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次期後継者へ事業承継を行う際には、5〜10年以上の長期スパンで考える必要があります。事業承継は、自社に関与する人々との信頼関係や、企業の将来に大きく影響する重要な出来事です。事業承継に失敗しないためにも、余裕を持って取り組みましょう。
当記事では、法人企業が事業承継を行う際の流れについて、手順ごとに詳しく解説します。また、後継者不在のケースによる事業承継の方法と、それぞれのメリット・デメリットについても紹介するため、事業引継ぎについて悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
後継者への事業承継を行う流れ
後継者に事業承継を無事完了させるためには、全体的な流れを把握しておく必要があります。事業承継は、ただ経営者が交代するだけではありません。安定した経営を行うためにも、一つひとつの手順を踏み、事業承継をスムーズに進めましょう。
ここでは、事業承継に関する基本的な流れについて紹介します。
会社の現状を把握する
事業承継の手順として、まず、課題を含めた自社の現状を分析します。自社分析を行う際には、資産状況と事業内容の2つの側面からアプローチすることが大切です。
貸借対照表などで資産状況を確認し、株式の評価額や所有情報も把握しておきましょう。事業内容については、役員や従業員、取引先や顧客といった自社に関わる人々から意見を聞き、広い視野で捉えるようにしてください。自社の強みや改善点、価値観など、後継者へ伝えるべき物事を具体化します。
後継者の選定や育成を行う
事業の方向性が定まったところで、後継者の選定に入ります。親族が後継者である場合、理念への共感性も高く従業員や取引先からの理解を得やすいので、時間をかけて事業承継に向けた育成に臨めるでしょう。
従業員から後継者を選ぶ場合は、自社に詳しい人の中から適任者を選べるものの、株式の買取資金が問題となるケースが多く、資金面での支援が必要となるでしょう。
後継者の育成は、長い時間をかけて行う必要があります。経営学や顧客情報といった知的資産を伝授し、優れた経営者へと育てましょう。
事業承継に関する計画書を作成する
現状分析や後継者候補といった事項を踏まえ、事業承継の具体的な計画を立てます。計画書を作成すると進捗度が明確になり、事業承継を着実に進めることが可能です。
下記は、事業承継計画書に記載する内容の例です。
- ・現状分析(資産状況、株式状況、事業内容)
- ・後継者教育スケジュール
- ・承継方法
- ・社長退任・会長退任会見のスケジュール
病気や判断力低下といったリスクに備えるために、引退時期は65〜70歳を目安にしておきましょう。昨今では経営者年齢も高齢化傾向にあるため、心身ともに健康なうちにすべての引継ぎを終えることも、事業承継を成功させる重要なポイントです。
関係者への説明を行う
事業承継の全体像が明確となったら、役員や従業員、取引先などに後継者の紹介を行います。事業承継計画が曖昧なまま紹介を行うと、従業員や取引先が不信感を抱く可能性もあるため、しっかりとスケジュールが固まってから実行することが大切です。ただし、現経営者が高齢である場合は万が一を考慮して、後継者を決定次第早めに紹介を行ってもよいでしょう。
社内外に後継者への協力者を作るためにも、紹介は丁寧に行います。役員や親族らにも正式な紹介の場を設け、今後の方向性について共通認識を深めるとよいでしょう。
経営改善に着手する
事業承継に関わる自社分析で得た内容をもとに、経営改善を行います。非効率的な業務や自社へ期待されていることなどを洗い出し、収支改善や社内体制の整備に取り組みましょう。
事業承継に向けた経営改善として、具体的に下記のような施策が考えられます。
- ・新たなシステムの導入
- ・社員規程の変更
- ・省エネ対策や環境負荷低減への取り組み
- ・固定費の削減
- ・不要資産の売却
退任までは自社の成長・発展に努め、よりよい状態で後継者へ引き継ぐようにしましょう。経営改善のスケジュールについても、具体的な計画を立てることがおすすめです。
計画書に基づいて事業承継を行う
すべての手続きを終えて準備が整ったら、計画書に基づいて後継者へ経営権を譲渡します。後継者の育成が不十分である場合は、承継時期の延期を考慮してもよいでしょう。焦らず、最良のタイミングで事業承継が行えるようにしてください。
事業承継は、後継者と信頼関係を築きつつ、長期目線で取り組む必要があります。必要であれば外部の専門家と相談し、事業承継の成功につなげてください。
後継者が不在の場合の事業承継の方法|各方法のメリットも
現時点で後継者が不在の場合は、事業承継を行うために後継者を探す必要があります。通常は、親族や従業員の中から後継者となる意志や能力がある人を探すものの、他の手段によって事業承継を実現することも可能です。後継者不在を理由に廃業を選択する前に、ぜひ検討してください。
ここでは、親族内承継・社内承継以外の方法を3つ紹介します。なお、親族や従業員への事業承継については下記のページで紹介しているため、参考にしてください。
外部から招いた第三者への事業承継
親族や従業員に適任者がいない場合、社外から後継者を招き、事業承継を行うこともできます。第三者承継を行うメリットとデメリットは、下記の通りです。
メリット
- ・選択肢が広がり、経営者に適した人材を採用できる
- ・経営能力を備えた人であれば、後継者育成にかける時間を短縮できる
デメリット
- ・適任者の見極めが困難である
- ・自社の事業概要や理念について一から説明し、理解してもらう必要がある
- ・従業員や取引先から理解を得にくい
なお、株主の譲渡を行わない場合、株式取得に関わる資金調達は必要ありません。
2-2. M&Aによる事業承継
M&Aによる事業承継とは、他社に自社を売却し、経営権を譲った第三者に自社の事業を引き継いでもらうことです。後継者不足に悩む企業が増える中、M&Aによる事業承継は主流となりつつあります。
M&Aによる事業承継のメリットとデメリットは、下記の通りです。
メリット
- ・株式譲渡の場合、売却利益が得られ、負債も引き継がれる
- ・将来性のある企業に譲渡できれば今後の発展も期待できる
デメリット
- ・従業員や取引先への理解を求める必要がある
- ・譲渡後の経営方針や理念は買い手に委ねられる
現在はインターネットの普及により、中小企業のM&Aも活発です。経済産業省では、親族内承継や第三者承継(M&A)に取り組む中小企業へのサポートを強化するため、2021年4月1日から事業承継・引継ぎ支援センターの活動を開始しています。仲介業者や税理士への相談も含め、前向きに検討してもよいでしょう。
IPOによる事業承継
IPOとは、未上場の企業が証券取引所に上場し、株取引が行えるようにすることです。メジャーではないものの、IPOによって創業者利益を獲得できます。
IPOによる事業承継のメリットとデメリットは、下記の通りです。
メリット
- ・株価によっては多額の売却益が得られる
- ・上場によって企業価値が上がる
- ・後継者候補を探しやすくなる
デメリット
- ・上場にはコストと時間、エネルギーが必要である
- ・上場企業として継続的な事業成長と、リアルタイムな情報開示が求められる
- ・後継者が必ずしも見つかるとは限らない
IPOがうまくいけば、多額の資金調達が可能となります。しかし、企業が上場することは簡単ではなく、中小企業にとっては非現実的です。単に後継者問題を解決したい場合には、他の手段を選ぶことをおすすめします。
まとめ
後継者に事業承継を行う際は、流れに沿って進めることが大切です。まず、会社の現状を把握し、後継者の選定と育成、事業承継計画書の作成に取り組みます。その後、関係者へ後継者を紹介し、経営改善に取り組みつつ、計画書に基づいて事業承継を実施しましょう。
後継者不在の場合、第三者への事業承継や、M&A、IPOといった手段を取ることも可能です。大切なのは、会社の現状に合った最適な支援方法を選択することです。事業承継には5〜10年以上の期間を要するため、余裕を持って取り組みましょう。
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