「クリエイティブの質」が、より重要な時代になっている

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「クリエイティブの質」が、より重要な時代になっている



 今年8月、インターネット広告事業を中心として様々な事業を展開するサイバーエージェントが、「仲畑貴志氏とともに、コピーライター30人の採用プロジェクトを開始する」という趣旨のプレスリリースを発表した。
 仲畑貴志氏といえば広告業界に関わる人であれば、誰もが知っているコピーライターである。「目のつけどころが、シャープでしょ。」「アデランスは誰でしょう?」などのコピーで知られ、コピーライターブームの立役者としても有名。キャリアは長く現在でも活動を続けており、「コピーライターの神様」と言われるほどの人物だ。
 その仲畑氏が、ベンチャー企業として成長を重ねるサイバーエージェントとともに共同プロジェクトを開始するということで、このプレスリリースは話題になった。公式サイトにはプロジェクトがスタートした背景として、「消費者のネットメディアへの接点が加速する中、企業の広告活動においてインターネットマーケティングは不可欠なものとなっております。従来テレビCMなどのマス広告を中心に広告出稿を行ってきたブランド広告企業のインターネット広告活用が進み、マス広告において重要視されてきたコピーライティング力が、インターネット広告にも求められています。」と、説明がされている。

 様々な意見があり、人によってその印象は違うと思うが、かつてインターネット広告は「質より量」という風潮があったように思う。ページ閲覧数をいかに多くするか。どれだけ長くサイト内に滞在をしてもらうか。そのために導線となるような関連ページを増やしたり、また検索において上位の検索結果を狙ったり、広告出稿量を多くしたり……という施策が重視されていた。
 もちろんそれに応じてキャッチコピーに該当するページのタイトルや見出し、またそれに付随する文章の数も増えていくのだが、業界全体の流れとして、テキストの中身の重要性は後回しにされる傾向にあったように思う(もちろん企業によってスタンスが違うため、一概には言えない)。

 その背景には、Webページにはデザイン性やイラスト、動画の活用など、テキスト以外の訴求要素が多くあること。Webテキストには「SEO対策(検索エンジン最適化)」という特有の対策が必要であること。またWebページはCMや印刷物と比べて修正が容易なため、公開後の修正も可能だという特性なども影響しているのだろう。CMやポスターのように、「入念に考えた、一度発信したら容易に変更できない、一行で視聴者(閲覧者)をキャッチする」特性のコピーだけが、求められているわけではなかった。

 そのような時代の流れに変化が訪れている。インターネット広告大手のサイバーエージェントが、CMやポスターといったメディアで活躍したコピーライターとともにWebコンテンツのクリエイティブの強化をしていくことを明示したのは、その変化を示唆しているとも言えるだろう。もちろん前述のような従来の施策も重要である。しかし誰もがメディアを持ち、ライターやコピーライターとして情報を発信できる時代においては、クリエイティブの質そのものが大きな差別化要素になっていくのだ。

 このような潮流において、クリエイターや企業にはどんなことが求められているのか。考え方はその時々の戦略によるが、「とにかく量を多く出せばいい」という時代ではなくなっていることは確かだろう。「質より量」だけを目指してしまうと、自社のブランドが損なわれたり、Webコンテンツに誤情報を載せてしまったりして、価値を毀損する大きな問題にまで発展することもあり得る。インターネットマーケティングがテレビなどの広告と同等に重要な時代において、一つひとつの手法の価値をきちんと見極め、総合的な見地からクリエイティブをコントロールしていく姿勢が重要なのではないか。
 クリエイティブの質を高めると言っても、必ずしも名作テレビCM や有名企業のようなキャッチコピーが必要だというわけでもない。全体構造の把握と適切なディレクション、受け手との適切なコミュニケーションが大切なのだ。


 そのような時代において、自社が社会に対して、また社内のスタッフに対して、どうあるべきかを示す「ブランディング」の価値は、日に日に増してきている。商品の特性やサービスの機能で差別化が難しく、消費者は口コミや企業の印象をもとに購買活動をする時代である。そのようななかで、そもそもの「何をいうか」「何を発信するのか」といった、企業やサービスの根幹にある姿勢が、より重要となっているのだ。
 これはまた販売促進など営業面においてだけでなく、採用面でも大切なことだろう。なぜその事業をやるのか、その事業をやることでどんなことを成し遂げたいのかといった企業の想いを求職者は見ている。想いを明確化し、コンテンツの特性を見極めて、適切な言葉で発信していくのが大切なのだ。

 クリエイティブの重要性を駆け足で追ってきた。繰り返しになるが、インターネットを含めたあらゆるメディアにおいて、「コンテンツの量」ではなく、「コンテンツの質」が大切な時代が、すぐそこに迫っているように思う。そのとき自社は、何を発信していくのか。そこに一貫したメッセージやアイデンティティはあるのか。一度、振り返ってみてはどうだろうか。そのメッセージを見て、消費者や求職者は動く。価値は機能でなく、心に宿る時代が訪れているのかもしれない。
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