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時代とビジネスモデルが変わっても、本当に大切なことは変わらない

2019/10/31(最終更新日:2021/12/20)

ブランディング

D2Cという言葉をご存知だろうか。
最近、様々なメディアでも取り上げられるようになり、目にしたことのある人もいると思う。

D2Cとは、”Direct to Consumer” の略で、消費者に直販する形態のビジネスを指す。
その特徴はその名前の通り、自社で作ったものを卸業者や小売店を通さず、自社で直接売る点だ。

インターネットが発達し、ECが大きな市場を作っている。商品の販売方法はAmazonや楽天といったいわゆるモールにショップを出すか、自社でECサイトを作るか、はたまた他社のECサイトに自社の商品を置いて販売するかなどがある。現在では、初期投資が0と言っていいほど気軽にネットショップを出すことができ、そこで商品を販売できるようになった。もちろんビジネスとして成立するためにはショップを出すだけでなく、そこに顧客を集め、コストを吸収できるだけの売上を上げ続けなければいけないのだが、反対に言えば、一定の売上さえ上げ続けられれば(顧客さえ集め続けられれば)、ネットショップは存続できるということである。

こう言った潮流の最中が後押しし、脚光を浴びているのがD2Cのモデルだと考えられる。もちろん、直販の形態そのものをD2Cというので、デジタル領域だけが問題ではないが、デジタルが直販モデルを確かなものにしているのは言うまでもないだろう。自社ですべてを用意するため、ネットショップを出す苦労だけでなく、そもそもの製品を用意する苦労もあるが、流通チャネルを介さないのでコストを安くできたり、販売主が消費者・ユーザーから直接声を拾えたりするというメリットもあるのは確かなのだ。

実際にどのような企業が現在は注目を集めているのだろうか。今アメリカでD2Cの成功企業だと言われている1つが、Away( https://www.awaytravel.com/ )という会社だ。
Awayはスーツケースの製造・販売企業。価格は高くもなく、安くもなく、手ごろな値段で少し質のよいスーツケースを購入できる。創業者は旅行好きの女性2人ということで、自分たちが求める機能を詰めこんでスーツケースを作ってしまった。永久保証付きで修理対応などもしてくれるという。

またWarby Parker(https://www.warbyparker.com/)というメガネの製造・販売企業も有名になりつつある。オンラインのみで販売しているがその方法は独特である。顧客にメガネのフレームを複数送付し、試着をした上で納得するものがあれば、その後レンズを追加で送るという方法をとっているのだ。メガネは実店舗で試着ができないと販売できないと思われがちだが、
そういった点を独創的な方法でうまくカバーしている。

他にもDOLLAR SHAVE CLUBという髭剃りメーカーや、Casperというマットレスの会社などがこの分野で成長を遂げつつある。これらはすべてアメリカの事例だが、今後日本でもこのようなモデルで成功をする企業は増えていくだろう。これまで直販をしていなかった会社が直販に踏み切る、また業種を限らずベンチャー企業やスタートアップがこのようなビジネスモデルで市場に入り込んでくることも予想ができる。現にアメリカで成功している上記の企業は、直販なので製造コストや保管コストがかからない製品ばかり扱っているかと思えば、そんなことは全くない。どんな企業がどんな方法で、どんな製品を持って参入してくるかわからないのだ。

これは興味深い反面、既存事業者にとっては非常に厄介な問題でもある。もちろんD2Cのモデルで成功するのは決して容易ではないが、スピード感やコストパフォーマンスでは既存のビジネスモデルを上回る可能性も高いため、一気に抜かされてしまう可能性もあるのだ。このような先進的なビジネスモデルに、どのように立ち向かっていけばいいのだろうか。

しかし最新のビジネスモデルだからといっても完全ではない。その理由として、あるメディアではD2Cに対してこう語られている。「D2Cという言葉は新しいが、新しい概念ではない。<顧客との関係、つながり>という意味で捉えれば、本来は規模や新旧関係なくメーカーもリテールもやらなければいけないことだ。たとえば生協などは、手段こそアナログだが、その顧客とのつながり方はD2Cの一形態とみなせる」。
D2Cは、実は新たなビジネスモデルではない。「顧客との関係性」で考えると、その関係性のあり方が変化しただけで、本質的な差別要素や成長していく上での肝の部分、すなわち顧客とのつながりを大切にする、関係性を大切にするという点では、何ら既存のビジネスと変わりないのだ。
これはすなわち、自社の従業員教育に対する考え方や、ブランドをどう形成していくかという点が今後も非常に大事になっていくものだということである。どんなにビジネスモデルが変化しても、賢明に顧客と向き合い、顧客にとって自社商品の本質的価値を理解し、それが最大化するように努め上げ、それをブランドと言われるようになるまで磨き上げること。それが結局のところ、時代が変わっても一番大切なことなのだ。

今回はD2Cという今話題になっている問題を取り上げたが、今後も様々なビジネスモデルが生まれるだろう。しかし、これからも本当に大切なことは変わらない。そこが確かになっていなければ、根なし草のようなビジネスになってしまい、中長期的な成長は難しいものになってしまうだろう。

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