントが向上します。
結果として、従業員の側から事業への積極的なコミットメントが期待でき、全体的な生産性も高まるでしょう。
「従業員エンゲージメントの向上」によって得られるメリットをより詳しく知りたい方は、「従業員エンゲージメントを高めるインナーブランディング」の記事を参考にしてみてください。
社員定着率の向上
インナーブランディングに伴う従業員エンゲージメントの高まりは、社員定着率の向上にも寄与します。
多くの社員が定着するようになれば、社員教育の体制が整い、教育の質も上がり長期的な好循環が生まれるでしょう。
採用コストの削減にもつながるので、特に中小企業において、インナーブランディングは必須といえます。
社員間の連携強化
たとえば、企業のビジョンが共有されていれば、優先的なタスクを各自が理解し、足並みを揃えて仕事に取り組むことができます。
共感する人材へのアプローチ・採用
ブランドコンセプトが明確に言語化され、他社との差別化に成功している会社にはビジョンに共感する人材が集まりやすくなります。
ビジョンに共感して入社した人材は企業文化にカルチャーフィットし、短期間で戦力となります。迅速な戦力化により教育コストが下がれば、全体的な生産性アップも可能です。
他社との差別化
インナーブランディングのプロセスでは、企業のビジョンの明確化が行われます。そして、ビジョン確立の過程で、自社と他社の相違が浮き彫りになるのです。
競合他社との差別化によって、社員が「自社にしかないもの」「自社でしかできないこと」を理解することができ、会社に対して愛着を抱くようになります。
「他社でもできることばかりだ」と感じていると、エンゲージメントが低下し、離職率上昇の原因となります。
コンプライアンスリスクの軽減
インナーブランディングによって、企業文化にマッチしていない社員を明確にすることも可能です。
共同性の高い組織へと再編されると、会社を守ろうと一人ひとりが自然とコンプライアンス違反を避けるように動きます。
コンプライアンスは、インナーブランディングの重要性が高まった背景の1つです。
会社は、コンプライアンス違反を避けようとするあまり、管理・監視を強化する方向にシフトしていきました。しかし、徹底管理された職場では働く意味を見いだすことが困難です。
そこで、会社に愛着を持って働くことの重要性が見直され、インナーブランディングに注目が集まりました。
つまり、コンプライアンスリスクを避けるための方法が、管理ではなく、会社への積極的なコミットメントを軸にしたものへとシフトしたのです。
もし、組織の再編による管理の緩みが心配な場合は、以上の背景を理解しておくとよいでしょう。
インナーブランディングのデメリット
インナーブランディングは総じてメリットの多い活動ですが、以下のようなデメリットもあります。
- ブランドコンセプトの作成に時間がかかる
- 外部リソースを利用するとコストがかかる
- 賛同しない社員が出てくる
インナーブランディングには「時間・コストがかかる」というデメリットがあります。
しかし、インナーブランディングがそもそも長期的・継続的な取り組みと考えれば、大きなデメリットとはいえないでしょう。
むしろ初期投資を躊躇すると、効果のないインナーブランディングを続けていくことになります。
「賛同しない社員が出てくる」ことも、見方によってはメリットに転化します。以上を踏まえて、それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
ブランドコンセプトの作成に時間がかかる
ブランドコンセプトの作成は、会社の現状分析や他社との比較などに時間をかける必要があるため、数日では終わりません。
時間をかけずにブランドコンセプトを作ると、独善的なインナーブランディングとなり、会社に不可逆的な悪循環が発生する可能性があります。
会社を改善したいのであれば、ブランドコンセプトの作成の時間を惜しむべきではないでしょう。
外部リソースを利用するとコストがかかる
ブランディングに関するノウハウを持たない会社であれば、他者の意見を参考にすることでしょう。
この場合、専門の外部リソースにブランディングを依頼するため、コストがかかります。
とはいえ、インナーブランディングは長期的・継続的に会社に影響を与えます。
そのため、コストがかかってもブランディングの実績がある外部のパートナー会社に協力を依頼するべきでしょう。外からの視点を取り入れることで、独善的なブランディングを回避できます。
実際に弊社がインナーブランディングを担当させていただいた企業様で、事業成長を加速させた事例も数多くあります。
ブランディング事例の具体的な内容につきましては無料セミナーを開催していますので、お気軽にイマジナのブランディングセミナーを受講してみてください。
賛同しない社員が出てくる
インナーブランディングによって恣意的に企業文化を作ると、その文化にフィットしない社員や、会社の方向性にマッチしない社員が出てくる可能性があります。文化にフィットしない社員は、会社を離れたり社内で軽んじられたりする恐れがあります。
インナーブランディングを行う場合は、会社に排他的な雰囲気を生まないために社員を巻き込む施策が必要です。
インナーブランディングの手法・手順
インナーブランディングのプロセスでは、ブランドコンセプトの策定が肝となります。なぜなら、インナーブランディングはブランドコンセプトを軸に進められるためです。
インナーブランディングの手法・手順は、以下の通りです。
- (1)企業の大義やビジョンの明確化
- (2)ブランドコンセプトの作成
- (3)浸透度の可視化
- (4)各種社内制度への反映と社員への共有
- (5)定期的な教育・ワークショップの実施
ブランドコンセプトは「企業の成長」や「社会の変化」に合わせて対応するものです。
特定のブランドコンセプトに固執することによって、社員の意識とずれる可能性があります。
したがって、上記のプロセスも一方通行的なものでなく、1〜5が循環するものであることを理解しなければなりません。
企業の大義やビジョンの明確化
まずは、ブランドコンセプトの基となる企業の大義(理念)と、ビジョンを明確にする必要があります。
このプロセスでは、現時点で掲げているビジョンを惰性的に流用するのではなく、会社の現状や過去の実績、社会情勢などを踏まえて再検討することが重要です。
また、競合他社の分析を通じて、自社にしか実現できない未来像をはっきりさせることも欠かせません。
ブランドコンセプトの作成
企業ビジョンを明確化したら、企業の普遍的な理念も踏まえ、次はブランドコンセプトを作成します。
ブランドコンセプトはアウターブランディングでも重要な要素となるため、従業員だけでなくお客様にも共感を得られるものでなければなりません。
ブランドコンセプトと企業の活動や、提供する製品・サービスの実情が噛み合っていなければ、悪い印象を与えてしまう恐れもあります。
実感の伴った自社を表すに最適なブランドコンセプトが思いつかない場合には、最初の「企業ビジョンの明確化」に時間を割くことが重要です。
浸透度の可視化
ブランドコンセプトを社員に共有し、浸透度を可視化することによって、自社に必要な施策を明確にします。
さまざまな手法を闇雲に取り入れるのではなく、浸透の度合いに基づいて施策を行うことで、効率的にインナーブランディングを進めることが可能です。
浸透度を可視化する具体的手法として、従業員エンゲージメントを定量化するエンゲージメントサーベイがあります。
社員目線のフィードバックを得られるという特徴があり、いわゆる従業員満足度調査よりも正確にブランドコンセプトの浸透度を把握できます。
エンゲージメントサーベイは、インターネットによるアンケート調査が一般的です。
「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」をはじめ、「成長の機会が提供されているか」などさまざまな質問をします。
エンゲージメントサーベイを実施する際には、データの有効性を担保するためにタイミングを見分けましょう。
社員の負担が増える年度末や繁忙期は、本来よりもネガティブな回答や雑な回答になる恐れがあるため避けなくてはなりません。
各種社内制度への反映と社員への共有
浸透度の可視化ができたら、必要な施策を各種社内制度に反映させます。インナーブランディングの手法としては、以下のようなものがあります。
社内専用サイト・SNS |
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社内専用サイトは経営者のメッセージや社会貢献活動の報告、顧客・消費者の声などを幅広く取り上げることができます。他部署の情報なども得ることができるので社内の活動を可視化することができるメリットがあり、インナーブランディングを行う上で有用です。
社内SNSは場所を選ばず、双方向のコミュニケーションを図ることが可能です。営業担当者や時短勤務者など、対面で話す機会が少ない社員とのかかわりを増やすことに役立ちます。社員の気づきを吸い上げられるメリットもあります。 |
ブランディングアプリ |
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ブランド浸透にかかわる社内情報の共有、カルチャーブックの閲覧、社員向けのアンケート調査などが行えるのがブランディングアプリです。ブランドが大切にする想いを社員一人ひとりに伝えられるため、人材育成の精度が高まります。各種社内制度と併用すれば、組織のビジョンを効果的に周知できます。 |
社内報 |
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社内報は紙媒体とWeb版の2つがあり、いずれも組織の現状共有から経営者・社員のトピックスまでを幅広く掲載することが可能なのが特徴です。社員全員にまんべんなく情報が行き渡るだけでなく、定期的に発行することで記憶に残りやすくできることがメリットです。社外にも公開される「オープン社内報」の場合は、ステークホルダーに対するアピール材料にもなります。 |
クレド(ブランドコンセプトなどを記載した小さなカード) |
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クレドは社員の自主性を高める手段として多くの企業で導入されており、仕事の方向性や判断に迷ったときにいつでも見返せることがメリットです。社員にコンプライアンスを意識づけるツールとしても有用です。導入にあたっては経営者や上司がクレドの内容を体現していることが大前提となります。 |
カルチャーブック |
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ブランドコンセプトの中核概念を伝えるストーリーを冊子にしたものが、カルチャーブックです。ブランドがどのような価値を社会に提供するのか、どのような未来を描くのかなどが文字やデザインで表現されます。カルチャーブックは社員の共感を醸成するだけでなく、採用活動に使用すればカルチャーフィットする人材を効率的に集められます。 |
ムービー |
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ブランドムービーは、動画を通じてブランドコンセプトを端的に訴求できるのが特徴です。映像や音声による表現は直感的で理解しやすく、視聴する人すべてに共通のブランドイメージを与えられます。初期コストこそかかるものの、一度制作すれば入社式やワークショップなど幅広い場面で活用できるため、十分な費用対効果が見込めます。 |
日報 |
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日報はテーマ(内容)を指定することで、インナーブランディングツールとして活用可能です。営業結果や作業進捗だけでなく、企業理念・行動指針にかかわるエピソードを書いてもらえば、上司は部下の理解度を知ることができます。上司自身もコメントを返す習慣を通じて、ブランドの価値を深く考えるようになります。 |
サンクスカード |
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サンクスカードは、社員同士が感謝の気持ちを伝えるツールです。チームワークやモチベーションの向上につながるとともに、お互いの良いポイントを探すことが習慣となります。また各種社内制度の中でも、比較的低コストで導入できることもメリットです。注意点として、カードの交換が苦痛にならないように頻度に配慮することが必要です。 |
社員研修 |
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社員研修は企業活動やブランドの目的達成に向けて、社員に当事者意識を与える重要な役割を果たします。 |
実施する際にはブランドコンセプトを落とし込むだけではなく、同僚が企業のブランドイメージについてどのように感じているのかやブランドイメージを反映させた行動をとった結果としてどのような経験をしたのかを共有することが重要です。
それによって、より具体的に企業ブランドに基づいた行動をとることの利点を感じられるようになります。
また、研修によりミドル層を育成し社内アンバサダーとする事も有効な施策です。
社内アンバサダーを多く抱えることによって、より多くの従業員にブランドイメージを理解させやすくなります。
また、実は人に教えることによって物事への理解も深まるため、社内アンバサダー自身もより深くブランドイメージを理解できるようになります。
このように、社内研修をインナーブランディングの場として利用できます。
テレワーク化を進めている会社の場合、社員同士のオフラインでの交流が減るため、インナーブランディングの手法もそれに合わせて変える必要があります。
たとえば、オンラインでの交流システムが確立されていないのであれば、社内サイトを作るのも1つの手です。
インナーブランディングの注意点
インナーブランディングを実施していく上で、いくつか注意が必要な点があります。
はじめに注意していただきたいのが、インナーブランディングは開始してすぐに効果が表れるものではないという点です。
社員に浸透するには時間がかかり、営業利益としての効果が表れるにはさらに時間を要することがあります。
また、浸透させるためには定期的に社内報の発行や研修などを、繰り返す必要がある点にも注意が必要です。
そして、インナーブランディングの施策は意識の表面だけではなく、より深い思考レベルまで浸透させていかなければ効果的な施策とはいえません。
そのため、インナーブランディングには中・長期的な視点が必要になります。
次に注意が必要なのは、価値観を押し付けすぎると社員の反発を招く可能性があるという点です。
ブランドの価値観に共感してもらうには背景から伝えることが重要です。
その中で、あまりにも価値観に共感できない社員は自然に淘汰されていくでしょう。
ブランドの価値観の共有は重要ですが、締め付けすぎると多様性を求める時代の流れに逆行してしまいます。
ブランドの価値観を社員全員で共有しながらも、社員の反応や意見には常に耳を傾ける姿勢を持ちましょう。
インナーブランディングの事例|8社紹介
ブランドコンサルを行う「イマジナ」では、無料のブランディングセミナーを開催しています。参加企業の約95%が増収化・増益化している有益なセミナーです。
ノウハウを自社に持ち帰れば、独自に試行錯誤するよりも効率的に施策を進められるでしょう。
インナーブランディングに失敗しないためには、予備知識として他社の事例を知っておくことも大切です。ここからは、有名企業のインナーブランディングの事例を8つ紹介します。
Amazon
Amazonのインナーブランディングは、社員の自主性を育てることで企業の社会的価値を確立させた好事例です。
「チームを持つマネージャーであるかどうかにかかわらず、全員がリーダーである」という考え方に基づき、「Our Leadership Principles」という16項目の行動指針を定めています。
一例として「Ownership」の項目では、「リーダー(社員)は長期的な視点を持ち、会社全体のために行動する」としています。
社員ひとり一人に対して、リーダーレベルの意識と行動を求めていることが特徴です。
世界的なシェアを誇るAmazonは、日本でも多くの人に利用されています。
競合他社をはねのけるブランド力は、独自の企業文化によってもたらされており、社内向けのブランディングを進める企業にとって大いに参考になるでしょう。
出典:Amazon
P&G
P&Gは約70か国で事業活動を行い、50億人近くが利用している日用雑貨の一大メーカーです。
同社は社員に働きがいのある仕事を提供するとともに、長期的なキャリア構築に力を注いでいます。
経営戦略の一環として長年取り組んでいる「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容と活用)」もその1つです。
個々が持つ能力を最大限に生かすために、性別や国籍を問わずそれぞれの個性を尊重し合う風土作りが行われています。
多様な働き方の容認やフェアな評価制度は、働きやすい環境を作るだけでなく、倫理観のあるビジネスの実現につながります。
女性の管理者進出を促進するアフィニティ・グループが存在する点は、キャリアアップを目指す女性社員にとって心強い味方です。
出典:P&G
スターバックス
人気カフェチェーンであるスターバックスは、開業以来「人と人とのつながりを大切にする」という変わらぬ想いを持っています。
これに加えて、2021年には未来に向けたビジョンとして「人」「コミュニティ」「地球」の3つの軸を挙げています。
すべての人が心地よく活躍できる居場所作りは、ライフスタイルやライフステージが変化した場合でもキャリアを諦める必要がありません。
地域の人たちとのふれあいが起点となるコミュニティは、地元への貢献を実感できるポジティブな要素です。
スターバックスは、サステナブルなコーヒーを提供する取り組みも行っています。
地球から得た以上のものを還元する「リソースポジティブ」という考え方は、一人ひとりがブランドの価値を意識するきっかけにもなるでしょう。
出典:スターバックス
サントリー
サントリーは全世界で4万人以上が働く国際的な企業であり、ブランド力を強化するためにインナーブランディングにも積極的に取り組んでいます。
サントリーの特徴的な施策が、人事領域における「全社員型タレントマネジメント」です。
「サントリーは人が命。一人ひとりが持てる力を最大限発揮し、活躍することが会社の成長につながる」という考えに基づき、社員自らが直近10年のキャリアをデザインする仕組みが設けられています。
キャリアビジョンについての面談は年1回、個々の業務や考課にかかわる面談は年3回行われており、社員は十分なフィードバックを得ることが可能です。
また、階層別研修の実施や、事業や部署をまたがるジョブローテーションもあり、サントリーは社員の成長意欲に応える環境が整っています。
出典:サントリー
トリドール
トリドールは、丸亀製麺やコナズ珈琲などを運営する外食企業の大手です。
「お客様に感動をお届けする」をモットーとする同社は、唯一無二の人材開発企業を目指している組織でもあります。
「何事にも情熱を持って取り組める」をコンセプトに、社員が仕事にやりがいを持てる独自の評価育成制度を構築しています。
トリドールは、日本の外食企業で初めて「国連グローバル・コンパクト」へ参加したことで有名です。
代表取締役社長兼CEOの直下にサステナブル推進室を設置し、全社横断的にサステナビリティ活動を行っていることが特徴です。
社会的な役割を果たすための行動が、結果的に社内メンバーの帰属意識にもポジティブな影響を与えます。
社員が組織の一員であることを強く認識すれば、売上や業績への貢献度は自ずと高まります。
出典:トリドール
USJ
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営するUSJのブランドコンセプトは「OUR VISION MISSION VALUE SPIRIT(私たちのミッションは精神を大切にします)」です。
ゲストにワールドクラスの体験を提供するためには「最高の職場」と「会社の成長」が不可欠だとしており、これを体現しているのが多彩な福利厚生です。
クルー同士の交流の場となるスポーツ大会やパーティーをはじめ、豊富なコンテンツを誇る社内SNS、パークの無料招待パスの配布があります。
オフィスにはクルー専用カフェを併設し、仕事への活力を充電することも可能です。
USJのクルーへの待遇は、世界一のリーディングカンパニーを目指す企業にふさわしい高水準な内容です。
出典:USJ
JAL
JALはサービスを提供するすべての人が持つべき意識・価値観・考え方として、「JALフィロソフィ」というコンセプトを策定しています。
素晴らしい人生を送るためには、成功方程式として「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」が必要だとしている点に、独自の企業文化がうかがえるでしょう。
JALは組織が確固たる共通認識を持つことが、最高のサービスを実現すると考えています。
JALは入社時だけでなく年4回、3か月ごとに2時間ずつの教育を全ての社員に受けさせています。
また、その「JALフィロソフィ教育」はファシリテーターや教育内容は全て社員自ら手がけている点も特徴的です。
それによって、プログラム内容を考える際にファシリテーターの理解度が高まったり、現場の感覚にあったエピソードを盛り込こんだりすることで受講者の理解度の向上につなげられます。
また、教育は管理者向け・一般職向けに分かれており、それぞれ相互理解を深めるために部門横断的に実施されます。
出典:JAL
中小企業の例
中小企業でもインナーブランディングは有効です。
昭和初期から続く住宅業の会社では、宣伝広告や販売戦略はさておき、経営者が「自分たちの使命」を地道に社員に伝えることで「会社として付加価値」を作り出すことに成功しています。
単に家を売って終わりではなく、家作りを通じて地域の文化を継承しているという役割意識が、社員のモチベーションを向上させた好事例です。
保育園を運営する某社会福祉法人では、自律的な子どもを育てるために「考えさせるを、考える」というコンセプトを打ち出しました。
保護者だけでなく子どもを預かる保育士にも共感してもらうことで、ブレのない一貫性のある教育・保育を実現しています。
また、関東のある老舗旅館ではコロナ禍の業績悪化を乗り切るために、「おもてなし」の本質を問うブランドコンセプトを定めました。
経営陣による全体研修やグループ研修で「想い」を共有した結果、上質なサービスを提供する土台を築き上げています。
インナーブランディングでピンチをチャンスに変えた、注目度の高い事例です。
イマジナのインナーブランディング-浸透の3ステップ
イマジナのインナーブランディングでは3つのステップで浸透度を測っています。
3つのステップとは、「理解」「共感」「行動」です。
理解
まず前提条件として、社員が会社のブランドイメージを理解している必要があります。
企業が何を大事に考えており、どのような行動をとることを求めているのかなど企業の目指す方向性を把握することで、その中で各社員がどのような役割を果たすべきなのかも理解できるようになります。
この企業のブランドイメージの理解と自分の役割の理解が第1のステップとなります。
共感
企業のブランドイメージを理解して、そのブランドイメージを体現するために自分が何をすべきかを分かっていたとしても、各社員がその役割を果たそうとしなければ意味がないからです。
そのため、企業のブランドイメージを理解し、自分の役割を理解した上で、それらに共感することが必要となります。
共感することによって、社員は企業のブランドイメージを体現することに対してモチベーションを高め、自然と行動に移せるようになる土台ともなります。
このように、理解をした上で、その企業のブランドイメージに共感することが第2のステップです。
行動
最後のステップが行動です。
企業のブランドイメージを理解し、共感したとしても、それが行動として現れなければ意味がありません。
そのため、社内における日々の業務や顧客との接点となるサービスの提供など社内・社外における行動に企業のブランドイメージが反映されているかをチェックする必要があります。
インナーブランディングを効率的に学ぶには?
インナーブランディングが「未来への投資」といわれているのは、成果が出るまでに時間がかかるものの、長い目で見たときに企業を支えてくれる財産になるためです。
ブランディングは、アウターブランディングとインナーブランディングを一気通貫して行う必要があります。
とはいえ、新しい時代に最適なインナーブランディングの方法が分からないという方も多いでしょう。
インナーブランディングの手法を効率的に学ぶには、専門家による講座を受講するのがおすすめです。
株式会社イマジナ代表が理事を務めるブランドマーケティング協会では管理職の方向けにインナーブランディングを含めたブランディングについて学べるブランドマーケッター育成講座を開催しています。
インナーブランディングについてお悩みの方やさらに詳しく知りたい方は、お気軽にご参加してください。
まとめ
「ブランディング」といえば、広告などの華やかでクリエイティブな要素を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、そのイメージこそが、ブランディングで誤解や失敗を生む原因となります。
ディズニーの例でも触れたように、どんなにホームページや広告などのアウターブランディングツールに頼っても、「社員」が訴求しているブランドイメージ通りの振る舞いをしなければ、期待通りのブランドイメージを上げることはできません。
このように、アウターブランディングだけでなくインナーブランディングも一貫して行うことが重要です。
どのような商品・サービスを提供し、どのような広告を出すのかを考え、実際に顧客と接して商品・サービスを提供するのは社員です。
そのため、社員が企業のブランドイメージを理解し、共感した上でブランドイメージを反映させた行動をとる必要があります。
こうしたインナーブランディングにも力を入れることによって、より企業のブランドイメージを強化できます。
ただし、効果的なインナーブランディングを実行に移すことには困難もつきものです。
JALのように大企業であれば、インナーブランディングのための教育プログラムを従業員に考えさせるという余裕があるかもしれません。しかし、自社の社員はすでに多くの業務を抱えており、さらに教育プログラムを考えさせるまでの余裕はないという会社も多いのではないでしょうか。
また、そもそもインナーブランディングを全く知らない社員に教育プログラムを考えさせたとしても、効果的なプログラムを作ってくれるとは限りません。
そこで、おすすめしたいのが外部の研修やセミナーを用いることです。
株式会社イマジナ代表が理事を務めるブランドマーケッター育成講座では、組織作りを担う人向けの講座を開催しています。
この講座ではこれまでに2,800社以上の企業でのブランディングに携わってきたインナーブランディングのプロが講師となっています。
そのため、このセミナーに参加することで、インナーブランディングの教育プログラムを社員に作らせる手間を省きながら、効果的なインナーブランディングの手法を学べます。
インナーブランディングについてもっと学びたいと考えている方はぜひ受講を検討してみてください。
関連記事
インナーブランディングの目的・手法・事例などをご紹介しましたが、お役に立ったでしょうか。
以下にインナーブランディングに関連する記事をご紹介しますので、併せてお読みいただけると幸いです。
ブランディングとは?−ブランディングは「未来」への投資−
https://www.imajina.com/brand/entry/852
イマジナのブランディングとは