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内閣府では、充実感を感じながら働き、育児や介護、家庭や地域、自己啓発などの個人の時間を持てる、健康で豊かな生活ができる働き方・生き方を推進しています。仕事と生活のバランスをうまく保つには、仕事での生産性を向上させ、生活の時間を確保することが大切です。
当記事では、生産性とはどういったものか、また生産性向上の重要性や業務効率化との違い、生産性向上に成功した企業の事例などを解説します。自社の生産性の取り組みにぜひ生かしてください。
生産性とは?
生産性とは、生産活動に投じた資源に対し、価値のあるものをどれだけ生み出せたかを表したものです。ヨーロッパ生産性本部(EPA)では、生産性を「生産性とは、生産諸要素の有効利用の度合いである」としています。
生産性は下記の式で表せます。
生産性=産出(output)÷投入(input)
また、生産性は以下の3つに分類できます。
種類名 | 特徴 |
---|---|
労働生産性 | 労働者の視点から捉えた生産性。労働者1人あたりや1時間あたりに生み出す売上や製品を数値化したもの |
資本生産性 | 資本の視点から捉えた生産性。機械や設備、土地などの資本がどれだけの成果を生み出したかを示したもの |
全要素生産性 | すべての生産要素に対する産出量の割合を示す数値 |
一般的に、生産性というときは「労働生産性」を指します。労働生産性には、下記2つの種類があります。
- 付加価値労働生産性:労働者1人がどれくらいの粗利益を生み出したか
- 物的生産性:労働者1人がどれくらい製品やサービスなどの価値あるものを生産したか
生産性向上のための考え方
生産性の向上とは、より少ない資源でより大きな成果を上げることを意味します。生産性を向上させるには、アウトプット(生産量や付加価値)を上げるか、インプット(生産要素)を減らすことが必要です。
生産性の向上を目指すなら、インプットとアウトプットのどちらを変えるのか、方向性を決めなければなりません。インプットは減らしつつアウトプットは維持する、インプットは維持しつつアウトプットを増やすなどの方法があります。
生産性向上と業務効率化の違いとは?
企業が収益性を高めるのに欠かせないのが、生産性向上と業務効率化です。2つは同列で語られることが多いものの、意味は異なります。
生産性向上と業務効率化には、次のような違いがあります。
生産性向上 |
|
---|---|
業務効率化 |
|
生産性を向上させる意義とは?重要性とは?
生産性が向上すれば、企業はより少ない時間と労働力でより大きな成果を得られるようになります。コスト削減が可能になり、競争力が上がることで競合他社と闘っていけるでしょう。また、人手不足の解消や労働環境の改善にもつながるなど、生産性向上にはさまざまなメリットがあります。
ここでは、特に大きなメリットを2つ挙げて解説します。
長時間労働の是正につながる
2019年4月1日より、「働き方改革関連法案」が順次施行されています。
政府は、働き方改革について次のように説明しています。
「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
引用:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」2022/10/13
働き方改革を実施する目的である、従業員が柔軟な働き方を選択できる環境を実現するには、長時間労働が常態化している現状の是正が欠かせません。政府が長時間労働の是正のために必要な施策として挙げているのが、生産性の向上です。
生産性が向上して従業員1人、または1時間あたりの生産量が増加すれば、長時間働く必要がなくなるためです。
長時間労働が是正されて過剰な残業がなくなれば、プライベートな時間が確保できます。ワークライフバランスが改善することで、従業員の仕事に対するモチベーションが上がり、結果的に従業員満足度の向上にもつながるでしょう。
人口減少が進む中でも安定した利益を生み出せるようになる
国内における15歳以上65歳未満の労働人口は年々減少を続けています。
出典:内閣府「高齢化の状況」
OECDデータによると、2020年における日本の1時間あたりの労働生産性は加盟国38か国中23位、1人あたりの労働生産性は28位でした。いずれも、データを取り始めた1970年以降でもっとも低い順位です。
また、2020年の日本の1時間あたりの労働生産性は49.5ドル(約5,086円)で、アメリカの6割程度にあたります。1人あたりの労働生産性は78,655ドル(約809万円)で、ポーランドなどの東欧の国々と同水準です。どちらも、決して高い数値ではありません。
生産性低下の現状を打破し、国際競争に打ち勝つには、生産性を高める取り組みが必要です。生産性が向上すれば、人口減少による労働者の不足で人材の確保が難しい状況においても、安定して利益を生み出せるようになる可能性が高く、国際競争力の向上も見込めます。
生産性向上に成功した事例3つ
政府は生産性向上に取り組む企業を積極的に支援する姿勢を見せており、生産性を向上させた企業に対して労働関係助成金の割増を行っています。
出典:厚生労働省「労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます」
生産性向上を目指した取り組みは簡単ではありませんが、成功している企業も存在します。ここでは、政府の資料を基に成功事例を業界別に見ていきましょう。
飲食業の事例
株式会社みすずコーポレーションは、油揚げや高野豆腐などの製造・販売を行う企業です。
従来、油揚げは以下の業務フローで製造していました。
- 1.完成した油揚げを作業台でチェックし、良品はコンテナに、不良品は足元の廃棄箱に投入する
- 2.良品コンテナがいっぱいになったら、所定の置き場に運ぶ
- 3.空のコンテナを手元に運ぶ
各工程の業務内容をビデオ解析で作業分析したところ、2と3工程で下記の不要な作業を発見しました。
- 歩行が発生する
- コンテナの高さが異なり、作業効率にばらつきが生じやすい
上記の課題に対して実施したのが、下記の対策です。
- シューターを導入。良品コンテナがいっぱいになったらシューターに投入し流す
- シューター上段に置かれた空コンテナを取って手元に置く
業務改善により、33%の労働生産性向上に成功しています。
小売業の事例
株式会社さえきは、多摩地域を中心に14店舗を展開する総合食品スーパーマーケットです。店舗の1つである「フーズマーケットさえき多摩平の森店」で下記の取り組みを行い、生産効率を向上させています。
1.流れの改善
- バックヤードを整理して大物商品と小物商品に分けることで、売り場を補充する際にあちこち探すムダを減らす
- 売り場にストック棚を追加して小物商品を保管しておき、補充のためにバックヤードに行く手間を省く
- バックヤードのカゴ台車の配置ルールを決め、取り出しやすくする
2.キャベツカットの作業時間短縮
- キャベツを半分にカットして売る場合、まとめてカットしてからラップするのではなく、1個カットするごとにラップすることで仮置きスペースや取り起き動作のムダを減らす
3.標準化
- 広島焼きの調理作業をマニュアル化し、誰が担当しても早くできるようにする
取り組みの結果、流れの改善で5%、キャベツカットの作業時間短縮で22%、標準化で39%の生産性向上に成功しています。
宿泊業の事例
「京の宿 綿善」旅館は、創業187年の老舗旅館です。
改善活動を行うにあたって、まずは幹部のインタビューと現場視察を実施し、下記の2点を改善すべき業務として特定しました。
1.客室係のチェックイン準備
フロント係が接客中は電話がつながらないため、客室係がフロントまで足を運んでチェックアウト部屋を確認している
2.全社応援態勢
従業員ごとに対応できる作業にバラつきがあり、繁忙時間は特定の人に業務負担が集中している
それぞれの問題を、下記のように解決しています。
- 1.ITツール(タブレット端末とLINE)を導入。接客の合間にフロント係が顧客のチェックアウト状況を入力し、客室係が情報共有しやすい環境を整備する
- 2.スキルマップを導入して従業員ごとの保有スキルを確認し、1人で3役こなせるスキルを習得してもらう
改善により、 客室係のチェックイン準備では2%、全社応援態勢では14%の生産性向上に成功しています。
業務効率化についてもっとよく知りたい方はこちらのメディアもおすすめ(Sqripts)
まとめ
生産性とは、資源に対してどれだけ価値のあるものを生み出せたかを示したものです。生産性が向上することで、長時間労働が改善され、従業員の仕事への意欲向上につながります。また、人口減少が進む中でも、安定した利益を生み出せるようになるでしょう。
生産性を高める取り組みをすることは、企業ブランドのイメージ向上にもつながります。企業のブランドイメージを形成する「ブランディング」について知りたい方は、株式会社イマジナの無料ブランディングセミナーにぜひご参加ください。