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「オンボーディング」という言葉を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。オンボーディングは、近年ビジネスにおいて注目されている言葉です。しかし、オンボーディングが何を意味するのか知らない人も多いでしょう。
オンボーディングを実施することで、人事領域では企業と従業員、SaaS領域では企業とユーザーにそれぞれメリットがあります。
当記事では、オンボーディングの意味とメリット、実施する際のポイントについて解説します。ビジネスの場で役立つ考えを学びたい人に必見です。
オンボーディングとは|主な種類2つ
オンボーディングとは、船や飛行機などに乗ることを意味する「on-board(オンボード)」が由来の言葉です。船や飛行機に新たに乗り込んだ仲間に対してサポートを施し、順応を促進するプロセスを指します。
現在では、主に「人事領域」と「SaaS領域」の2つで使われることが多い言葉です。人事領域では新しく採用した社員の受け入れプロセス、SaaS領域では提供するサービスを顧客に継続利用してもらうためのプロセスを意味します。
人事領域でのオンボーディング
人事領域でのオンボーディングとは、新規で加入したメンバーが早期に実力を発揮できるように、組織が受け入れ支援を行うことです。メンバーの早期戦力化を目指し、企業に貢献できるように育成することを目的としています。また、サポートによって従業員の働くモチベーションを向上させ、帰属意識を高める効果もあります。
オンボーディングは、欧米ではすでに多くの企業が取り入れている施策です。日本ではあまり馴染みがありませんが、歓迎会で新メンバーと交流を深めたり、メンターが社内ルールを教えてサポートしたりなど、一部の施策が行われています。
メリット
オンボーディングの大きなメリットは、早期離職防止につながることです。人材確保には採用コストがかかるため、企業としては長く定着してほしいという思いがあります。
しかし、現在の日本では、人材がなかなか企業に定着しないことが問題となっています。厚生労働省が発表した離職率データによると、2020年度における就職後3年以内の離職率が新規高卒就職者で約4割(36.9%)、新規大卒就職者が約3割(31.2%)
という結果となりました。
離職率を減少させるために、オンボーディングは有効な施策です。オンボーディングが早期離職防止につながる理由には、下記のようなものが挙げられます。
【オンボーディングが早期離職防止につながる理由】
- 早期に知識・スキルが身につき、戦力となれる
- ケアやサポートによって、チームや部署に早く溶け込める
- 自分自身に存在価値が見出せる
- 気軽に相談しやすい環境ができる
- 企業・組織に愛着心が芽生える
新しく採用された人材は、社内に馴染めるのか、仕事は覚えられるのかなど、多くの不安を抱えています。オンボーディングを導入することで、業務内容をスムーズに覚えられたり、良好な人間関係を築くことができたりするため、早期に不安が解消できて定着率を高められます。
実施する際のポイント
オンボーディングを実施する際のポイントは、ある程度長期的・継続的に支援を提供することです。具体的には、以下のような流れでオンボーディングを実施します。
【オンボーディングの流れ】
- 目的を明確にする
新卒社員・中途社員がそれぞれ組織の中でどのように活躍してほしいか、具体的な目的を定め、そのためにどのような教育制度にすればよいのか指針を立てます。 - コミュニケーション環境を整える
新人が組織に慣れるために、メンターとの面談の他、社内ポータルやSNSなどのITツールを活用して気軽にコミュニケーションを図れる職場環境を整えておきます。 - プランを作成する
入社後、1か月後、半年後など、スケジュールごとに行うべき具体的なプランを作成します。 - プランを共有する
作成したプランを、人事や管理職だけでなく、オンボーディングにかかわるすべての社員と共有します。 - オンボーディングを実施する
プランをもとに、オンボーディングを実施します。 - プランの見直しを行う
管理職から新人まで、オンボーディングにかかわった人すべてにヒアリングを行い、課題を見つけ、プランの改善策を考えます。
オンボーディングの成功事例として、サイボウズ株式会社が行った施策が挙げられます。サイボウズ株式会社は、新卒向けの「新卒オンボーディング」と、中途入社向けの「キャリアオンボーディング」に分けて実施
している点が特徴です。具体的には、オリエンテーションや社内イベント、サポートを6か月間行い
、社内文化を理解して組織に早期に馴染めるような施策を行っています。
SaaS領域でのオンボーディング
SaaS領域で使われるオンボーディングは、サービスを購入したユーザーに使い方や仕様を案内し、継続的に利用してもらうための取り組みを指します。
ユーザーへのサポートが不十分だと、「機能が使いこなせない」「このサービスで何ができるのか分からない」などの不満が生じ、ユーザーが離れる可能性が高まります。離脱を防ぐために、ユーザーがストレスなくサービスを利用できるようサポート体制を強化し、顧客満足度を上げることがオンボーディングの目的です。
顧客満足度が上がれば、ユーザーの継続利用につながります。継続利用するユーザーが増加すれば利益も増加するため、オンボーディングは企業にとって重要な取り組みとなります。
メリット
オンボーディングのメリットは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、解約率改善につながることです。オンボーディングを実施すれば、初期段階でユーザーが抱える不安・不満を解消し、サービスの効果を十分に実感してもらえます。サービスに満足し、継続利用したいと思う体験を提供できれば、解約率が減って安定した収益を見込めるようになります。
2つ目は、アップセル・クロスセルにつながることです。アップセルとはユーザーがより高価なサービスを購入すること、クロスセルとは利用中のサービスと関連性の高いサービスを購入することをいいます。
オンボーディングによってユーザーが購入したサービスに満足し、使いこなせるようになる段階に到達すれば、他のサービスに興味を持ってもらえる可能性が高まります。より高性能なサービスや複数のプランを提案すれば、顧客単価が上がり、売上は拡大するでしょう。
実施する際のポイント
オンボーディングを成功に導くには、ユーザーの課題やニーズに寄り添う柔軟性・応用力と、ユーザーのゴールを把握する指標が必要となります。この2つを満たすために、「タッチモデル」と「KPI設定」が欠かせません。
タッチモデルとは、顧客の層を分類し、それぞれに最適なアプローチをすることです。「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」の3つに分けられます。
ハイタッチは、取引規模が大きい層に対して、手厚い個別対応をします。ロータッチは、ハイタッチ客より取引規模が少し小さい層に対して行うアプローチで、ある程度集団的に対応する点が特徴です。テックタッチは、取引規模が小さく数が多い層に対して、テクノロジーを用いた効率的な対応をします。
KPI設定とは、目標までの達成度合いを具体的に計測・監視するための指標のことです。KPIはいくつかありますが、もっとも重要なのは「解約率」「オンボーディング完了率」「アップセル・クロスセル率」の3つです。より多くのユーザーに、より長くサービスを利用してもらうために上記の3つは欠かせません。
タッチモデルとKPI設定の2つのポイントを意識することで、オンボーディングを成功に導くことができます。
まとめ
人事領域におけるオンボーディングは、新しく採用した社員の順応プロセスのことで、実施することで新入社員の離職を防ぐ効果があります。オンボーディングを成功させるには、長期的・継続的に支援を提供することが重要です。
SaaS領域におけるオンボーディングは、提供するサービスを顧客に継続利用してもらうためのプロセスを意味しており、解約率の改善や、アップセル・クロスセルにつなげることができます。オンボーディングを成功させるには、KPI設定で目標までの達成率を確認しながら、タッチモデルで顧客層別に適した対応をしていくことが重要です。
オンボーディングを実施すれば、企業、従業員、ユーザーそれぞれにメリットがあるため、ぜひ活用しましょう。