企業統治の必要性・理念浸透による企業統治へ
2015/08/17(最終更新日:2020/09/30)
2015年6月から上場企業に対して「コーポレートガバナンス・コード」の策定が上場企業には課せられている。だが、現実問題それにはどのような意味があるのだろうか?その必要性に関して今回のレポートでは考えていきたい。
<今月のテーマ> 企業統治:コーポレートガバナンス・コードについて
コーポレートガバナンス・コードは、2014年12月に原案が公表された。この原案では、コーポレートガバナンスとは、「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会の立場を踏まえた上で、果断な意思決定を行うための仕組み」と定義している。そのコーポレートガバナンスを実施する上での規範をまとめている規則の原案となっているのが、今回のコード案である。基本原則は、①株主の権利・平等性の確保,②株主以外のステークホルダーとの適切な協働,③適切な情報開示と透明性の確保,④取締役会等の責務,⑤株主との対話の五つがあげられている。実際にどういったことを目指すかというと、中長期的な企業価値を向上することを目的としている。対象は東証株式市場、上場企業であり上述の原則を守るために、社外取締役を二名以上設置するといったことが上場企業に求められるようになった。このコード自体に法的拘束力は存在しないが、「comply or explain」の精神の下、原則を実施するか実施しなければその理由が説明できなければならない。つまりは、社外に対してより積極的に情報を提示すること、第三者の視点で会社の経営を管理していく、中長期的な目標をもち経営を行っていくことが求められるようになった。
なぜ必要なのか?
それでは、なぜコーポレートガバナンスが必要なのだろうか?中長期的な企業価値を高めるとは一体どういうことなのだろうか?海外では株主が実質的な会社の所有者であるのに対して、日本では株主は安定株主 であり社長中心の体制になっている実態がある。この形態は株主の利益を最優先する株式会社本来の原則に則ってはいないが会社のそのものの成長には最適なものとなっている。会社を維持・繁栄させ承継させることが目的となっている。だが、日本の企業でも外国の株主が多くなり株主の利益を作り出すような株主重視の経営が叫ばれるようになり、会社の情報を外部(特に株主)に公開していく必要性が生まれてきた。情報開示の際に株主が特に知りたいのは、株主の投資がリスクに見合ったリターンを生み出すかである。そのためには、過去の情報データである貸借対照表や損益計算書等の事業運営の報告に加えて将来に向けた経営方針やリスク情報を公開する事を求められている。このように株主に対して適切な利益配分を考える事を目的とした仕組み作りが、当初のコーポレートガバナンスである。そこから発展していき株主への利益だけに限らず、そのほかのステークホルダー及び社会への利益を還元出来る様な中長期の目標を開示していくことが求められるようになっていった。特に今後重要視されると思われるのが、非財務面情報 でありその情報から長期の会社の姿を示していくことで、株主の評価を得るようになっていく。
企業理念による企業統治へ
コーポレートガバナンスは、適切な情報開示を行っていくことで、会社の価値を高めていくことであり会社が社会への貢献を果たしていくことを目的としている。この仕組みを採用するならば、その仕組みを形骸化してはいけない事は当然であるだろう。それに加えて、会社への評価・信頼を高めていくためにも積極的に企業理念を開示していくべきではないだろうか?株主や投資家の評価を得る為に企業理念に基づいた、経営方針を開示し会社の有り方を外部に発信する。加えて、内部に理念を浸透させていくことで会社の中から価値を高めブランド化を果たしていく。それによって企業統治を果たしていくことはその企業独自のブランドを作り出すことにつながるのではないだろうか?仕組みを作り終わりということではなく、真に意味のある企業の統治を果たしていく必要があるのではないだろうか?
編集長プロフィール
武正泰史(たけまさやすふみ) 法政大学人間環境学部二年生
2015年1月からイマジナにインターンとして活動中。主に資料作成等を担当している。編集長同様、アジア最貧国の一つである東ティモールの支援を行う学生NGO HaLuzで活動を行っており教育支援事業や交流事業などを行っている。