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ブランディングは企業成長につながるのか

2018/09/26(最終更新日:2020/07/28)

ブランディング

今年7月、楽天がロゴを変更した。グローバルにおけるすべてのロゴを一新。各サービスブランドで統一を図っているという。
実は楽天は、2016年にもロゴを変更している。当時はほとんどのロゴの表記を「楽天」から「Rakuten」に変更。「R」をマルで囲んだマークをRakutenの前に付けるデザインを採用したが、今回「R」字は一部をのぞいて廃止。ほとんどのロゴで「Rakuten」表記に、漢字の「一」をモチーフにしたマークを文字下にデザインする形となった(ちなみにこの「一」には、「はじまり」「ひとつになる」「一番・最高」「唯一」という4つの意味を込めたという)。

この発表を耳にした時、「なぜすぐに変更をしたのだろう」と考えたことを覚えている。ロゴの変更にはコストがかかるし、認知には時間がかかることも多くの経営者が知っている。しかしロゴは定着してしまえば認知を広げるコストが格段に下がるため、創業から現在までロゴを変えない企業があるほどだ。そこまではいかなくとも、一度決めたらほとんどの企業がしばらくは変えないのが定石だろう。
しかし楽天は、1年程度でロゴを変更している。ブランド戦略において何か大きな転換があったのだろうか。ロゴを変更することで生まれるメリットがデメリットを上回れば、変更するかいがあったと言えるが、結果が出るのはまだ先の話。今後が気になるところだ。

ブランドに対する想いは、主にネーミングやロゴ、またそれらに付随するキャッチコピーに表れる。「ブランディング」の価値や意味が多くの企業に浸透しつつある今、これらは非常に重要なものだと多くの人が認識しているだろう。しかしなかには、「ブランドを変えたり、ブランディングを実施したりすることで売上は上がるのか」と疑問に思っている人もいるかと思う。誤解を恐れずに言えば、「楽天はロゴを変えたけど、それで株価はあがるの?」という話だ。

結論から言うと、ブランドの変更やブランディングは、正しい方向性で取り組めば効果はでる。もちろん程度の差もあるし、取り組む施策にもよるが、ブランド戦略を変更してブランドの価値が向上し、売上向上など数字の改善につながった例は枚挙にいとまがない。

例えば、ネーミングを変更して売上が爆発的に向上した例に「通勤快足」がある。こちらはビジネス本などでも取り上げられることの多い商品なので、ご存知の方も多いだろう。
本商品は1981年に、レナウンから発売された抗菌・防臭機能に優れた紳士用靴下で、機能性靴下の先駆けであった。発売当初の名称は「フレッシュライフ」。抗菌・防臭のイメージからフレッシュという名称が付けられたものだと思われる。
発売初年度は売上が好調で、3億円程度だったと言われている。しかしそれも束の間。翌年度以降から売上が下がり続けたそうだ。
そこで同社は商品名を変更。中身は全く同じのまま、87年に商品名を「通勤快足」に変えて販売したところ、なんと想定を超えるヒット商品に。同年の売上は13億円になり、89年には45億円になったという。

「フレッシュライフ」からは、爽快、新鮮といった意味は伝わるが、これが靴下のパッケージに印字されていてもブランドイメージは形成されない。
しかし「通勤快足」だとどうだろうか。毎朝の通勤において、足がむれる、汗をかいて匂いが気になるということは誰でも起こりうる。そういった状況がすぐにイメージでき、抗菌・防臭の効果とも関連付けて商品イメージが形成されるのではないだろうか。ネーミングが商品の効能・効果を伝えている良い例と言えるだろう。

またアサヒスーバードライも同様だ。現在ではビールの代名詞とも言えるほど人気のビールだが、発売当初はビールといえば、味が濃くて苦味がある、重いビールが主流であった。その反対にあるような軽くてスッキリとした味わいのビールは「シャバシャバしている」とされ、あまり人気がでなかったそうだ。
しかしアサヒは、そういった「シャバシャバ」感を「ドライ」「スッキリ」、「苦味」にあたる部分を「辛口」と味わいとイメージを変えることで販売に成功した。今ではビールの種類も増え、自身の趣向に合わせて好きなものを選ぶことができるが、そういった多様なビールの先駆けであったとも言えるだろう。
もちろんパッケージやロゴも、これらを表すものとなっている。Asahiの文字は洗練された黒一色のデザイン、また「ドライ」を銀色のパッケージで表している。これらは1987年の販売当初から変わっていない。

ほかにもブランドを変えたり練り直したりすることで売上や価値向上を実現した企業を多くある。しかし重要なのは、単に商品のネーミングやロゴを新しくすればいいということではない。重要なのはその商品の本当の価値を見極め、適正なネーミング・ロゴをつけ、それにともなって社内での働きなども同様に変化させていくことだ。

我々外部の人間からは変化の前後しか見ることができない。しかし、それに伴って会社の内部では非常に大きな変革が行われているはずだ。レナウンの商品名も、外からは「名前を変えて売り上げが伸びた」と見えているだけで、そこに至るまでの協議や、変更後のマーケティング戦略などは、非常に細かく練られていると思われる。楽天も、強い想いがあって短期での変更を実施したのだろう。ロゴやネーミングの変更は、場合によっては消費者や自社の従業員さえも混乱させかねない。そのようなリスクをはねのけてブランディングを成功させるには、当事者たちの意思が大切なのだ。

ブランドの変更は非常に労力が伴うものであるし、実行の判断も、企業の姿勢によって変わってくる。しかし本当に大事なのは、流行りのデザインを取り入れることではなく、その裏にある意思と戦略だ。理念に深みがあるかどうかで、ブランディングの成功は左右されるだろう。自社はどのような戦略をとるか、一考してみるのも良いかもしれない。

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