ゴディバや不二家が行なった「イベント」を活かしたブランド戦略
2019/12/26(最終更新日:2020/09/30)
イベントを活かすブランディングとは?
先日25日はクリスマスだった。街を歩くと、いたるところがイルミネーションで彩られ、サンタクロースのコスチュームをきた飲食店や小売のアルバイトが店に客を呼び込んでいる。
「クリスマスだから」ということで仕事を早く切り上げて帰宅し、子どもやパートナーにプレゼントを贈った人も多いだろう。そしてこの日を過ぎると、今度は仕事納めへと一直線。すぐに正月も控えている。12月は「師匠ほどの偉い人が走り回るほど忙しい」ということで「師走」というらしいが、まさにその通りの目まぐるしさだなと毎年感じている。
クリスマス、正月、バレンタイン、そして最近ではハロウィーンなど、日本には様々なイベントがあるが、これらのイベントをブランディングにつなげ、ブランドイメージを上げることに成功している企業は少なくない。「クリスマスプレゼントといえば……」「バレンタインデーに渡すチョコレートといえば……」と考えたとき、浮かぶブランド名があれば、そのブランドはイベントを利用したブランディングに成功していると言ってもいいかもしれない。
クリスマスというイベントを活かしたブランディング事例
クリスマスを例に考えてみる。そもそも、日本でクリスマスが定着したのは明治〜大正時代にかけてのことだ。
クリスマスケーキを初めて発売したのは、一説によると「不二家」だと言われている。クリスマスケーキといえば、ホール型の甘いショートケーキのイメージがあるが、これも不二家がそのようなケーキを販売したから定着したのだろう。
明治43年、不二家は創業年のクリスマスに、真っ白にコーティングした甘さたっぷりのケーキを作り店頭に並べたそうだ。当時は多くの人が、ケーキそのものを見たことも聞いたこともなかったので売上そのものは芳しくなかった。しかし、地道に販売を続けた結果、少しずつケーキは文化として定着していく。今では不二家のケーキは言うまでもないほどに、記念日やイベントに食べる「特別なケーキの代名詞」として、そのブランドを確かなものにした。
ケーキはクリスマスの食事の代名詞だが、近年ではクリスマスと関係のないブランドもうまくキャンペーンを行うことで、タイミングを合わせ自社のブランディングを行っているケースがある。
例えば、コカ・コーラなどもそのひとつ。コカ・コーラは誰もが知るブランド名だが「スカッとさわやか」というキャッチコピーが表す通り、飲むとすっきりする炭酸飲料ということで、暑い夏場にとくに消費されてきた。その反面、クリスマス時期の冬場は暖かいコーヒーや紅茶といった飲料が好まれるため、コカ・コーラのブランドイメージは相対的に弱かった。
しかし最近では、コカ・コーラは冬のキャンペーンにも力を入れることで通年での消費を実現している。リボンボトルはそのなかでも、とくに成功したキャンペーンだ。
ペットボトルのラベルを特殊な仕様にすることで、手順通りに剥がすと「リボン」が作れるという仕掛け。コカ・コーラの赤は、サンタクロースの赤と近いこともあり、赤色ラベルのリボンキャンペーンは毎年大きな効果を発揮。インスタグラムなどのSNSではリボンボトルの写真が投稿され、「失敗しないリボンの作り方」といった動画がネット上では多数された。購入者が自発的に参加する仕掛けを作り、季節を問わず愛されるブランドを構築することに成功した好例だ。
ゴディバがバレンタインに行なった「共感」のブランディング
また近年では、イベントに合わせて「企業の想い」を発信することで、その価値を高めているケースもある。バレンタインデーに行われたゴディバのキャンペーンは、その代表例だろう。
2018年2月14日、チョコレートブランドのゴディバは、「日本は、義理チョコをやめよう。」という新聞広告を掲載した。
こちらの言葉をキャッチに「バレンタインデーは嫌いだ、という女性がいます。その日が休日だと、内心ホッとするという女性がいます。なぜなら、義理チョコを誰にあげるかを考えたり、準備をしたりするのがあまりにもタイヘンだから、というのです。」と文章が続いていくこの広告。多くの女性から「共感できる」「私も本命以外にあげるのは、正直しんどいと思っていた」と支持され、ゴディバは女性の共感を獲得することに成功した。
興味深いのは、チョコレートブランド自らが義理チョコ文化を否定しつつも、バレンタインそのものは肯定している点。この広告は「バレンタインデーを、好きになってください。」という言葉で終わる。「義理チョコは大変だけど、バレンタインデーは大切にしたい」という、女性の本音に寄り添った広告を、そのままブランドメッセージに仕立て上げたのだ。
これらのように、イベントをチャンスに変えて、ブランドイメージを向上させている企業は多くある。コカ・コーラのように、一見、関係ないと思われてもうまく機会を利用したり、またゴディバのように本音とメッセージを重ね合わせたりすることで、その価値を高めていく。この方法は、様々な点で応用できるのはでないだろうか。
もうすぐ2019年は終わる。2020年は通念のイベントだけでなく、東京オリンピックという大きな催しも控えている。
年末年始のこの機会に、自社にとっては何ができるかを改めて考えてみたい。