仕事でミスをしてしまった時、上司へ報告しなければと思いつつ言い出せず、後から発覚して大目玉を食らった経験はありませんか?
人間は成功例などのポジティブな情報に比べて、失敗など相手にとって不快に感じるネガティブな情報を伝えることを避けたり隠したりする傾向があります。
これを心理学では「MUM(マム)効果」と呼んでおり、「お母さん(Mum)にテストの悪い得点を知られたくないときの心理」から名付けられたと言われています(諸説あり)。
ネガティブな情報を知らせた人に非がなくても、情報の受け手はその人にマイナス評価をしてしまうという別の性質(認知バイアス)も人間にはあるため、不都合な情報はますます表に出にくくなってしまうのです。
一方でMUM効果による情報の隠ぺいは、受け手の側にも影響を及ぼすことがあります。相手のことや対象について、知らなければ知らないほど悪い方向に考えてしまうのです。
管理職の皆様は、部下からの報告がなくて不安や心配に駆られた経験をお持ちの方も少なくないでしょう。
MUM効果が発生する要因は状況によって様々考えられます。
ネガティブなことを伝えた結果、非難や否定を受けることを恐れる自己防衛反応ということも考えられますし、相手が傷つくことを恐れてあえて言わないということもあるでしょう。
そもそもその出来事が重大だと思っていないという、基準の不一致もよくある話です。
企業の不祥事のニュースを見ていても、MUM効果によって発生したであろう事例は、古今東西枚挙に暇がありませんし、なくなる気配もありません。
MUM効果に対する絶対的な打ち手である「銀の弾丸」は、残念ながらないようです。
悪い知らせこそが企業の財産であることを周知し、知らせてくれたことに即座に感謝することを地道に続けることによってようやく、MUM効果に打ち克つ風土ができてきます。経営者の粘り強い指導が求められるのではないでしょうか。
ちなみに、MUM効果は恋愛のテクニックでも活用されることが多く、マメな男がモテるのは、常に連絡を取り続けることでMUM効果を発生させず相手を安心させることができるからだそうです。
このことを逆手に取って、あえてしばらく連絡を取らずに相手を焦らすことでより一層相手の注意や気持ちを惹きつけるというテクニックもあるそうですが、実施は自己責任でお願いいたします。
また、仕事においてはそんな焦らしは何の効果ももたらしませんので、くれぐれもご注意ください。