imajina

時代に合わせて変化していく、実店舗の役割

2020/05/27(最終更新日:2020/09/30)

ブランディング

今月5月25日、全国で緊急事態宣言が解除された。宣言が執行されている2ヶ月弱の間、朝の満員電車はなくなり、仕事は在宅、MTGはオンラインで……と急速にビジネス環境が変化したが、宣言が解除されたのちは、経済活動はどのように変わっていくのだろうか。

アフターコロナ/ウィズコロナの時代は、実店舗の役割と価値が変化する

6月から出社を促したり、これまで通り在宅ワークを推進したり、企業の対応は様々だ。政府は大規模な金融緩和政策を取り、日本国内での経済活動への影響を柔和なものに抑えようと努めているが、その影響は計り知れない。
緊急事態宣言が終わったから、これまで通りのビジネスや生活に戻っていくだろう……と考えるのは、少々短絡的かもしれない。今、流行が収まりかけているのは、日本に住む人々に集団免疫ができたからではなく、人と人との接触がなくなったからだ。一方で欧米を含む一部の国では、症例は増加し続けている。6月以降、海外からウイルスが持ち込まれて第2波が流行しても、まったく不思議ではないのだ。
政府はこのような事態を見据え、根本的な解決策が見つかるまで(もしくは見つかった後も)は、「新しい生活様式」として日々の生活において気を付けるべき点を列挙している。これまで言われてきたような手洗いうがいの徹底、マスクの着用、ソーシャルディスタンスの意識、三密を避ける行動等が項目として並ぶが、これらは日々の経済活動にも影響を及ぼしそうだ。特にECサイトを通じたオンラインでの販売が伸び、実店舗の在り方が変化していくと考えられる。実店舗の役割、そして価値は、どのように変化していくのだろうか。

「ブランドを感じる場所」として機能する実店舗

新しい生活様式と時代の流れにより、購買行動のほぼ全てがオンラインに置き換わっていくかといえば、そうではない。実はここ数年、世界全体の潮流として実店舗を持つことの大切さや優位性が見直されているのだ。
2016年のデータになるが、ピュー研究所 (Pew Research Center)というアメリカのシンクタンクによると、調査対象の8割の人々が、「パソコンやスマートフォンなど、あらゆるデジタル機器を駆使してオンラインショッピングを活用している」と答えている。しかしその一方で、回答者の6割以上が「実店舗での買い物を好む」と答えているのだ。
「オンラインショッピングをするのに、実店舗での買い物が好きだ」という結果は矛盾しているようだが、決してそうではない。購買行動に極端な思想を持つ人は稀である。2つの価値観が1人の人間のなかに併存しているだけと言えそうだ。
かつて、EC関連業界が急速に成長したとき、実店舗はなくなっていくと言われた。もちろん効率だけを考えれば、オンラインの方が圧倒的に便利である。
しかし、実店舗には実店舗でしかできない体験がある。調査の結果は、実際にブランドを見て、触れて、購入するという体験そのものを消費者は欲していると読み取れないだろうか。生活様式が変化しテクノロジーが進化していくなかで、実店舗は「ブランドを感じる場所」として機能していく可能性が高いと考えられるのだ。

カルチュア・コンビニエンス・クラブが挑む、新たな店舗づくり

この変化の兆候を読み、以前から実践している企業がある。TSUTAYA及び蔦屋書店などの企画・FC展開事業を推進しているカルチュア・コンビニエンス・クラブだ。同社は人々のライフスタイルにフォーカスし、それに合わせた商品を取り揃えるとともに、自社で商品企画も行っている。
追求するのは、実店舗でしか体験できないこと。CDやDVDのレンタルショップのイメージが強い同社だが、会社を設立した当初から増田宗昭社長兼CEOは「ライフスタイルの提案」を目指しており、メディアではこのように話している。「創業時に掲げたビジョンは、『世界一の企画会社』になること。私たちは、新しいライフスタイルの提案を行う企画会社です。TSUTAYAは本を売る、また映画・音楽のレンタルをする場所ではなく、新しい文化に手軽に触れられる、ライフスタイルの発信拠点なのです」。
同社は先日26日にも「アートがある生活の提案」をする店舗として、京都の伝統文化や現代美術に関連した商品を扱うミュージアムショップ「ART LAB KYOTO」を京都市内にオープンした。新型コロナウイルスによる影響がまだ不透明ななかで実店舗をオープンするのは、自分たちが提供する価値に大きな自信を持っているからだろう。
実店舗に行ったことのある方ならわかると思うが、カルチュア・コンビニエンス・クラブは、商品を売ることよりもブランドそのものを感じてもらうことに重きを置いている。もしその場で商品を購入しなかったとしても、訪れた人が楽しかったと感じられれば再訪が望めるし、帰宅したあとにオンラインで購入してくれるかもしれない。SNSでポジティブな投稿をしてくれる可能性も高い。取引をしているメーカーも、売上以上の価値を感じる仕組みが構築されているのだ。

まとめ

実店舗の役割が変わっていくというのは決して目新しい視点ではないが、その変化の潮流は今後より強くなっていくだろう。企業は「ブランドを育み、感じてもらう場所」として新たな可能性を模索するべきだし、消費者も実店舗に対して、そうなることを望んでいるふうに思う。自社だからこその新しい在り方を、模索していきたい。

 メルマガ会員募集  メルマガ会員募集

無料ブランディングセミナー

いま最も多くの経営者に読まれている本を10分で解決! いま最も多くの経営者に読まれている本を10分で解決!

閉じる