ブランドと信頼を左右する、危機管理対応とコンプライアンス

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ブランドと信頼を左右する、危機管理対応とコンプライアンス



 組織や企業の不祥事とそれに関連する謝罪会見が相次いでいる。近頃、もっとも大きな話題を生んだのはアメリカンフットボールの大学リーグで起きた出来事だろう。試合の最中、ある選手が相手選手に対して悪質な反則行為を行う。それは一瞬のことであったがマスコミでも大きく報道され、SNSを中心としてネット上でも映像が拡散された。
この反響を受け、反則行為を行なった選手、また指導者を含む大学側が、それぞれ記者会見を実施。どちらも同じ出来事に関する会見ではあったが、視聴者が受け取る印象には大きな隔たりがあった。

 先に行われた選手側の会見に関しては、好意的な意見がよく聞かれた。メディアを通じて発信される識者や専門家のコメント、ならびに一部の視聴者の意見の多くは、同選手に同情を寄せている。20歳の学生がたったひとりで多くの記者の前に立ち、正確に事情を説明、ならびに心からの謝罪会見を行ったことが心象良く映ったのだろう。多くのメディアが、これからの選手活動をバックアップするような論調の意見を多く発信していた。

 しかしその後の大学側の記者会見に関しては、非常に心象が悪く映ったようだ。大学側の会見では監督・コーチの会見、そして大学学長の会見の計2回が行われている。
 監督・コーチの会見では選手側の内容と相違が見られ、記者に矛盾点を指摘されてしまった。それに対して責任逃れと取られても仕方がないような発言を続け、挙げ句の果てには司会進行役である大学広報担当者がメディア側に悪態をつき、記者と衝突してしまうという珍事も起きた。この衝突は事件とは直接関連性はないが、これにより、大学側のイメージが悪化したことは避けようのない事実だろう。
 続く学長の会見では、引き続き選手側の発言との矛盾点、また前述の衝突などに関して指摘が多く上がる。しかし、メディア側の納得が得られる回答は得られなかったようだ。数々の不審点を残しながら各会見は終了し、報道は組織内部だけではなく、体育会系の部活動そのものへの批判にまで議論は広がっている。
 
 大学スポーツで起きた悪質行為が、これほどまでに加熱して報道されたことは過去なかったであろう。部活動のあり方を熟考すると同時に、記者会見など報道に対する向き合い方に関しても考えさせられる事象であった。とくに監督・コーチの会見は、メディアとの衝突という話題性もあり、たった数時間の会見にも関わらず長年積み上げられてきた日大ブランドを傷つけたとの批判も残った。これが万が一、関係者、メディア、視聴者を納得させるような内容の会見であれば印象はどう変わっただろう。前述の選手の会見と合わせ、誠実な対応、的確な事後処理に関して評価が上がり、かえって日大のブランドは良い方向に向かった可能性もあるのではないだろうか。

 謝罪会見といえば悪いものばかりが記憶に残っているが、実際には会見をきっかけとして、ブランドに対する信頼をより強固にしたケースも存在する(しかし、こういった謝罪会見は記憶に残りにくい)。良い謝罪会見、正しいと思われる謝罪会見とは、一体どういうものなのだろうか。

 何よりも大切なのは、素早く、誠実で、事実を元に話をするということだ。当たり前のように聞こえるかもしれないが、これを実行できていないケースは多い。
 素早さとは対応のスピード。問題の発生から会見を実施するまでの期間が長くなってしまうと、隠蔽などの疑惑が深まるばかりか、メディアが憶測で記事を書いてしまうこともある。そのような事態になった後に会見をしても、聞き手は様々な推測を勝手にしてしまうだろう。

 次の誠実さ、そして事実を元に話をするというのは、情報を隠さない、嘘をつかないという姿勢である。問題の本質はどこにあるのか、誰に謝罪をすべきなのか、きちんと事実関係を整理しながら伝える。メディアからの質問に対しても懇切丁寧に答える。最近、facebook創業者のマークザッカーバーグ氏が米議会で公聴会を行ったが、誠実さ、事実に基づいて答えるという点に関してはとても良い対応であった。このような一見して当たり前だと思われる対応・姿勢が重要なのだ。

 しかしそれよりも大切なのは、そもそも不測の事態を招かないように社内でも注意喚起を徹底することだ。それは日常業務から「不正をしない文化」を組織的に育むということ。「少しくらいくらいいいだろう」という気の緩みを起こさない。コンプライアンスを遵守し社内のルールづくりと浸透を徹底する。万が一、規則違反をしている従業員を見つけたらお互いに注意をし合う、といった行動が、従業員間で日常的に行われていることが理想の姿だろう。組織統制の真ん中にコンプライアンスを据え置くことで、倫理観、そして企業の品位が向上し、「あの会社は誠実だね」「信頼できるね」といったブランドが育まれていく。

 日常的にそのような企業文化を育てていくこと。しかし万が一、何か起こったときには、その組織、企業の代表としての適切な対応を取ること。常時からの心構えと有事の際の正しい判断が、明日の会社を創っていく。
 昨今では様々な業界で不祥事が露わになり、謝罪会見が行われている。これを機に、自社の文化や体制を見直してみてはいかがだろうか。
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