ロゴの変更が発信する、ブランドの「変化」
2015/09/07(最終更新日:2021/12/20)
9月に入ってグーグルのロゴが急に変更になったことに気が付いたかたも多かったのではないだろうか。私自身も結構驚き、これはグーグル始まって以来初めてのロゴ変更か!と思ったら実はそうではなかった。
調べてみると最新の変更を含め、グーグルのロゴは下記の通り創業以来数回変わっている。
上記のロゴ変遷を見ると、確かに「変化している」のだが、すべてがグーグルのロゴ以外の何物でもなく、今回の最新のロゴもまさにグーグルでしかない、としか表現のしようがないほど、最新のロゴを含めどれを見てもグーグルのブランドイメージには全く「揺らぎ」が無い。
また、今回のロゴ変更にあたり、大きめのPC画面だけでなく、昨今のユーザーがスマホやタブレットなどの小さい画面でもロゴがよりハッキリと見えるようにした、という変更に際するバックグラウンドのストーリーも非常に明解だ。つまり、グーグルは、「時代に合わせて変化すべきところはちゃんと変化させる+グーグルの根本理念は変わらない」というメッセージを発信するブランディングを、ロゴの変更を的確に利用して実行してきたのである。
だからこそ、今回のグーグルのロゴ変更を通じて、グーグルが「ものすごく大きく変わった、あるいは変わろうとしている」と感じた人は非常に少ないはずだ。
ここで、ロゴ変更の最近の別の例を見てみよう。JR東日本が運営する駅ナカコンビニの「Newdays」は現在、ロゴの変更と、それに伴う店舗サインの架け替えを順次進めている。
ここでご覧いただけるとおり、グーグルと全く違って、Newdaysはロゴの字体から色から、何から何までが「全く違うもの」に変えてしまったのだ。多くの人がこのロゴ変更を見て、「Newdaysはブランド理念もカルチャーも何もかも変えて行きますよ」というブランドメッセ―ジを受け取るであろう。同時に、ロゴのカラーを、JR東日本とは全く関係がないそれまでの赤と黄色から、JR東日本のコーポレートカラーである緑基調に変更することで、「変化していくのと同時に原点回帰もしていく」というストーリーをもこのロゴ変更は発信しているのである。
上記2例のとおり、同じ「ロゴの変更」であっても、ブランドとして発信する「変化」のメッセージのレベルは全く違う。そもそもロゴは企業のブランドカルチャーを発信する重要な「アイデンティティツール」である。ロゴを変更するのであれば、何となく新しくしたいというだけでむやみにビジュアル先行の変更をするのではなく、まず企業として発信したい「変化」は何なのかを、変化のレベルとストーリーを明確にしたうえで、その「変化を発信するためのロゴ変更」でなければ意味がない。そうでなければ、いくら見た目が良く、カッコいいロゴに変更したとしても、ブランド発信のアイデンティティツールとしては全く使い物にならくなってしまう可能性がある。
企業理念やカルチャーの「変化」のレベルとストーリーをブランディングメッセージとして社内外に的確に発信するために、グーグルやNewdaysのようにロゴの変更を有効に活用したい。
筆者プロフィール
野田大介
コンサルタント
■略歴
神奈川県生まれ 神奈川県立七里ガ浜高等学校
立教大学 理学部 数学科卒。
The University of Alabama MBA 経営大学院修了
14年半の米国在住後帰国。MBA修了後、米国にて建設会社でプロジェクトマネジャー、化粧品会社にて米国支社長、帰国後マーケティングリサーチ会社勤務。