あらためて、ブランディングの価値とは。

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あらためて、ブランディングの価値とは。



 本記事では「ブランディング」をテーマに、様々な角度から数々の企業事例を扱ってきた。ブランディングは非常に奥が深く、その影響も非常に広範囲にわたる。以前までの記事では、実例を通じてその考え方や価値に触れてきたが、「ブランディングって、結局なんだろう?」と疑問に思っている方も、多くいるのではないだろうか。そこで今回は、あらためてブランディングとはなにか、そしてその価値をなにかを考えることで、企業経営におけるブランディングの役割について考えていきたい。
 
「ブランディング」はその名の通り、「ブランド」から派生した言葉である。ではそもそも、「ブランド」とはなんだろうか。
この言葉は元をたどれば、牧場の所有者が自分の家畜などに焼印を施し、他者の家畜と区別するために行われた行為を表す「brander」というノルウェー語に由来していると言われる。すなわち、「この焼印が入っている牛は佐藤さんのもの」「この焼印は鈴木さんのもの」というふうに、「識別するための印」がブランドの起源なのだ。
反対に言えば、印がなければ識別ができないため、ブランドとは言えない。それは現在のビジネスの現場でも同様で、商品には社名や商品名、ロゴマークが記載され、他社との違いを明示している(意図的に除いているものもあるが、それもまた識別を目的としてのことだろう)。
 

 この「焼印」行為をそのまま商品識別に使った食品会社が日本にはある。株式会社紀文食品だ。同社は1938年創業。水産練り製品を主体として成長を重ねてきた。
 まだ商品を包装するパッケージがなかった頃、売り場で自社商品が他企業の商品と同様に扱われてしまうと、消費者には違いがわからなかった。そこで質に対して絶対の自信を持っていた同社は、1951年から「紀文」の焼印を押した商品の販売をスタート。ブランドの良さを知ってほしいと考え、名前を記すようにしたのだ。今でもスーパーマーケットなどで、ちくわなどの練り物に「紀文」と印が押されたものを、よく見かけるだろう。


 これで同業他社と違いが識別されるようになったわけだが、反対に味の良さを理解されなかったり、商品に何か問題があったりすれば、ブランドを傷つけてしまうことになる。紀文食品はコーポレートサイトで「『紀文』の焼印は、”私たちが品質を保証します。”という責任の所在を明らかにしたものなのです」と表明しているが、ブランドを背負うとは違いを生み出すと同時に、相応の責任を背負うことにつながるのだ。

 そしてこの「商品の独自性=ブランド」を構成する要素を育て、維持・管理していく行為と手法が、一般的には「ブランディング」と呼ばれている。
 このブランディングという言葉。今となっては多くの人が知っているが、その概念が日本に広まったのはつい最近のことだ。言葉が広まる前の1980年代から1990年代後半にかけては、企業ブランドはコーポレート・アイデンティティ(CI)、商品ブランドはブランド・アイデンティティー(BI)といった名称で呼ばれることが一般的であった。
とは言っても、CI、BIが現在のブランディングと同義であるかと言えば、そうではない。CI、BIはブランディングの一部であるロゴマーク制作といった「ビジュアルデザイン」に留まることが多かったようだ。


現在はそこから派生して、その企業や商品のイメージ形成につながるすべての事柄をブランディングの領域として扱うようになった。具体的にはネーミングやロゴ・意匠、またPRや広告といった様々なマーケティング手法全般、そして社員の育成方針や理念策定、そして経営の意思決定までもが当てはまる。
また最近では、そのブランドを通じてどんな体験ができるかといった「顧客体験」も構成要素の一つとして認知されるようになった。五感への訴求や知識の伝搬などを総動員して、「顧客にとっての価値」を最大限高めていくこと。これが現代のブランディングの、究極的な目的であると言えるだろう。

顧客にとっての価値を高めていく作業は、根気のいるものである。常に期待や信頼に応えるように行動し、ユーザーをはじめとしたステークホルダーの共感や支持を獲得し、拡大していけるよう注意を払っていなければならない。
ニュースではたまに企業の不祥事などが取り沙汰されることがあるが、このような出来事はブランドを傷つけてしまう代表的な例である。ブランディングで培ったせっかくの信頼が、一瞬で台無しにされてしまう。ブランドは、信頼そのものなのだ。

 ブランディングに成功した企業は、長期的に成長していく傾向にある。ハーレーダビッドソンやコカ・コーラは米国を代表するブランドだが、ブランドを支える多くのファンがこれまでに育ち、商品を愛し続けているのはご存知の通りだろう。
特にハーレーダビッドソンは熱狂的なファンが多いことで有名だ。同ブランドのファンは、ハーレーのロゴをタトゥーとして肌に刻むものもいるが、他にそのような形で愛されているブランドが世の中にいくつあるだろうか。企業としては、非常に嬉しい現象だ。

駆け足でブランド、そしてブランディングに関して見てきた。ブランドが確立すれば経営に追い風となるが、それに至るまでの道程、すなわちブランディングには時間を要することも確かだ。
 しかし得られるリターンを考えれば、取り組む価値は大きいと言える。意思決定の指針として、そして顧客との長期的な信頼関係の構築を目指して、ブランディングに取り組んでみてはいかがだろうか。


【参考サイト】
株式会社紀文食品 コーポレートサイト
https://www.kibun.co.jp/


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