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企業を経営していく上で、自社を取り巻く環境の変化に対応した意思決定を、適切かつ迅速に行うことは非常に重要です。
その適切かつ迅速な意思決定を行うための意思決定の方法として、主に「トップダウン」「ボトムアップ」の2つがあります。
このトップダウンとボトムアップの意思決定の特徴はそれぞれ異なっています。
そこで、この記事では、トップダウンとボトムアップの意味や違い、それぞれの意思決定方式に適している組織や状況について解説することにしましょう。
また、「トップダウンデモクラシー」の概要や、意思決定におけるインナーブランディングの必要性も併せて確認し、自社の意思決定の現状把握と改革を進めましょう。
トップダウン・ボトムアップの意味とは?
「トップダウン」や「ボトムアップ」は、いずれも企業などの組織における意思決定の在り方を示すビジネス用語です。
◆トップダウンとは
社長や役員などの「トップ(上層部)」が意思決定を行い、従業員に指示を出す管理方式です。現場で働く従業員は、トップ層が決定した意思や指示に基づいて行動します。
◆ボトムアップとは
現場の従業員が現状把握や計画立案を行い、トップに提案する形式の管理方式です。トップは提案を考慮した上で判断し、従業員に対して指示や命令を出します。
トップダウン
トップダウンとは、英語の「top」と「down」を組み合わせた言葉であり、日本語では「上意下達」とも表される意思決定方式を指します。
トップダウンは「トップから下へ」という意味の通り、発言権や決定権を持つ企業の経営層が決定したことを部下・従業員に対して指示を与える運営スタイルです。
ボトムアップ
ボトムアップとは、英語の「bottom」と「up」を組み合わせた言葉であり、日本語では「下意上達」とも表される意思決定方式のことです。ボトムアップは「下からトップへ」という意味の通り、現場の従業員からの提案に基づいて、経営層が組織としての意思決定を行う運営スタイルを指します。
トップダウン・ボトムアップの違い
「トップダウン」「ボトムアップ」は相対する意思決定方式であり、2つのスタイルにはさまざまな違いが見られます。
自社に取り入れる意思決定方式にどちらのスタイルを選んだ場合でも、両者の違いを意識することは、意思決定の在り方を考える上で非常に重要なポイントと言えるでしょう。
ここでは、トップダウン・ボトムアップの違いについて、「決定までのスピード」「決定を誤ったときのダメージ」といった観点から比較・考察します。それぞれの特徴を理解した上で、自社に適した意思決定方式を検討しましょう。
決定までのスピード
トップダウンとボトムアップの大きな違いとして、意思決定までにかかる時間の長さが挙げられます。
トップダウンでは、意思決定のスピードはボトムアップよりも早くなる傾向があります。
トップダウンでは、経営層や役員といった限られた人物が合意形成をすれば良いため、意思決定におけるプロセスを迅速に進めることが可能です。
また、経営陣が決定した方針であるため、その方針を実行に移すために必要な経営資源を動員しやすくなります。
こうしたことから、意思決定後の伝達・実行もスピーディーに行え、素早い対応が可能となるでしょう。
一方、ボトムアップでは、トップダウンよりも意思決定のスピードは遅くなる傾向が強いです。
ボトムアップでの意思決定の場合、解決すべき問題にかかわる従業員がアイディアを出し、合意形成に達していく必要があります。
そのため、トップダウンの場合よりも多くの従業員から出るさまざまな意見を集約した上で議論を進める必要があり、トップダウンよりも意思決定にかかる時間が長くなる傾向があります。
現場と経営層との間にある階層が多い場合は、さらに時間がかかりやすいことに注意が必要です。
決定を誤った場合のダメージ
トップダウンでは、経営層の適切な意思決定で会社が大きく成長できる場合もありますが、意思決定を誤った場合は大きな影響・損失を招くリスクがあることにも注意が必要です。
また、トップダウンでは、会社全体が同じ方向に全力で進む傾向にあります。
そのため、意思決定が間違っていた場合に進む方向を変更することに時間がかかるだけでなく、進路変更ができずに事業が失敗に終わる可能性もあります。
一方、ボトムアップで意思決定を誤った場合に受けるダメージは、トップダウンほど大きくないケースが多いと言われています。ただし、「まったくダメージがない」「ダメージが小さい」というわけではないことに留意しましょう。
トップダウンのメリット・デメリット
ここまでトップダウンとボトムアップの違いについて述べてきました。しかしながら、どちらが良くて、どちらが悪いというわけでもなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。
トップダウンとボトムアップを効果的に用いるためにも、ここではトップダウンとボトムアップのメリットとデメリットをそれぞれ紹介しましょう。
スピーディーに実行に移せる
トップダウンのメリットの1つは、スピーディに実行に移せることです。
意思決定をスピーディに実行に移すためには、社内にその決定を伝達した上で、実行のために必要な経営資源を素早く動員する必要があります。
トップダウンでは、上層部が意思決定を行っているためその伝達も素早く行えるだけでなく、必要な経営資源も上層部の判断によって動員できるでしょう。
例えば、トップの「鶴の一声」で優秀な人材を実行に必要な部署に配置転換するなど、組織を変えながら実行に向かって進めます。
そのため、トップダウンでは意思決定をスピーディに実行に移せるのです。
「時は金なり」といいますが、一刻一秒を争うビジネスチャンスの決定はトップダウン型でなければ難しいでしょう。
また、トップダウン型は危機管理的にもメリットがあります。
例えば、顧客情報を漏洩させてしまった場合など、企業としての危機管理が問われるようなときもトップダウン型であれば会社全体が一枚岩になった対応が可能です。
組織に一体感がでる
組織全体に浸透する一体感もトップダウン型の大きなメリットの1つです。確固たる目標と指針が組織全体で共有できるため、社員が一丸となってゴールに向かえます。
例えば、上層部が顧客満足度を向上させるための指針を出したとしましょう。
社員はその指針に沿って迷わず行動できますし、職場の上司・同僚・部下のそれぞれの立場で同じ目標に向かう努力をするようになります。
こうした姿勢は組織全体に一体感をもたらし、統一された姿勢はお客様や取引先からの信頼を得やすくするでしょう。
社員が自主的に動けなくなる
トップダウン型のデメリットは、社員が自主的に動けなくなる可能性が高いことでしょう。
経営層と従業員との間で信頼関係が築けていない場合、指示や命令の内容によっては従業員から反発を招く可能性があります。
反対に、経営層の判断に依存してしまい、自分では行動できない「指示待ち社員」が発生する恐れも少なくありません。
トップの能力に依存してしまう
優れたトップによるトップダウン型は大きな効果をもたらしますが、反面、トップの能力に依存しがちであるというデメリットもあります。
カリスマ性の高い経営者が次期経営者に交代する場合、従業員が次期経営者に対して不安や不満を感じてしまう可能性もあります。
経営層の人材を入れ替える際には、従業員との信頼関係を構築し直す必要があることも留意し長期的な視点が必要です。
こうしたトップの能力に自社が依存しすぎていると感じた場合には、株式会社イマジナの企業ブランディングに関するセミナーへの参加がおすすめです。
イマジナが提供している企業ブランディングのセミナーで学べる内容は、企業の外部に対して企業イメージを訴求するアウターブランディングだけではありません。
企業の内部、つまり従業員に対して企業理念や経営方針を浸透させることで、従業員が自発的に企業方針に基づいて行動できるようにするインナーブランディングについても学べます。
そのため、従業員が自分の頭で考えてくれないという悩みや、それゆえに次世代の管理職が育っていないというお悩みをお持ちの場合はイマジナが提供する企業ブランディングのセミナーの受講が効果的です。
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ボトムアップのメリット・デメリット
社員の声やアイディアが反映されやすいボトムアップ型にも、メリットとデメリットがあります。それぞれについて、以下に解説していきましょう。
現場のリアルな声が反映される
ボトムアップ型の大きなメリットの1つが、現場のリアルな声が反映される点です。
ボトムアップ型では、従業員の声を積極的に取り入れた意思決定を行うため、現場の状況に合った経営が可能になります。
また従業員の声が反映されるため、従業員からの反発も少ないでしょう。
社員の主体性を育てられる
社員の自主性や主体性を育てられるのもボトムアップ型のメリットです。
従業員たちも「より良くするためにはどうすればよいか」を主体的に考えて行動できるようになるでしょう。
また、従業員の多様な意見・アイディアを幅広く採用できるため、革新的なイノベーションが期待できます。
実行までに時間がかかる
意思決定から実行までに時間がかかるのがボトムアップ型のデメリットの1つです。
全体の意見をまとめるのにも時間がかかりますが、実行手段の決定にも時間がかかります。
ボトムアップでは多様な意見を参考にするため、方針や施策にブレが生じることも考えられます。
また、従業員の能力やスキルによっては適切な判断ができず、誤った方向に進んでしまう恐れがあることにも注意が必要です。
大きな変革はできない
大きな改革が難しいのもボトムアップ型のデメリットといえます。
アップダウン型ではトップの「鶴の一声」で大きな方向転換や革新的な変革を実行できますが、ボトムアップ型ではそれができません。
日和見的な意見が多数になると、現状維持が目的となり変革や改革は難しくなります。
また多様な意見を取り入れ調整すると、保守と革新のせめぎ合いで無難な落としどころに終始してしまいがちです。
最悪の場合、それぞれの意見や派閥が歩み寄った結果、最も非効率的な内容の決定になってしまう可能性もあります。
トップダウン・ボトムアップに適している組織・状況
「トップダウン」「ボトムアップ」にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが優れているかを断言することはできません。
例えば、トップダウンで判断するべき組織や状況でボトムアップを採用した場合、意思決定までのプロセスが非効率となってしまったり、判断を誤ったりする恐れがあります。
このように、組織のスタイルや、意思決定が求められている状況によって最適な方式が異なることに注意してください。
ここでは、トップダウン・ボトムアップに適している組織や意思決定が求められる状況について解説します。それぞれの特徴を踏まえた上で、自社の状況に落とし込みましょう。
トップダウンに適している組織・状況
トップダウンには、迅速かつ大胆な判断が可能であり、組織が一体となって動きやすいという特徴があります。
以下のような組織・状況では、トップダウンが適していると言えるでしょう。
◆トップダウンに適した組織
- 経営層(意思決定者)のカリスマ性や人望が高い組織
- 育成過程にある従業員が多い組織
経営層の求心力が大きく、従業員との信頼関係がうまく構築できている組織では、トップダウンでも従業員が納得して行動しやすいと考えられます。
また、起業直後・スタートアップ中のベンチャー企業のような従業員の能力育成が十分なレベルにない組織では、トップダウンのほうが判断ミスが少なく済むでしょう。
◆トップダウンに適した状況
- 急成長するチャンスを迎えているとき
- 組織の危機など緊急性の高い問題を抱えているとき
- 単一の商品・サービスを広く展開していくとき
急成長するチャンスや組織の危機など、緊急性が高く大胆な判断が求められているときは、迅速かつ革新的な意思決定が可能なトップダウンが向いています。
また、単一の商品・サービスのようにマニュアル化しやすい事業を大きく展開するときにも、トップダウンによる判断・決定が有効です。
ボトムアップに適している組織・状況
ボトムアップには、現場の意見を広く取り入れるため従業員の主体性が育つという特徴があります。以下のような組織・状況では、ボトムアップが適していると言えるでしょう。
◆ボトムアップに適した組織
- 幅広い事業を手がけている組織
- 専門性が高い組織
- 次世代の経営人材を育成したい組織
さまざまな事業を展開している組織や、専門性の高い業務が多く現場の従業員による判断・調整が多い組織は、ボトムアップのほうが適していると言えます。
また、従業員が経営者視点で物事を考えられるようになるため、経営に関わる人材育成を進めたい組織にも有効です。
◆ボトムアップに適した状況
- 現場による状況把握・判断が重要になるとき
- スケジュール・予算に余裕があるとき
現場に寄り添った意思決定が重要なシーンでは、従業員の意見を広く吸い上げられるボトムアップが適していると考えられます。
スケジュールや予算に余裕があれば、従業員のモチベーションアップにつなげるためにもボトムアップに取り組んでみるとよいでしょう。
トップダウン・ボトムアップを組み合わせた「トップダウンデモクラシー」
トップダウン・ボトムアップにはそれぞれ異なる特徴があるため、両者のメリット・デメリットを踏まえた上で双方を上手に組み合わせた意思決定を行うことが理想的です。
トップダウン・ボトムアップをうまく両立させた意思決定の在り方の代表的なものとして、「トップダウンデモクラシー」が挙げられます。
トップダウンデモクラシーでは、問題提起や最終判断は経営層が行うものの、問題に対する解決方法の検討やアイディアの提案は従業員が行います。
ボトムアップの要素があり、従業員の積極的な参加が求められるため、従業員と経営層の信頼関係や従業員の会社への愛着・帰属意識が重要なポイントとなるでしょう。
会社への愛着・帰属意識を醸成するために、まずはインナーブランディングを行うことが重要です。インナーブランディングについてさらに深く理解したい場合には、無料のブランディングセミナーなどを活用しましょう。
ここでは、トップダウンデモクラシーに取り組む場合における意思決定までのプロセスについて簡単に説明します。
経営層による提案
トップダウンデモクラシーでは、まず、経営層が現在の経営課題の提起や、事業内容に関するアイディア・プロジェクトの提案を行います。
トップダウンの場合は具体的な指示内容まで経営層が考えますが、トップダウンデモクラシーの場合は「組織変革の必要性」を従業員に提起することが重要です。
企業・組織を変化させることの重要性が伝われば、従業員も自分ごととして新たなプロジェクトや現状の課題解決を進めやすくなるでしょう。
現場でのプロジェクト推進
経営層から提案された方向性や大まかなプロジェクト案をもとに、従業員が人材を集めてプロジェクトを推進します。
現場が中心となってプロジェクトを進めることで、現場視点でもリスクや課題が見つけやすくなるでしょう。
現場主体のプロジェクト推進を成功させるためには、課題の解決に積極的に取り組める環境・体制を整えておくことが大切です。
さまざまな立場・部門の人材を集めた上で、チーム内での役割を明確にすることも、現場の責任者に伝えておきましょう。
経営層による意思決定
現場の従業員から届いたプロジェクトの結果や課題解決に向けた提案をもとに、経営層が最終的な意思決定を行います。
トップダウンデモクラシーの大きなメリットは、経営層と従業員の両方の提案をバランスよく取り入れられる点にあります。現場の従業員の意思を最大限尊重し、なるべく積極的に取り入れるようにしましょう。
トップダウン・ボトムダウンについて学ぶなら
トップダウンは経営層からの指示に基づいて現場が行動する意思決定方式であり、ボトムアップは現場が経営層に提案した内容をもとに経営層が判断する意思決定方式を指します。
トップダウン・ボトムアップにはそれぞれ異なる特徴があり、メリット・デメリットも異なるため、自社の組織や状況に応じて取り入れる方式を検討しましょう。
トップダウン・ボトムアップ・トップダウンデモクラシーのいずれの方式でも、従業員の経営層との信頼関係や自社への愛着・帰属意識が重要です。
この会社への愛着・帰属意識を醸成するためにも、無料ブランディングセミナーを活用し、インナーブランディングに積極的に取り組みましょう。
インナーブランディングという言葉には馴染みがない方も多いかもしれません。しかし、インナーブランディングは近年注目されつつあるブランディング手法です。
インナーブランディングでは広告やCMといった企業外に向けた企業イメージの浸透ではなく、企業内の従業員に経営理念や経営方針を浸透させることを指します。
そのため、トップダウン・ボトムアップ・トップダウンデモクラシーのいずれの意思決定を行う場合でも、インナーブランディングの手法を学んでおいて損はありません。
株式会社イマジナでは、そうしたインナーブランディングの手法を学べるセミナーを無料で開催しております。
ぜひこの機会にセミナーを受講し、インナーブランディングの手法を取り入れ、企業業績の向上を目指しましょう。