表題のようなことで頭を悩ませたご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本日は、就労時間に関する若手の意識を、社会背景から紐解いていきたいと思います。連休明け、気持ちを切り替える朝の時間のお供に、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。
働き方改革がもたらした影響
2019年から本格始動した働き方改革。その影響もあり、日本企業における社員の労働時間は年々減少しています。近年ではAIも急激に発達しており、それによってさまざまな業務が効率化されていることも背景の一つとして考えられるでしょう。
下記は、年代別の就業時間(男性)の推移です。どの年代に関しても、約10年前と比較して就業時間が減少していることがわかります。注目したいのは若手世代。グラフの中で一番若手の25~34歳の層が、もっとも大幅に勤務時間を減らしていることがわかります。これは、本当に業務が効率化されたことだけによる結果でしょうか。
「ワークライフバランス」の誤謬
働き方改革より前の2007年ごろから、「ワークライフバランス」という言葉もよく言われるようになりました。内閣府も「仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる」といった定義を公表しています。このワークライフバランスが本来意味するところは、「まずはより短時間で仕事ができるようになるための能力を身に着け、短縮された時間を趣味や家庭、自己学習に使うように」ということです。一方、今の日本社会では「仕事と生活は切り離してバランスをとる」といった考え方が主流であり、「生活のためにも、働きすぎるのは良くない」といった風潮さえみられます。
ワークライフバランスにしても、働き方改革にしても、「働く時間は抑えた方がいい」という表面的な部分だけが先行し、本来働く上で必要な「目の前の仕事や自己のスキルアップに向き合う」ということがないがしろにされているのが、日本の現状といえるのではないでしょうか。
若手世代の考え方
「働く時間は短いほどよい」という価値観は、上記のような風潮がある中で生まれ育ってきた若手世代において、特に顕著です。社会常識の変化によって、上司・部下間の意識のギャップが拡大しているともいえるでしょう。
下記は、若手社員の労働時間に対する意識を探った、リクルートによる調査結果の一部です。「労働時間はもっと短い方が望ましい」と考える社員に「労働時間を短くできない理由」を聞いた項目から、彼らの考え方が見えてきます。上位に挙がっているのは、「仕事量が多い」「他者の都合に左右される」「締め切りやノルマが厳しい」といった理由。反対に、「効率的に働けていない」といった、自分の働く能力にフォーカスした理由を挙げる人はそれほど多くない結果となりました。つまり、働く時間が短縮されない要因は会社や仕事のありかたといった自分ではどうにもできない部分にある、と考えている傾向が見て取れるのです。
しかし本来は、決まった仕事量や締め切りがある中でどうスケジューリングするか、どう効率を上げていくか、その試行錯誤の中でどんどんとスピードが上がって時間短縮されていくものではないでしょうか。目の前の仕事に向き合わずしてただ働く時間だけを短くしていては、アウトプットのクオリティも自分の能力も高まりません。そういった本質の部分が、今の社会では見落とされやすくなってしまっているのです。
この現状を変えるのは管理職
ここまで見てきたように、今の若手の中には「とにかく働く時間を短くすることが正しいこと」という考え方が少なからず存在します。しかし、はじめは時間がかかったとしても目の前の業務に全力で取り組み、その中で武器を身に着けてスキルアップしなければ、本人もやりがいを得られず、組織としても成長しません。大変なのは管理職です。若手がスキルを高められなければ、いつまでも任せられる仕事量を増やすことができず、管理職は疲弊していってしまうでしょう。
しかしその管理職こそが、企業の現状を変える鍵を握っています。社会の流れによって本質が見えづらくなっている中で、本当に若手本人たちのためになることとは何なのか。それを管理職が自ら伝えていく必要があります。しかし、時代とともに必要なマネジメントのしかたも変わってきています。これまでは「右向け右」で指示に従うのが当たり前だったとしても、今の時代、人を動かすためには「なぜそれをやる必要があるのか」「それをやることで本人にとってどのようなメリットがあるのか」を伝えた上で、共感・納得してもらうことが不可欠なのです。