ブランドづくりに「広告」は必須か

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ブランドづくりに「広告」は必須か



 「競馬」の人気が徐々に高まっている。ちょうど今月25日には高松宮記念というレースが開催されるが、競馬に関して「競馬場には行ったことがなくとも、テレビなどで見たことがある」という方は多いのではないだろうか。認知度の高さだけで言えば、野球やサッカーなどと同様のメジャー競技であると言えるだろう。
国内のレースを取り仕切っているJRA(日本中央競馬会)によると、2017年の全国の馬券売上高は約2兆7500億円で、7年連続で増加しているという。ちなみにこの数字は世界最大。2位のイギリスは約1兆1900億円ということから、その市場の大きさがわかるだろう。意外に感じられるかもしれないが、海外の競馬ファンにとって日本は「競馬大国」という印象もあるようだ。

競馬といえば、50代や60代以上の男性が楽しむ競技という印象があるが、最近では20代や30代などの若年層からの人気も徐々に上昇しているという。事実、JRAは若年層の取り込みを積極的に行なっており、テレビCMなどの各種広告では若手俳優や女優を起用。また女性ファンを拡大すべく「UMAJO(ウマジョ)」という競馬ファンサイトもオープンした。それに加えて、競馬場内に「UMAJO SPOT(女性限定の無料リラックススペース)」を設置。「enherb(エンハーブ)」というハーブ専門店とコラボし、場内で無料ハーブティーの提供なども行なっているとのことだ。
これらの施策には「競馬場は老若男女が楽しめるレジャーのひとつ」というメッセージが込められている。JRAは様々な取り組みを通じて、その間口を広げて行きたいと考えているのだろう。

競馬はこのように、ブランドイメージが変わりつつある。前述した広告などの様々な施策が功を奏し、若年層にも競馬が浸透しつつあるようだ。しかしこれらの施策は、これだけの馬券売り上げを誇る同社だからできること。多額の予算を計上し、緻密な広告・販促戦略を行い、露出を増やせることのできる企業はそう多くはないだろう。しかし自社のブランドを形作り、発信することはすべての企業に必要なこと。広告に大きな予算をかけること以外に、ブランディングを行う方法はないのだろうか。

 一般的にブランディングを行うには広告は必須だと思われているが、実際には広告予算をかけず、独自のブランドをつくっている企業はままある。例えば、スターバックスはその代表格だろう。同社はテレビCMなどの広告をまったく行なっていないが、その知名度は非常に高く、またファンも多い。
 スターバックスは「居心地の良い空間の提供」をメッセージとして発信しているのは有名だ。ゆったりとくつろげるソファや、洗練された内装を通じて、家でも職場でもない「サードプレイス」の提供を実現している。またドリンクのカスタマイズができる点もファンを掴む仕掛けのひとつだ。まるで自宅にいるような居心地の良さを提供しながらも、顧客を飽きさせない仕掛けも同時に提供している。

 そして何よりも同社のブランドに影響を与えているのは「スタッフの質」だろう。スターバックスはスタッフのことを「パートナー」と呼び、かけがえのない存在として育成。アルバイトでもしっかりと研修を行い、経営理念の理解や価値観の理解を促している。そして「スターバックスのブランド」を十分に理解したスタッフが、お客様に対する接客、店舗で臨機応変なコミュニケーションを行うことで、外部に「スターバックスとはこういう会社なんだ」という、ブランドにつながるメッセージを発信し続けている。

 また高級志向を貫くブランドもテレビCMなどに予算をかけないことが多い。ルイ・ヴィトンや高級車メーカであるフェラーリ、ポルシェなどのCMを見たことがあるだろうか。広告費はまったくの0ではないが、露出をコントロールすることで、低予算ながらも効果的な広告出稿を行い、唯一無二の世界観を形成しているのだ。

 「これらのブランドはもともと有名じゃないか。今さら広告する必要なんてないだろう」と、思われる方もいるかもしれない。では有名になる前には、地道にCMを放映していたかといえばそうではないだろう。現在も過去も行なっていないのだ。

 テレビCMなどのマス広告は不特定多数に対する「リーチ」に強いのは誰もが知るところ。広く、たくさんの人に商品を知ってもらいたいという時にその強みを活かすことができると言われている。しかし、だからと言ってCMをたくさん流してしまえばブランドの持つ「高級感」や「限定感」が損なわれてしまう可能性も存在する。これはブランドが持つ「リッチネス」という特性を作るのに、必ずしもマス広告が必要ではないということの証左になるだろう。その代わり、商品の持つ世界観や、店舗での接客を非常に大切にしているのが強いブランドの特徴。店舗に来店する方や、自分たちの商品を好んで使ってくれる人々に対しては手厚いコミュニケーションをとることで、「ブランドプロミス」と呼ばれる深い信頼関係を育んでいるのだ。

 スターバックスや高級ブランドの事例を通じて「ブランドをつくるのに、必ずしもテレビCMなどのマス広告や巨大な広告予算は必要でない」ことを見てきた。もちろんこれらの手法がブランド形成に役立っている場合もあるが、必要条件ではないことがわかるだろう。
それ以上に大切なのは、企業・商品のブランドイメージの統一や、顧客との接点におけるコミュニケーションなど「質」の部分を上げていくことだ。これらの要素を自分たちの掲げたビジョンにどれだけ近づけていくかが大切になってくる。
 自社はどのようなブランドをつくっていきたいだろうか。しっかりと考えて、適切な行動を積み重ねていきたい。

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