アメリカのリスク管理会社、ギャラガー社が2024年に発表した調査結果では、組織内のコミュニケーションにおける管理職への依存度は84%であるということです。
組織の成果にコミットすると共に、メンバーのエンゲージメントやモチベーションを高めることが求められる管理職としてみれば、せめて組織内のコミュニケーションについてはもっとメンバーが自主的に動いてほしい、と日々感じているのではないでしょうか。
しかし現実は上記のように残酷です。
今回はそんな組織内のコミュニケーションのうち、社会人の基本とも言われる「報告」に関して取り上げてみましょう。
報告とは「意思決定を後押しするもの」であり、この定義はハーバード、スタンフォード、カリフォルニアなどの有名大学の研究でも共通する認識です。
企業が求められるスピードは社会が求めるスピード、もっと言えば顧客が求めるスピード、そして競合よりも早いスピードということが言えますが、この企業における「スピード」を決定するものが意思決定の早さです。
意思決定は当てずっぽうで行うわけにはいかず、何らかの判断材料を必要とします。
その判断材料の大部分を占めるのが部下からの報告なのです。
役職が上がれば上がるほど、部下に求める報告のスピードと質も上がります。
乏しい判断材料で意思決定を行えば、管理職は「壊れた信号機」となり、組織の暴走を止めることができません(あるいはずっと赤信号で止め続けるしかありません)。
しかし、こういったことは管理職経験がある程度あれば、一度は部下に伝えているのではないでしょうか。部下だって頭ではなんとなく分かっているはずです。
それでも尚、世界中の管理職から「部下の報告」に対する不満が消えることはありません。
ここで一度、自分自身に矢印を向けてみる必要があります。
「おまえ(部下)が悪い」とする他責志向は楽で簡単ですが、それで事態が改善することは絶対にありません。
求職者が殺到していくらでも取り替えが効く状況であれば話は別ですが、それは夢物語でしょう。
部下が「分かっちゃいるけど報告しない」状態になるのは、報告することのメリットよりデメリットが大きいと感じているからではないでしょうか。
報告することが(それが例え失敗の報告であっても)、将来的には組織と自分自身のメリットとなると分かっていても、その前に責められるのではないか、評価を下げられるのではないか、恥ずかしいという目先の不利益を回避しようとするのが人間の心理です。(このことは行動経済学におけるプロスペクト理論で説明できます)
管理職はこういった経済学や心理学、脳科学、神経科学といった分野についての学びを深めることで、組織と部下、そして管理職自身を、共通の目的に向かって導いていく必要があります。
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