ブランディング事例-メガネスーパーから見る、ブランドがV字回復を果たすには
2018/01/26(最終更新日:2021/10/26)
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日本ブランドとは
「日本ブランド」という言葉にはどのようなイメージを持っているだろう。「高品質」「安全」「独創的」などだろうか。質の高さ、また細部まで行き届いた配慮は世界でも評価が高い。これらはたくさんの日本企業が時間をかけて築き上げてきたもの。このようなイメージがあるからこそ、日本企業は世界のトップ企業と戦っていくことができる。積み上げてきたブランド価値は紛れも無く資産なのだ。
しかし近年、このようなブランドイメージが失墜するような出来事が相次いでいる。
神戸製鋼の不正事件
例えば神戸製鋼の不正。2017年10月上旬、同社が航空機や自動車メーカーなどに納入しているアルミや銅製品の強度や寸法、伸び率などの検査データが改竄されていたことがわかった。その後も数々の不正が発覚。現在では500社を超えた企業にデータ改竄された製品が納入されていたことが判明している。取引先はトヨタや日産などの日本企業にとどまらず、アメリカのゼネラル・モーターズやフォード・モーター、ボーイングなども含まれているとのことだ。
スバルの不正事件
またほぼ同時期に、自動車メーカーのスバルにおいて不正が発覚したのも記憶に新しいだろう。無資格者が完成品の検査を行なっていたという事実が明るみになり、好業績を記録していた同社に微妙な影が差している。検査は納品の前段階において1台1台手作業で行われるもの。社長の吉永氏は「スバルは安全・安心と楽しさを価値としてやってきた。安全・安心に関わるところに不安を与えることはブランドとしてもっともやってはいけないこと」とメディアに語っている。
日本ブランドとして高く評価されるアニメ
またこのような不正がなくとも、海外企業の提供する商品の「質」が向上しているために、相対的に日本ブランドが弱まっているケースもある。その1つがアニメコンテンツだ。日本アニメが海外で受け入れられていることは多くがご存知だろうが、実は現在、そのピークがすぎたという見方があるのだ。
世界では台湾や中国のアニメの評価が高まりつつある。これらの国は、長きにわたり日本の下請けを行なってきた。それにより技術力が向上。日本と遜色のないものが作れるようになっている。また日本では映画『君の名は』のような、ある年齢層以上に好まれるアニメが多くなっているが、世界の需要の多くはファミリー層。小さな子供が娯楽や教育のために見るものが一般的だ。そのため日本が輸出するアニメはニッチ分野。グローバルでパイが取りにくい状況に陥っている。
自社の不正や他企業の台頭など、ブランドの失墜は多方面から起こりうる。たとえ特定のマーケットでシェアを獲得したとしても、絶えず課題を見つけて策を講じていかなければ、いつか成長やブランドの維持に陰りが見えてきてしまうのだ。
しかし危機を迎えながらもそれらをバネにして成長を重ねた企業も多くある。このような企業は危機を脱した後、社員の意識が上がり、より強靭な組織に生まれ変わっているケースが多く、何かまた危機が起こっても経験を糧に這い上がることができる。
メガネスーパーのブランドの再建
そのような企業のひとつに「メガネスーパー」がある。同社の創業1980年。メガネやコンタクトレンズの小売企業で、2017年10月時点で369店舗を全国に持っている。かつては急成長を実現した同企業だが08年頃より業績が悪化。なんと同年4月期から15年4月期まで最終損益は8期連続で赤字。11年4月期には債務超過に陥ったという。主な理由は格安メガネメーカーの台頭だ。JINSなどの新興ブランドが成長し、同社の業績に影響を及ぼすようになった。赤字転落後は融資を受けて存続していたが上場廃止は目前だと言われていた。
そこで外部から招聘されたのが現社長の星崎尚彦氏である。星崎氏は「V字回復請負人」として様々な企業再生を実現してきた。その実績が評価されて社長に就任。次々に改革を実現していく。
まず徹底したのは現場を見ること。「天領ミーティング」と称して、開店前や閉店後に自身が各店舗に出向き、店舗の問題点に対して議論する場を設けたという。そこで「なぜ赤字なのか」「どうすれば売上があがるか」を現場社員と議論。最初は考えることに慣れていなかった社員が、徐々に自分の意見を発するようになったという。
また星崎氏はそのなかで目指すべきビジョンを見つける。それが「アイケアカンパニー宣言」だ。メガネスーパーが市場と向き合っていくなかで気づいたのは「自分たちの強みはたしかな技術力」であること。ファッション性や安さなどで勝負をしていては新興企業に負けてしまう。そこでメガネスーパーは、創業44年間で累計1,000万人を越える顧客との対応で培った知見をもとに、高品質高付加価値のサービスを提供していこうと決意を新たにした。
低価格化が進む市場と真逆の発想である。星崎氏は「徹底したケアを実現すればお客様に支持される」と信念を持ち事業を進め、結果的に2016年4月期には黒字に転換。他社とは違うブランドを築き上げることに成功した。社員もだんだんと前向きになり、今では見違えるような組織になったという。星崎氏は毎日のように社員と飲みにいき「メガネスーパーを100年続く企業にする」と口グセのように語っているそうだ。
ブランドが失墜しても、そこから回復をすることができる。最近ではマクドナルドも経営者がカサノバ氏に変わったことで業績回復を実現しているが、カサノバ氏も現場主義を徹底。「POWER of ONE」のスローガンを掲げることで、新たな成長曲線を描いている。
危機が訪れた後、重要なのはその後の対応だ。経営陣がその責任を現場になすりつけていたり、反対に凋落の原因を経営陣だけのせいにしていたりすれば、回復からは程遠いだろう。
冒頭にもあったように、現在様々な問題が日本を取り巻いているし、個々の企業も日々多くの問題に直面している。しかし、同じく様々な問題を抱えながらも這い上がってきた企業がたくさんあることも事実なのだ。問題から逃げずに向き合うことで、成長と強靭な組織づくりを実現していきたい。
【参考】
・株式会社メガネスーパー コーポレートサイト
「アイケアカンパニー宣言」
https://www.meganesuper.co.jp/company/about/