市場におけるポジショニングの取り方とは トップシェアをとるメソッド
2017/07/05(最終更新日:2021/11/09)
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市場介入の現状と課題
ある市場において事業を成長させる。それは新規、既存問わず非常に難しいものだ。計画を練り、新たな領域での発展を夢見て参入を果たすが、そこには必ずプレイヤーが存在する。ライバルひしめき合うマーケットに割って入るのだから、そこで生き残る難しさは想像に容易い。計画通りにシェアを伸ばすケースは稀ではないだろうか。どうしてもうまくいかないとき、見切りをつけて早々に撤退することもあれば「まだまだ」という気持ちで供給を続けることもある。正しい答えは誰にもわからないが、その判断には責任者の勇気とセンスが問われるものだ。
撤退の要因は様々である。マーケットが想定していたよりも小さかった、市場のニーズに合う商品が開発できなかった等。しかし一番多いのは「既存プレイヤーが作る市場のヒエラルキーを崩すことができなかった(割って入ることができなかった)」ケースではないだろうか。
人は1番目を知っていても2番目を知らないことが多い
マーケティングの世界では「日本で二番目に高い山は誰も知らない」と例えられることがある。「日本で一番高い山は?」と聞かれたら誰もが富士山と答えられるが「二番目に高い山は?」と聞かれて答えられる人は少ないだろう(ちなみに、この正解は「北岳」だとか)。
それと同じように、消費者はその市場で一番のシェアを持つ商品名は答えられるが、二番目のシェアを持つ商品の認知度は急に低くなる。三番目、四番目ともなれば、どれだけの認知度があるのだろう。厳しい戦いを生き抜き、長きに渡り支持を得ている商品やサービスは強い。機能やデザインの如何を問わず、新参は古参よりも認知度や信頼において明らかに不利なのは紛れもない事実なのだ。
こういった状況において、新たに新規事業、もしくは既存の事業のシェアを伸ばし、何十年も愛されるブランドを育てていくにはどうすれば良いのだろう。市場における新参者のふるまいは、象に戦いを挑む蟻のようだと言っても過言ではないかもしれない。大きな資本力、そして知名度を誇る業界の雄と戦うには、傷ついてもひたすら我慢し、奇跡とも言える勝機を待ち続けるしか手立てはないのだろうか。
トップを取る秘訣は「穴を見つけ、埋める」こと
実は、決してそんなことはない。勝ち上がる方法は確かに存在するのだ。そのなかで有力な方法の1つが「自身で市場をつくる」やり方だろう。自分たちで市場をつくり、そこに商品を投入してナンバーワンを取るのだ。それは「穴を見つける」とも言い換えられる。誰もまだ気づいていない穴を見つけ、一気に埋める。そこにはもちろん古参のプレイヤーもライバルもいないので必然的に自分たちが一番になる。それが実現できれば、そもそも勝負する必要さえないのだ。
「何を言っているんだ」と感じられる方もいるかもしれない。しかし実際に今、市場で生き残っているブランド、商品、サービス、そして企業は、各々独自の「穴」を見つけ、そこでシェアを取っているケースが多いのだ。
実際にトップを取った「コカ・コーラ」
身近な例でいうとコカ・コーラが挙げられるだろう。1886年にコカ・コーラはアメリカで発売されたが、これは「コーラ市場」を開拓した世界初の商品だった。
言葉遊びではない。それまで「ソーダ水」と「ソーダ水市場」は存在した。一番売れていたブランドは不明だが、その頃アメリカでは「泡立ちが良いソーダ水」や「歴史あるソーダ水」がしのぎを削っていたのだろう。しかしそこに初めて(正確にはその隣接した市場に)「シロップをソーダ水で割った飲料」が投入される。当時の出稿された新聞広告のキャッチコピーには、認知度がないにも関わらずコカ・コーラと記載したようだが、これが「甘いソーダ水」ならどうだっただろう。今日まで生き残れたかは疑問である。ソーダ水市場の隣に穴を掘り、そこをコカ・コーラと名付け旗を立ててしまったのだ。
発売開始から130年以上経つが、同社はブランド維持に余念がない。コカ・コーラを知らない人はいないと思われるのに、CMで商品名を連呼し、毎年あらたな販促企画を用意している。自らつくった市場での基盤を守り、成長を続けているのだ。
悩みから穴を見つけたおたふくソース
日本でもこのような「穴を見つけ、自ら埋めた」商品は数多く存在する。例えばオタフク社の「お好みソース」もその一例だろう。弊著『ブランド力』でも登場いただいたが、同社がお好みソースを発売したのは1952年。それまで「ウスターソース」市場は存在しており、同社もウスターソースを開発し販売を始めた。しかし後発のため苦戦する。その状況を打開すべく、屋台や飲食店を回り営業を重ねていたそうだ。
その際である。店主から「お好み焼きを焼くときにソースが落ちてすぐに蒸発する」という悩みを聞き「それならば落ちにくいソースを開発しよう」と思い立つ。そして出来上がったのがお好み焼き専用のソースであった。のちに日本中で販売され「お好み焼きといえば、オタフクのお好みソース」というブランドを確立したのは言うまでもない。これは市場における「穴」を発見した好例だろう。ソース市場はすでにある。しかしお好み焼きに特化することで新たな市場をつくり上げた。そして、そこで一番のブランドになったのだ。
これは「既存市場におけるポジショニングを考える」とも言い換えられる。お好みソースがソース市場において「とろみのあるウスターソース」としてポジショニングをしたら、どうなっていただろう。もしかしたら、今ほどの繁栄はなかったかもしれない。
穴を見つける努力の必要性とは
世の中には数え切れないほどの商品やサービスがある。しかし、まだまだいくらでも穴はあると筆者は考えている。市場における穴を見つけ、適切な形で商品やサービスを配置する。そして売上を伸ばすために最善をつくす。この一連の流れはシンプルかつ大切なことだが、忘れられがちだろう。穴を見つける努力そのものには規模も資本も関係がない。成長のチャンスは平等なのだ。今一度、自社の提供している商品やサービスはどこに位置するか、また強みを活かしてまだ埋まっていない穴を埋めることができないか、考えてみてはいかがだろう。永続するブランドの第一歩は、そこから始まるのだから。