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ブランディングの成功と失敗13事例集(BtoB・地域活性・採用の戦略)

2019/12/26(最終更新日:2021/11/26)

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「オーディオといえば○○」「ランニングシューズなら●●」といったように、ある商品を購入する際に決まったブランドを選ぶ、という方は多いのではないでしょうか。

 

このようにユーザーに確固たる信頼感を持たせることをブランディングと呼びますが、ブランディングの対象となるのは「モノ」に限ったことではありません。企業イメージそのものや、地域、大学などさまざまなものが“ブランド”として確立されることで、これまでになかった価値が創造され、生まれ変わることができるのです。

 

商品以外のものも含め、さまざまなブランディング事例を具体的に見ていきましょう。

ブランディングの成功事例を紹介

ブランディングを成功させる術を学ぶには、すでにある成功事例を参考にするのが早道です。以下の6カテゴリーの成功事例をご紹介します。

 

  • 企業ブランディングの事例
  • 企業のリブランディングの事例
  • BtoBブランディングの事例
  • 採用ブランディングの事例
  • 地域ブランディングの事例
  • 大学ブランディングの事例

企業ブランディングの事例

企業そのもののブランド価値を高め、「この企業の商品ならぜひ買いたい」とユーザーに思わせることが、企業ブランディングの目的です。

 

実際に企業ブランディングを行った事例として、「トヨタ自動車」と「タニタ」をご紹介します。

 

トヨタ自動車株式会社の企業ブランディング

トヨタ自動車は、高品質・高性能という組織価値観を体現することで、自動車トップ企業としての現在の地位を作りあげました。

なかでも有名なのは、関連会社等のサプライヤーへ目を向けた「カイゼン」を行ったことでしょう。トヨタ自動車は、サプライヤーの生産性を落とさずに人員を減らす手法や、在庫リスクを下げる手法(ジャストインタイム方式)を広める活動を実施し、ステークホルダーから多くの共感を得ました。

この独自の改善方法は「KAIZEN」として諸外国にも広まり、自動車産業のみならず、すべての分野でのビジネスモデルの在り方そのものまでを変えるほどの影響力を発揮しました。

高い品質の製品やサービスを輩出し続けることを組織のステートメントとし、“世界のトヨタ”として、ゆるぎないブランド力を確立しています。

株式会社タニタの企業ブランディング

タニタは、体温計や体重計などの健康器具を製造・販売する有力メーカーですが、企業ブランディングが成功する前は、これといって突出したイメージのない企業でした。

同社は企業ブランディングを行うにあたって、「人々の健康づくりに貢献する」という、社会的意義を前面に押し出したコンセプトを掲げました。働く人の健康に気を使った高栄養・低カロリーな食事を提供する社員食堂が話題となり、社食メニューを再現できるレシピ本も販売。2012年には一般の人も利用できる「タニタ食堂」を東京・丸の内に出店し、以後全国に店舗を拡大中です。

タニタの製品やレシピを利用することで健康になれることを実感したユーザーは、企業が提供する社会的意義に共感し、“タニタブランド”の確立を後押ししました。

企業リブランディングの事例

リブランディングとは文字通り「ブランディングのやり直し」という意味で、長い歴史を持つ企業などが古いイメージを脱却し、新しいブランド力を身に付ける手法のことを指しています。

 

実際に企業のリブランディングを行った事例として、「ヤンマー」と「マツダ」をご紹介します。

 

ヤンマー株式会社の企業リブランディング

トラクターやコンバインなどの農機具メーカーとして発展してきたヤンマー。長期にわたって「ヤン坊マー坊天気予報」などの提供をしていたこともあり、社名の知名度は抜群にありました。

しかし逆に広く知られすぎていたため、農機具以外にも建設機械、さらにはエネルギーへと事業領域を広げているにもかかわらず、「農業の会社」「古臭い」というイメージから脱却できずにおり、リブランディングを決意しました。

現状とユーザーイメージとのミスマッチを解消するため、ヤンマーはクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を招へいし、リブランディングプロジェクトを立ち上げました。「エルメスのような会社を目指す」をリブラディングのテーマに掲げ、プロダクトデザイナーにはフェラーリやマセラッティなどのデザインを手掛けた奥山清行氏を、さらに農作業ウエアのデザインには、イッセイミヤケに関わった滝沢直己氏を、それぞれ起用。

社内のイメージは刷新され、リブランディングに最も成功した事例といえるでしょう。

マツダ株式会社の企業リブランディング

マツダは、トヨタ、日産、ホンダに次ぐ国内4位の自動車メーカーですが、かつては販売シェアを伸ばすため新車の販売価格を大幅に値引きし、結果として企業ブランドの価値そのものを低下させてしまったことがありました。

その反省からマツダは「ナンバーワンではなく、オンリーワンになる」道を選び、“Be a driver.”を新たな企業理念として提示。「既存のルールや常識に縛られず、人生のドライバーを応援する」とした感性重視のメッセージは幅広いユーザーの共感を得て、他社との差別化を図ることができ、リブランディングに成功しました。

BtoBブランディングの事例

一般消費者向けではなく、対企業に向けた製品やサービスを提供しているBtoB企業。BtoC企業とは違い、その効果が新規受注数や営業効率に直結するため、BtoBブランディングは企業の生命線にも値する大切な施策です。

 

実際にBtoBブランディングを行った企業の事例として、「IBM」と「ドルビーラボラトリーズ」を紹介します。

 

IBMのBtoBブランディング

民間法人や公的機関を対象とする、コンピュータ関連製品およびサービスを提供しているIBMBtoBの取り引きは「その企業の製品が、どんなソリューションを提供してくれるのか」を主眼に行われるため、ソリューションの明確化がBtoBブランディングにおいて、もっとも重要になってきます。

2017年時点で、IBMは「コグニティブ(cognitive)コンピューティング」というソリューションブランディングを展開しています。コグニティブとは、日本語では「人間がある物事を捉えた上で、それが何であるかを理解するプロセス」を意味します。つまり「コグニティブコンピューティング」とは、システムを「情報処理の機械」ではなく「人間のように自ら理解し学習するシステム」として捉えよう、といった意味が込められおり、IBMが提供する人工知能Watsonとも密接に紐づいているのです。

ソリューションが明確になることで、IBMに対する期待感情が高まり、さらにWatsonが売れていくという構図を創り上げています。

ドルビーラボラトリーズのBtoBブランディング

ドルビーラボラトリーズは、映画、テレビ、記録メディアその他の音響技術に関わる研究・開発を行う、米国の企業です。同社は開発した技術のライセンスを他社に提供するライセンスビジネスを採用しており、1968年時点では、音楽録音時のノイズを低減する「ノイズリダクション技術」を主に提供していました。

ドルビーラボラトリーズは、技術特許のライセンス、商標、ノウハウに関する権利、回路販売数に基づいたロイヤリティプログラムを打ち出し、自社のノイズリダクション技術をブランド化することに成功。ライセンスを提供した企業にはドルビーのロゴマーク挿入を義務付けることで、多額の広告費を使わずにロゴマークを広く知らしめることができ、今ではゲームソフトやテレビ、映画作品などの幅広い分野で「高音質性を保証するシンボル」として認知されています。

採用ブランディングの事例

採用ブランディングとは、企業が採用活動を行う際、経営理念やビジョン、社風や入社するメリットなどを発信し、求職者に「あの企業には魅力がある」と思わせるブランド力を築いていく活動のことです。

 

実際に採用ブランディングを行った企業の事例として、「日本マクドナルド」と「三幸製菓」を紹介します。

 

日本マクドナルドの採用ブランデイング

マクドナルドは、世界中に店舗を持つ一大ハンバーガーチェーン店です。

日本マクドナルドは2014年から2015年にかけて不祥事が続き、業績も落ち込みました。一時は米本社による株式売却も検討されたほどでしたが、サラ・カサノバ社長を中心に「ビジネスリカバリープラン」と銘打った復活プログラムを展開。全国店舗の訪問や顧客からのヒアリングによって問題点を洗い出し、「原点回帰」をキーワードに積極的なアプローチを行って、見事に復活を遂げました。

採用面においても、全国で「クルー体験会」を行ってアルバイトの定着率を高めたり、中途採用のページに特徴的な社員インタビューを掲載したりと工夫を凝らし、イメージの回復を図っています。このインタビューは具体的には、「ハンバーガー大学(独自の教育施設)」「ダイバーシティ&インクルージョン」「PDS(人事評価制度)」「食の安全」など、20項目以上のキーワードとともに、それらに関連する社員インタビューを掲載。採用者の企業理解を深めるとともに、キャリアアップへの期待感やグローバル大企業ならではの安心感を抱かせる内容になっています。

三幸製菓の採用ブランデイング

新潟の老舗菓子メーカーである三幸製菓。「雪の宿」や「ぱりんこ」などのヒット商品も多い会社ですが、採用に関してはなかなか応募者が増えず、担当者の悩みの種でした。新潟という立地上、どうしても東京などの都会の企業と比べ応募者の絶対数が少ないことは否めません。

そこで同社は採用ブランディングの手法を取り入れ、「カフェテリア採用」という新しい採用方法を始めました。これは応募者が自分の得意な選考方法を選ぶというとてもユニークなもので、「おせんべいが好き」という情熱を訴える「おせんべい採用」、新潟で働きたいという「ニイガタ採用」、応募者の好奇心を合宿で確かめる「未知への探求採用」などの多様な採用方法を用意したのです。

こうした取り組みにより、最終的には今まで300名だった応募者数を、13,000名にまで増やすことに成功しました。

地域ブランディングの事例

地域ブランディングとは、その地域や自治体しか持ちえない独自性を製品やサービスの形で発信し、ブランドとして認知してもらう活動を指します。

 

実際に地域ブランディングを行った事例として、「瀬戸内海の直島」と「島根県海士町」を紹介します。

 

瀬戸内海「直島」の地域ブランディング

瀬戸内海に浮かぶ直島は、「島×生活×アート」をキーワードに、地域ブランディングに成功した香川県の離島です。

島内にある空き家になった古民家を改修し、アーティストが作品として仕上げる「家プロジェクト」により、昔からの島の暮らしをアートに昇華させることに成功。1992年には約3万人しかいなかった観光客を、20年後には23倍にあたる約66万人にまで増加させるという結果を残しています。観光客の中には欧米、中国などからの旅行者も多く、これも他県とは異なる特徴です。

直島の地域ブランディングが成功したのは、ブランディングの目的を「観光客を多く呼ぶこと」としなかったからだとされています。直島の行政は、常に島民の満足度に主眼をおいており、定期的な調査によって都度課題を見つけ、解決策の提案を実施しています。「住んでいる人々が誰かを招きたくなるような自慢の島になれば、自然と多くの人が島を訪れる」というスローガン通り、皆に愛される人気の観光地になっています。

島根県海士町の地域ブランディング

島根県隠岐ノ島諸島に位置する海士町は、地方特有の過疎化に悩まされ2002年時の借金総額は105億円と、破綻寸前に追い込まれていました。しかし地域ブランディングの成功により、現在ではIターン定着率48%、廃校寸前であった島の高校の受験倍率を2.4倍に引き上げることができました。

ブランディングに用いられたキャッチコピーは、「ないものはない」。これには、地域同士の繋がりを大切にし、無駄なものを求めずにシンプルながら満ち足りた暮らしをしようという願いが込められています。ブランディングの核となるブランド・アイデンティティを、島に生きる人々のフィロソフィーとして採用したことで、住民にも好意的に受け止められたのでしょう。

島が抱える課題をチャンスに変え、地域ブランドとして一貫したイメージで発信し、認知させることに成功しています。

大学ブランディングの事例

大学ブランディングとは、その大学ならではの特色を際立たせ、学生に“選んでもらえる”ブランド力を持った大学になるための施策のことです。国際化、研究力、地域貢献など、その大学の強みとなる取り組みを明確に打ち出せるかが重要な要素となります。

 

実際に大学ブランディングを行った事例として、「京都産業大学」と「武蔵野大学」をご紹介します。

 

京都産業大学の大学ブランディング

2015年に創立50周年を迎えた京都産業大学は、「むすんで、うみだす。」というスローガンを掲げ、新たな価値を創出する人材を育成すべく、さまざまな施策を打っています。2017年に新設された現代社会学部がその好例で、単なる研究に留まらず、実際に社会を変えていく次世代のリーダーを排出することを目的としています。

上昇志向の強い現代の高校生に選ばれる大学になるべく、ブランディングを大胆に押し進めた同大学。志望校決定期の高校生の心理の変化に合わせて、面白さから徐々にアカデミックな内容へシフトするよう、3つのフェーズごとに異なるクリエイティブを用意しました。

現代社会学部への興味を喚起する「期待感醸成期」は、特設Webサイトやマス広告を中心に視覚的にわかりやすく表現。高度な学びを訴求する「認知・浸透期」は、教員の研究内容紹介などのコンテンツを中心に、パンフレットや教員紹介動画を充実させて志願度を高めています。「出願期」には、ダイレクトメールや認可後パンフレットで、特徴的なカリキュラムや4年間のシラバスなどを伝えることにより出願促進につなげています。

武蔵野大学の大学ブランディング

2003年に前身の武蔵野女子大学から武蔵野大学へと改称し、2004年から男女共学の総合大学になった武蔵野大学は、他大学に先駆けてブランド戦略を導入しています。

男女共学化の後も学部・学科の改組、キャンパスの移転などの進化を続け、2024年の創立100周年に向けてブランディングを再構築。ブランドコンセプトは「世界の幸せをカタチにする。」。大学が主語になりがちなところをあえて目線を外し、建学の精神をアレンジしたコンセプトとなりました。「常に発展・革新し続ける」という思いをブランドビジョンに込め、教育プログラムの改善・運用まで一気通貫させることを目的としています。

ブランディングプロジェクトは約1年にわたって運用され、教職員20人からなるブランド委員会メンバーがワークショップを重ねました。

ブランディングの失敗事例を紹介

ブランディングを成功させるために、逆にブランディングに失敗してしまった事例もご紹介します。参考にしてみてください。

 

 

GAPのロゴ変更

アメリカ発ファストファッションの代表格であるGAPは、日本でもショッピングモールと中心に数多くの店舗を展開し、ネイビーに白抜き文字のロゴマークも広く認知されています。

 

そのGAPは2010年に一度だけロゴマークを変更したことがあり、企業ブランディングの失敗例として今でも語り継がれています。

 

丸みを帯びた黒文字の新ロゴマークは、それまで長年親しんできたロゴとはあまりにも異なり、長年GAPのファンだったユーザーにはまったく受け入れられませんでした。Facebook掲示板等の公式SNSには反対意見が殺到し、これを受けたGAP上層部は6日間という短期間で新しいロゴを撤回。「OK、皆さんが新しいGAPロゴを好まないことがはっきり聞こえました」というクールなコメントとともに、今まで通りのロゴが早々に復活したことで、この騒動は終息しました。

 

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まとめ

さまざまなブランディングの事例をご紹介しましたが、いずれのケースでも成功のカギは業界における自分の強みを知り、その強みをアピールする手法を間違わないことです。

 

ブランディングの対象となるユーザーが、何を求めているのかを見誤らないよう、成功・失敗事例を参考に、しっかりとしたブランド戦略を練ってみてください。

 

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