眠る資産をブランドに変える

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眠る資産をブランドに変える



ABCクッキング 先日、ある新聞でこんな見出しのニュースが紙面を飾った。「地方の食、ブランド化で観光振興 JTBやドコモなど協業」。JTB、ABCクッキングスタジオ、そしてNTTドコモの3社は今月の16日、訪日外国人客向けに特産品を使った料理体験ツアーを始めると発表した。
 JTBが自治体と協議しながら、訪日客のニーズや料理にアレンジしやすい特産品を選び、産地の観光ツアーを企画。ABCクッキングスタジオはその特産品のオリジナルレシピを学べる料理教室を国内にある127のスタジオで実施し、訪日客向けに英語で解説をする。そして、ドコモが運営する訪日観光サイトなどで情報発信し、料理づくりを学びたい、体験したい希望者を募り、前述のツアーを実施するという3社の強みを生かした取り組みだ。すでに奈良県の黒豆やイチゴ、メロンなどをテーマにしたツアーが企画されている。事業を通じて、日本の食に興味を持つ訪日客に「地方の食」を知ってもらい、地方のブランド化や観光振興につなげていく狙いがある。


北海道コンサドーレ またこのような見出しのニュースも目を引いた。「札幌を格好良く!パリコレ並行でブランド化大改革」。サッカーのクラブチームである北海道コンサドーレ札幌は今季からクリエーティブディレクターとして、パリコレでの自身のブランドショーを行うファッションデザイナー相沢陽介氏を招致したという。
チームのオフィシャルグッズをより洗練されたデザインへと変えてくこと。これがひとつの目的であるが、相沢氏自身はおしゃれさやカッコよさだけで終わらない「その先」を見据えている。「コンサドーレというブランドを立ち上げる感覚でやっている。デザインするだけで終わらず、コンサドーレという会社が発売しているブランドを買う、という形にしたい。ビジネスモデルになりたい」と、相沢氏は語る。チーム名をブランドにまで高めることによってビジネスモデルそのものを変え、消費者に与える影響やその存在感を大きく変化させていきたいという思いがあるのだ。相沢氏はパリコレの準備と並行して、コンサドーレ札幌の名刺を手に、グッズを生産する工場など取引先をひとりで訪問。生産から販売までの体制も見直し、新たなブランドを作り上げようとしている。
 すでに「あるもの」を見直し、ブランドに変えていく。このような動きが日本各地で起こっている。これは非常に素晴らしいことであり、歓迎することである。しかし、必ずしもすべての取り組みが成功するわけではない。ブランドを成長させ、愛されるものにするために必要な要素は、一体なんなのだろうか。

「世界最高のスポーツチームブランド」と呼ばれるクラブチームがある。イングランドを代表する世界的な名門クラブ「マンチェスター・ユナイテッド」だ。
 1992年発足の英プレミアリーグでは他の強豪クラブを抑え、断トツの優勝経験を持つ。日本でもその知名度は高く、サッカーファンでなくとも知っている人は多いだろう。
 クラブの発表によると、同チームのファンは世界で6億5000万人いると言われ、そのうち実に49%をアジアのファンである。スポンサー契約も年々伸びており、さらに広告収入の双璧とも言えるサプライヤー契約については、2015年からアディダスと年間約137億円、10年間での契約を新たに締結。これはスポーツクラブ史上最高額の大型契約と言われた。

 このように年々成長を遂げるマンチェスター・ユナイテッドというブランドが与える影響力は非常に大きなものがあるが、常に安泰の道を歩んでいたわけではない。かつては健全経営で知られていた同チームだが、実はクラブ買収の影響や成績不振による収入減により、2005年から多額の負債に苦しみ、近年は借金返済に追われていたのだ。財務面で言えば、これまでの15年程度で大きく回復を果たしたと言えるだろう。


マンチェスタートラクター マンチェスター・ユナイテッドの強さの根源は、きめ細かなスポンサー企業へのサポートにある。もちろんそれは本国のみでなく、日本企業が対象でも同様だ。
2016年、タイである商品が発売された。農業機械大手ヤンマーのトラクターで同チームのロゴをあしらった限定モデル。1台数百万円なのに3千台分が完売。本拠地オールドトラフォードの芝の管理にも採用され、PRにも大きく協力した。

 また、日本とミャンマー地域での限定スポンサーとなっているのが、健康食品販売などを手がける広島県にある万田発酵という会社。経済発展の遅れるミャンマー南部でサッカー教室を開催。子供300人に靴を与え、マンチェスター・ユナイテッドのコーチが指導するイベントを行った。このような地道な貢献が同国政府に認められ、同社の農業資材は国内唯一の推奨商品に指定されたというから、その影響力は大きい。
 マンチェスター・ユナイテッドは、クラブ職員を相手の社内会議にまで送り込み、スポンサーの権利を活用したイベントなどを提案しているという。一部のロゴの使用権を与えるだけでなく、ブランドの影響度を冷静に分析し、「こんなことをやりませんか」と、企画を持ち込む。チームの強さや認知度の高さに胡坐をかくのではなく、スポンサーのためになる活動を積極的に考え実行するのが、その強さの根源なのだ。

 ブランドは一朝一夕には完成しない。たとえ知名度があったとしても、それが必ずしも愛されるブランドだというわけではないだろう。ブランドの価値を上げるのは、創意工夫であり、日々の地道な努力である。「ブランドを育てる」ことの大切さ、また姿勢を、改めて見直していきたい。
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