ADBとAIIBに見るアジア地域の発展とは<Hot HR ニュース5月号>
2015/05/25(最終更新日:2021/12/13)
ADBとAIIBに見るアジア地域の発展とは
今ニュースでも取り上げられている、中国主導のアジアインフラ投資銀行。今回、既存のアジア開発投資銀行との違いを考えながらこれについて考えてみたいと思う。
▼アメリカ主導のアジア開発投資銀行
1966年に設立したアジア開発投資銀行(以下ADB:Asian Development Bank)は、アジア太平洋諸国の発展途上国の貧困軽減と生活改善を目的に設立された。現在67の加盟国・地域からなり、その中で日本は最大の出資国の一つとなっており、歴代の総裁は日本人が務めている。
世界の貧困層の3分の2を抱えているアジア地域において①包括的な経済成長,②環境に調和した持続可能な成長,③地域統合をめざし活動を行っている。具体的な活動として、道路の新規建設・教育研修者の増加・電化世帯数の増加等々の活動を行っている。
資本金の出資及び議決権において日本とアメリカがともに最大となっているので、実質的に二ヶ国中心の金融機関となっている。
▼中国アジアインフラ投資銀行
それに対してADBでは賄いきれないインフラ整備のための資金運用組織として、中国が提唱してきたのがアジアインフラ投資銀行(以下AIIB:The Asian Infrastructure Investment Bank)である。
創設メンバーは中国をはじめとして、東南アジアの国々のほかイギリス・ドイツ・フランスなどのヨーロッパ先進諸国の参加もあり57ヵ国となっている。
参加を見送ったのは日本・アメリカ・カナダ、参加申請が拒絶された国は北朝鮮・台湾・香港となっている。
今後ネパールの地震の復興に資金を充てていくとの方針を打ち出している。
▼アジア地域の途上国発展のために
二つの金融機関の業務内容は重なる部分が多く存在する。アジアには世界の途上国のほとんどが集中している。そういった中でAIIBがADBの補完的役割を果たしていくという事は非常に有意なことである。だがAIIBには、はっきりとしたガバナンスが示されていないという点や資金の運営の不透明化等で批判や懸念も多く存在する。一方で、イギリスをはじめとするヨーロッパ先進国の多くがAIIBに参加した事もあり、ADBもその運営・業務内容に関してある程度の見直しを迫られている。
双方の金融機関での融資が今後行われていく中で、今後のアジア地域の発展に何が必要になってくるだろうか。共にアジア地域の成長を目的としているが主な方法としてはインフラ開発が主となっている。途上国において生活環境の整備は急務な課題であり、それらがADBとAIIBで補完しながら行われていく事は上述のように重要なものとなってくる。現地の生活環境を整備していくと同時に現地の人材育成を行っていけるような環境を作っていく事も重要になってくるのではないかと思う。ADB・AIIB双方の金融機関が途上国発展のためが相互に協力していく中で、途上国の将来を担う事が出来る人材が輩出するような環境作りを目指していくが必要になっていくのではないか。
編集長プロフィール
武正泰史(たけまさやすふみ) 法政大学人間環境学部二年生
2015年1月からイマジナにインターンとして活動中。主に資料作成等を担当している。編集長同様、アジア最貧国の一つである東ティモールの支援を行う学生NGO HaLuzで活動を行っており教育支援事業や交流事業などを行っている。