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『管理職のチカラ』著者インタビュー

2024/07/03(最終更新日:2024/07/03)

ーーーあらためて、今回『管理職のチカラ』を刊行されたきっかけをお聞かせください。

経営者が本気で「管理職」を育てなければ、企業に未来はない。この事実がますます喫緊の課題となってきた中で、管理職育成や人と向き合うことの重要性を1人でも多くの人に伝えたいという思いがありました。

 

今の日本で、人材問題に頭を悩ませていない経営者はいないと思います。

多くの日本企業が採用に苦戦する中、人口減少が進むことで、ますます人材の獲得競争は激化していく。「国内で人が採れないなら海外から…」と思っても、グローバルな視点で見ると給与水準が低く、「日本語」という習得困難な言語を使う日本は、外国人労働者から見た「働く場」としての魅力に著しく欠けています。

課題となっているのは採用だけではありません。若手の離職や後継者不足など、企業にとっての問題は山積しています。

そしてこれらを解決するために、決して無視できない共通のポイントがあります。

ひとことで言えば、それは「人材投資」です。

これは、人材採用系の会社にお金を払っていい人材を紹介してもらう、といった類いの投資ではなく、「自社の社員の教育と育成にとことん向き合う必要がある」ということです。

ーーー社外への投資ではなく、社内で人を育てていくことが不可欠なのですね。

そうですね。なぜそれが重要なのかという話を、ひとつのデータをもとにお伝えしようと思います。

驚くべきことに、現代の日本の若者の約83%が「出世をして管理職になりたいか」という問いに対して「NO」と回答しています。

この数字は、会社の未来にとっては決して喜ばしいものとは言えないでしょう。

企業の付加価値を高めていくことがマストな時代に、若手がその経営の中核を担う管理職をそもそも「目指したくない」と思う会社に果たして将来はあるのか、という話ですね。

実際に管理職になれるか、なれないかは別として、です。

ーーーなぜ、今の若者はそれほどまでに「管理職」という立場に魅力を感じていないのでしょうか。

ひとことで言うと、彼らにとって管理職は「割に合わない」んですよね。

「管理職になっても仕事が増えて大変になるだけで全然楽しそうじゃないし、上の顔色を窺って忖度ばかりしていて、人間的にも魅力がない。自分はあんなふうにはなりたくない」と思われている。

仕事の負担や責任だけ増えて給料はたいして上がらない、魅力どころかデメリットを体現したような存在なのです。

本来なら企業において憧れの存在であるはずなのに、そんなネガティブなイメージばかり形成されてしまっているのです。

ーーー何がそこまで、管理職のイメージを下げてしまったのでしょうか。

このような状況は、決して管理職自身のせいではありません。多くの日本企業がプレイヤー業務も部下の統率もまとめて管理職任せにして、マネジメントのやり方を伝えることや、彼らを魅力的な存在に育て上げる教育を怠った結果なのです。

 

日頃から接する上司である管理職がこのように認識されていれば、若手社員の頭には当然、「この会社で働き続けたら、自分もやがてこうなるのではないか」という不安がよぎります。

また、社員の間にそうした不安が漂っていれば、彼らは自身の仕事に前向きに、やりがいを持って取り組むことが難しくなります。そのような実情は会社の風土として求職者や学生に伝わり、結果的に採用にも悪影響を及ぼします。

つまり、若手の育成や採用といった企業課題のすべてにおいて「管理職」が鍵になるということです。

 

管理職が社員をマネジメントするスキルを学び、会社の魅力や仕事の楽しさを体現できるような存在となれば、その下層にも人を育てる文化・会社の魅力を伝えていく文化は広がり、根づいていきます。

会社が発展する可能性は、管理職のあり方次第です。彼らの魅力度はそのまま、会社の将来を映す鏡なのです。

ーーーそうした背景があってこその、『管理職のチカラ』というタイトルなのですね。

先ほど、社内で人を育てていくことが大切だとお伝えしましたが、正確には「はじめに管理職の教育・育成が不可欠」なのです。

 

弊社イマジナは、管理職の育成を中心とした組織改革や、企業の付加価値づくりのお手伝いをしていますが、その中でも痛感しているのは、働いている社員とともに付加価値を生み出せる会社でないと今後は厳しいということです。

内部で人が育たない環境であったり、人の力がついていなかったりする会社が、単独で生き残っていくことは難しい時代になっています。

社内で人が育つということが仕組みとして根づいていく必要があります。

ーーー今回の書籍では、特別企画として「生産的な仕組みづくりで、努力が報われる組織に!」ということをメインテーマに、山梨県知事 長崎幸太郎氏との対談も収録されていますよね。

はい。山梨県が推進する「豊かさ共創スリーアップ」という取り組みについて、企業が取り入れるべき数多くの点についてお話を伺い、その展開から人材獲得・人材育成への発想を学んでいく企画となっています。

少子高齢化、人口減少、人手不足、地方の過疎化など、さまざまな課題がある中で山梨県がいま取り組まれていることは「いまやらないと、取り返しがつかなくなる」という、マストな選択だと思います。

課題を先送りせず真正面から向き合い、その先に豊かな共生社会を描く。そんな自治体が今後増えていけば、日本の未来にも光が差すのではないでしょうか。

ーーー「共生」というキーワードは、本書で触れられていたM&Aのお話にもつながる部分ですね。

まさに、これからの時代に求められるM&Aこそ「共生」のためのM&Aですから。

 

近年、さまざまな業種で企業の後継者不足が嘆かれ、10社に6社は後継者が不在といわれている中で、「後継ぎもいないし、社員だけではこの先やっていけないし、いっそ売却してしまおう」と、M&Aが盛んになっています。

そうして市場で売りに出される会社は体裁ばかりが整えられて、社員がきちんとケアされていない場合が多いです。会社を売却して儲けを得よう、さっさと手を離そうと考えている経営者が、人材育成に投資をする可能性は限りなく低いからです。

しかし、そういった単なる売却目的のM&Aは今後の情勢を考えるに、社会にそぐわないものになるのではないでしょうか。本来、M&Aとは「互いに協業したほうが成長できる」から行うものであり、共存・共栄を目指すことに意義があります。そのような本質的なM&Aの実現には、売買に関わる双方の企業が人材育成にきちんと投資し、統合に際する壁を乗り越えることができなければなりません。

そのためにはやはり、対象となる企業に実施する事前調査(デューデリジェンス)の項目に、将来の収益性や法律的な側面だけでなく「人材育成」に関するものも加える必要があります。

 

私は以前、海外でHRデューデリジェンスの仕事をしていたことがあります。

HRデューデリジェンスとは文字通り、人事の面からその企業を調査する作業です。調査の項目は、人材への投資状況、人事制度や評価制度の内容と運用状況など多岐にわたります。

企業を評価する上で、人材の教育・育成にどれだけリソースを割いてきたかという部分を重視するやり方は、欧米をはじめとした海外ではスタンダードですが、日本にはまったく導入されていません。

日本に教育の重要性を根付かせるためにも、まずは企業の価値が「人材の教育・育成にどれだけ注力しているか」によって測られなければなりません。

 

これも本書に込めたかった思いのひとつです。

ーーー最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

時代の変化に翻弄されず、企業が永続的に成長していくためには、経営者が変化に踏み出す勇気を持って、自ら社員と向き合うことを徹底して学ぶしか道はないと思っています。

本書が、会社を導くみなさんの、「人と向き合う経営」の一助となれば幸いです。

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