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多くの顧客にサービスや自社商品を選んでもらうためには「他社との違いを明確にし選ばれる理由」を意識する必要があります。
モノや情報が溢れている現代において、差別化や付加価値づくりをしていかなければ選ばれることは難しいです。
適切に差別化を図ることができれば、無理な価格競争から抜け出し顧客からの信頼と利益を獲得し続けることが可能となります。
この記事では、差別化戦略の概要や実際に採用する際のポイント、差別化戦略の成功事例について解説します。自社の経営戦略を構想する際の参考にしてください。
差別化戦略とは3つの競争戦略の中の1つ
差別化戦略とは、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱した「3つの競争戦略」の1つです。
3つの競争戦略は、次の要素によって構成されています。
差別化戦略
差別化戦略とは、他社との差別化を図ることです。
自社商品の独自性を多くの顧客に知ってもらって優位性を高め、価格を下げなくても買ってもらいやすくします。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは、価格面で優位に立つことです。価格競争に勝って収益を確保すべく、より低コストで商品を生産します。
集中戦略
集中戦略とは、特定の購買者や商品に絞り、無駄なコストを省いて利益を増やす戦略です。
「ターゲットを絞る」あるいは「特定の商品に経営資源を集める」ことで、低コストや差別化を図り、優位性を高めます。
差別化戦略の4つの軸
差別化を図るために工夫すべき4つの軸は、次の通りです。
ブランドイメージ
1つ目の軸は、ブランドイメージです。ターゲットを明確化し他社との差別化を図ることで、自社ならではの付加価値を高めます。
ブランド力の向上が狙えるでしょう。
商品
2つ目の軸は、商品です。商品の機能や品質・デザイン性などにこだわります。他社商品との違いを明確にして、オリジナリティを強調するといいでしょう。
サービス
3つ目は、サービスです。企業理念や行動指針と結びつくようなサービスを提供することで、他社にない付加価値を創造します。
流通チャネル
4つ目は、流通チャネルです。顧客のもとへ商品を届けるまでの流通経路を工夫して、顧客にとっての利便性・満足度を高めます。
このような4つの軸によって、他社との差別化を図ることができます。
コストリーダーシップ戦略との対比で考えると、差別化戦略は価格などの経済的な価値による訴求は薄くなるでしょう。
経済的な価値を超えるものや質的な満足感を強調することで、他社と差別化を図ることが、差別化戦略の特徴です。
差別化を図る上で重要なUSP
USPは商品独自の強みを意味する言葉であり「Unique(独自性)」「Selling(提供する商品)」「Proposition(提案)」に由来します。
マーケティングにおけるUSPは、単なる「独自の強み」ではなく「独自の強みを用いて、確実に顧客へ提供できる利益」です。
低価格や高品質などにこだわるだけでなく、USPを的確に発信することで業界での優位性を保っている事例も少なくありません。
それぞれについて解説します。
Unique(独自性)
Uniqueは「唯一の」「他にはない」という意味です。USPの重要な要素は、他社商品とは異なる強みを持つことです。
自社商品に他社と差別化できる強みを持つことで、顧客に対して特別な価値を提供することが期待されます。
明確な独自性を持ち模倣されないようにする必要があり、世間に向け発信するタイミングが最も重要となります。
Selling(提供する商品)
販売する商品やサービスが標準的でありきたりなものでは、独自性がなく他社との差別化を図ることができません。
他社が真似できない独自性を持った商品であることが条件です。また自社商品の特徴を知ることも、差別化を図る上で必要になります。
顧客にとってより魅力的で特別に感じてもらえるように、提供し続けなければなりません。そのためより魅力的に感じてもらえるような工夫が必要です。
Proposition(提案)
顧客に対して何を提案するかを明確に伝えることを意味します。
顧客がなぜ自社の製品やサービスを選ぶべきかを示し、他社との比較において明確な利点を示すことが求められます。
また自社の商品が、より魅力的に伝わるような提案方法を模索しなければなりません。
自社の価値や利点を明確にしたのに、他社と同じような提案では魅力が伝わらないためです。
提案方法も多様にありますが、より購入意欲を促進させるような提案が必要です。
以上の要素を踏まえて、USPを作る必要があります。
USPを作るときに押さえたい重要なポイントは、次の通りです。
- 前例のない個性的なUSPを、タイミングよく発信する
- すべての顧客を満足させようとせず、ニッチな市場で専門性を生かす
- 複数の要素や概念を合わせて、新しい価値を生み出す
USPを通じて顧客の共感を獲得し続けるためには、明確なUSPを作るだけでなく一度発信したUSPを守り続けることも重要です。
商品の質や内容がUSPとずれるとターゲット設定がぶれるばかりか「前のほうがよかった」と顧客を落胆させかねません。
USPを作って差別化を図るためには、まず自社商品の特徴を知ることが必要です。
ネガティブに捉えられやすい要素も差別化の鍵となり得るため、長所と短所の両方に着目します。
自社商品の特徴をUSPに結び付けにくい場合や差別化戦略に関する理解を深めたい場合は、イマジナの無料ブランディングセミナーで最先端の知識を学びましょう。
差別化戦略を採用するメリット・デメリット
差別化戦略は、いかなる場合でも適切な戦略であるとは限りません。差別化戦略を採用して、現在の状況よりも悪くなってしまうこともあります。
そのため、実際に差別化戦略を採用するか考える場合は、メリットだけでなくデメリットも理解しておくことが大切です。
ここでは、差別化戦略のメリットとデメリットについて解説します。
【メリット】価格競争を回避できる
商品やブランドの差別化を行い高い付加価値を提供することで、「高いお金を払ってでも買いたい」と顧客に思ってもらいやすくなります。
その結果、無理に安売りする必要がなくなり、価格競争を避けつつ自社を選んでもらうことができます。
さらに、強固なブランディングによって「新規参入しても勝つことは難しい」と他社を牽制することも可能です。
差別化戦略を進めることが、会社そのものを改革する契機となることもあります。
商品やブランドの差別化を目的とした市場調査や競合他社のリサーチなどを通じて、自社の強みや弱みが明らかになることが少なくないためです。
また、さまざまなスキルや視点を持つ社員を積極的に巻き込んで差別化戦略を進めることで社員のモチベーション向上にもつながります。
【デメリット】既存顧客の反発を招く可能性がある
差別化のためにターゲットを絞ることで、ターゲットから外れた顧客の反発を招く恐れがあります。
例えば「高価格でも品質の高い新商品」を売り出した場合、低価格の他社製品へ顧客が流れることもしばしばです。
既存顧客の多くが他社へ流れ、なおかつ新規顧客を思うように獲得できなければ、十分な利益を得ることができません。
差別化戦略のための市場調査や商品開発には、大きなコストを要する場合がほとんどです。
差別化を図ってもコストに見合う利益を得られなければ、かえって損失につながる恐れもあります。
また、差別化した自社商品を競合他社に模倣されるリスクも無視できません。
差別化を成功させるためには、まず他社に真似されにくいUSPを打ち出すこと、そして差別化を図った後も油断せずトレンドをチェックし続けることが大切です。
USPを打ち出した後も的確に市場のトレンドをチェックし、自社の価値を高める必要があります。
的確な差別化戦略を打ち出すことで市場価値を高め、商品・サービスの質の向上につながります。
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差別化戦略に役立つフレームワークをご紹介
差別化戦略を策定する際に役立ついくつかのフレームワークがあります。以下に代表的なフレームワークを3つ紹介します。
1,ファイブフォース(5F)モデル
差別化戦略を考案したマイケル・ポーターが提唱したフレームワークです。このモデルでは、業界内の競争力を分析するために、以下の5つの要素を考慮します。
- 新規参入の脅威
- 代替品の脅威
- 顧客の交渉力
- 競合他社の競争力
- サプライヤーの交渉力
自社の置かれている状況や、今後脅威となりうるものを把握することができます。
2,価値提案(Value Proposition)モデル
顧客との関係を明確化し、独自の価値提案を構築するためのフレームワークです。
顧客のニーズに対して自社が出せる強みを提供する、かつ競合が少ない領域・未解決のニーズを探し出す際に利用されます。商品販売後も常に考えておく必要があります。
3,SWOT分析(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)
SWOT分析は、企業の内部の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、外部の機会(Opportunities)と脅威(Threats)を評価するフレームワークです。
この分析を通じて、自社の差別化要素や競争力を特定し戦略を立案します。自社の現状や競合企業の脅威・市場の将来性を把握するために必要な分析ツールです。
これらのフレームワークは、差別化戦略を策定する際に有用なツールとなります。
ただし、各企業や業界の状況によって適切なフレームワークは異なる場合もあります。適切なフレームワークを選択し、状況に応じた分析を行うことが重要です。
差別化戦略を採用する際のポイント
現代社会には便利なモノやサービスが溢れているため、そもそも差別化を図りにくい業界も少なくありません。
しかし、分析を繰り返すことで、差別化の余地を見いだしている企業も多いです。
差別化の余地がないという思い込みを捨てて、いくつかのポイントを踏まえながら分析を進めることで成功を収めやすくなります。
ここでは、差別化戦略を採用する場合の基本的なポイントについて解説します。
ターゲットを明確化する
「リモートワークが多い30代男性」「アウトドアスポーツを好む大学生」などのようにターゲットを明確化することで、ターゲットに合わせた戦略を構築することができます。
ターゲットの基本的な嗜好や行動パターン、経済状況などを知ることで、開発から訴求方法まで一貫した戦略が構築できます。
「ターゲットを広げれば幅広い層に商品を買ってもらえる」としばしば誤解されますが、万人受けを狙って商品の持ち味を消すことは差別化と正反対の行為に他なりません。
他社製品と比べて「どこが・どのように素晴らしいか」が曖昧な商品は、一時的に注目されることはあっても多くのリピーターを得ることは難しいでしょう。
顧客ニーズを分析する
いくらターゲットを絞っても、ターゲットについてよく把握しないままでは的外れな商品を作ってしまう恐れがあります。
また、ターゲットに合致する全員がまったく同じニーズを持つとは限りません。
「自分がターゲットなら商品選びの基準は何か」「どの競合商品と比べるか」などを数パターンに分けてシミュレーションすることで、具体的なニーズをつかみやすくなります。
さらに、顧客へのアンケート調査や現場での聞き取りなどを通じてターゲットの生の声を聞くこともおすすめです。
差別化したい商品が小売店で販売されるものであれば、「どのような商品が、どれだけ店頭に並んでいるか」を直接確認してもよいでしょう。
自社の強みを見つける
他社には真似できない自社の強み・こだわりをアピールすることも、差別化に役立ちます。
こだわりのポイントはさまざまですが、例えば「品質の高さ」や「安全性」などをアピールすることが可能です。
また、環境負荷の少なさや、斬新なデザインもアピールポイントとなります。
このほか、有名人をイメージキャラクターとして起用することも差別化に役立ちます。
テレビCMや看板広告などに有名人を登場させることでファンの注目を集め、ターゲットに訴求することが可能です。
差別化戦略の成功事例
「差別化戦略を採用すべきか否か」「差別化戦略をどのように進めるか」を考えるとき、身近なモノの製造販売元やサービスの提供元からヒントを得られることがしばしばです。
企業名や商品の特徴が広く知られているということは、その企業が差別化に成功し世間に対して大きな影響を与えていることの証拠に他なりません。
ここでは、有名企業による差別化戦略の成功事例について4つ解説します。
モスバーガー
大手ハンバーガーチェーンのモスバーガーは、栄養バランスに気を遣いながらハンバーガーを味わいたい人やジャンキーな味のファストフードに抵抗がある人に多く支持されています。
そもそもモスバーガーは日本発祥であり、日本人の繊細な味覚に合う味付けや、健康へのこだわりによって多くのメニューが考案されました。
積極的に値下げをしない代わりに品質へのこだわりを貫き、また地域限定メニューを積極的に発表することで、競合他社との差別化を図っています。
店舗の立地も、モスバーガーの差別化の重要なポイントです。
外出のついでにファストフードを食べる機会が少ないファミリー層や高齢者などの支持を得るため、郊外の住宅地や地元住民向け商業施設などに多く出店しています。
また、長時間滞在してもらいやすいよう店内にナチュラルカラーや観葉植物を多く配置していることも特徴です。
出典:モスバーガー
スターバックス
スターバックスは自宅でも職場でもないサードプレイスをテーマとし、フレンドリーなスタッフとの交流を楽しんでもらうことで、多くの女性や若者に支持されています。
普段の生活圏だけでなく旅先でも利用しやすいよう、観光地などに独自性の高い店舗を設けていることもポイントです。
スターバックスではコーヒーに加えてデザート系のドリンクを多く扱っており、顧客は自分が注文したドリンクを自由にカスタマイズできます。
また、ファン同士でカスタマイズ情報を交換しながら人脈を広げているケースも少なくありません。
このようなことから、スターバックスは単なるカフェの域を超えて、コミュニケーションツールとしての独自の地位を獲得しているといえるでしょう。
Apple
Apple製品の最大の特徴は、一見してApple社の製品とわかるシンプルかつスタイリッシュなデザインです。
iPhoneシリーズでは他社製品に先駆けてタッチスクリーン方式を採用し、操作ボタンの数を大幅に減らしてディスプレイを大きくしています。
製品そのものだけでなく、Appleストアの外観や内装もオリジナリティのあるデザインとなっています。
シンプルなデザインのもう1つの目的は、ユーザーがスムーズに操作できるようにすることです。
アイコンのデザインをわかりやすいイラストにすることで直感的な操作が可能となり、さまざまな操作をワンタッチで済ませることができます。
デザインの独自性と高い操作性によって世界各国で支持されているiPhoneは、スマートフォンブランドとして確固たる地位を築いています。
出典:Apple
IBM
アメリカに本拠地を構えるIBMは、世界170か国以上に進出している大手情報機器メーカーです。
創業当初は事務用計算機メーカーでしたが、現在は業務用コンピューターやソフトウェアの製造販売をはじめさまざまな事業を展開しています。
もともと、IBMはオンプレミスによる基幹業務の構築を得意としていました。
オンプレミスとは、インフラ構築やシステム稼働に必要なサーバーやソフトなどを自社で保有し運用することです。
しかし、クラウドの普及などによって法人向けハードやソフトの売り上げが低迷し、またアプリケーションやインフラに対する顧客ニーズも次第に多様化してきました。
このような市場環境や顧客ニーズの変容を受けて、IBMはクラウド関連事業やAI関連事業に主軸を移しています。
クラウド管理ソフト開発や、自社プロセッサのオープン化によるビッグデータ解析支援により、IBMは他社との差別化を図っている状況です。
出典:IBM
成功事例から差別化戦略のコツをつかもう
差別化戦略のコツをつかむためには、成功事例を研究することが有益です。企業や業界によって採用できる差別化戦略も多様にあります。
差別化戦略を採用することで、自社の現状や今後の脅威も明らかになり、また新たな戦略を打ち出すことが可能です。
多様な戦略を持つことで独自性も生まれ、顧客に価値を提供し続けることができます。
成功事例を参考に、自社ならではの差別化戦略を柔軟に構築することで成功につながるでしょう。
差別化戦略のポイントを学びたい方は
差別化戦略は、自社商品の独自性を顧客に知ってもらうことで優位性を高める戦略です。
差別化戦略に力を入れることで価格競争を避けながら利益を得やすくなり、また強固なブランディングによって新規参入を抑制する効果も期待できます。
差別化戦略においては、ただ他社製品との違いを主張するだけでなく他社製品では実現できないメリットを顧客に約束することが重要です。
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