ブランドづくりは未来への投資

Branding Caseブランディング事例

ブランド力を高める39の「セオリー」

ブランドづくりは未来への投資

ブランド力を高める39の「セオリー」

私たちの会社イマジナは、ここ10年で2600社以上の企業ブランディングのお手伝いをしてきました。企業活動そのものがブランド戦略であるという観点から、社内の制度設計から社外へのPRへとトータルかつシームレスな仕組みを提供してきました。この記事では、これまで私たちが取り組んできた「ブランドのチカラ」「人のチカラ」「伝えるチカラ」のエッセンスをまとめました。読者のブランド戦略理解の一助となれば幸いです。

「ブランド力」とは?

 企業を取り巻く環境は、現在進行形で大きく変化しています。いまや商品・サービス・技術は世界ですぐにキャッチアップされます。特許を申請している間にそれを超える技術が出てくる時代です。だからこそ圧倒的な差別化を実現して、消費者の熱狂を生み出すものはバックストーリーを伴ったブランド育成しかありません。ブランド構築・ブランディングへの投資意識を高めることが何より重要なのです。
 
 例えば、スターバックスは、創業当初は普通にコーヒーを提供するコーヒーショップでしたが、スターバックスが提供する価値を「居心地の良い時間と空間」と定義しなおしました。その価値を提供するために、ロゴを何度も変え、ブランディングを変え、ブランドコンセプトをスタッフに浸透させ、働き方を変えていくことで、大きく成長を遂げました。 そこにいたるまで、ブランディングに徹底して投資を続けてきたのです。

 世界で勝ち残るブランドは、自分たちが提供する価値の本質を知り、たとえ無形な資産であっても、自分たちの積極的な投資でその価値を上げられると確信をしているのです。スターバックスのようにグローバルブランドとして世界で勝つためには、投資への「覚悟」と「無形への価値をどれだけ上げていくのかという戦略」が必要です。

 私たちの会社イマジナは、ここ10年で2600社以上の企業ブランディングのお手伝いをしてきました。企業活動そのものがブランド戦略であるという観点から、社内の制度設計から社外へのPRへとトータルかつシームレスな仕組みを提供してきました。現在では企業ブランディングのみならず、伝統工芸や地方自治体・地域のブランディングも手掛けています。

 ここでは、これまで私たちが取り組んできた「ブランドのチカラ」「人のチカラ」「伝えるチカラ」のエッセンスをまとめました。貴方のブランド戦略理解の一助となれば幸いです。そして最後に、この記事をお読みいただき、私たちの仕事を面白いと思った方は、ぜひイマジナの扉を叩いてください。イマジナでの毎日はきっとあなたを成長させるでしょう。私たちと一緒に世界を面白く変えていきましょう。


chapter 1

なぜ、今「ブランド力」が必要なのか

Why is brand power needed now?

企業や自治体におけるブランド力こそが、お客様に満足感や安心感を与えられる最大のファクターです。そして、商品やサービスにブランドという付加価値を提供できる企業だけがライバル企業と差別化でき、お客様から選ばれます。
企業の経営戦略とブランド戦略は一体で。ビジネスが複雑化かつスピーディーになっていく世界で、これからは「なんとなく」のブランド戦略は通用しません。
今こそ、企業や自治体が真のブランド力をつける必要があります。


付加価値を提供できる 企業だけが お客様から選ばれる

お客様は何を基準に選択しているのか

 今の時代、商品やサービスは、一定のクオリティーに達していなければお客様から支持されません。良い商品、良いサービスを提供できるよう企業が努力することは当然なのですが、それだけでは足りないのです。
 なぜなら、自分たちだけが努力しているわけではないからです。同じマーケットで競合しているライバル企業も、同じようにレベルアップを目指して頑張っているのです。

 IT( 情報技術)が発展したことで、生活は便利になり多くのメリットが生まれました。企業もアイデアを商品化、サービス化するまでのスピードが、とても速くなりました。しかし、これはオリジナルなアイデアで先行しても、すぐにライバル社に追いつかれることも意味しています。
 同時に市場調査の技術も進歩していますから、「自分だけの」商品やサービスが持ちにくくなりました。同じような価格で同じようなクオリティーの商品が並んでいるのです。商品やサービスそれ自体では、差別化しにくい時代になったといえます。

求められるのは満足感という「ブランド力」

 では、お客様は何を基準に商品やサービスを選んでいるのでしょうか。
 お客様は「なんとなく」「適当に」お店や商品を選んでいるわけではありません。衝動買いもありますが、それらには確固たる基準があります。
 何が最も自分を満足させてくれるのか、そこにフォーカスしてお店や商品を選んでいるのです。

 満足感とは、お店や商品にまつわるすべての要素が対象となります。デザインや肌触り、使い心地や味といった商品そのものに関する要素だけでなく、お店の雰囲気や商品につけられたロゴマーク、商品を入れる紙袋、店員さんの的確な商品知識、接客態度、商品にまつわるストーリー、そこを贔屓にしている有名人、信頼感や安心感……、これらの直接目に目えないものまでをひっくるめた満足感を求めているのです。
 この、お客様が得られる満足感こそがブランド力なのです。商品やサービスにブランドという付加価値を提供できる企業だけがライバルと差別化でき、お客様から選ばれるのです。
 企業の経営戦略とブランド戦略は、一体です。今後、「なんとなく」これまでと同じ商品やサービスを提供している企業は、衰退していくでしょう。
 自分たちはどの市場でどう戦って生き残っていくのか、お客様にどんな価値を認めてもらうように働きかけるべきなのかを突き詰めて考えるブランド戦略が、求められるのです。


ブランディングとは 良いイメージを 持ってもらうための 活動

ブランドとはお客様が評価する価値

 ブランド力はとても大事ですが、そのブランドをどう構築すればいいのでしょうか。ブランディングとマーケティングを混同して理解している企業が多いので、ここでしっかりと定義しておきましょう。

 ●ブランディングとマーケティングの違い
 マーケティング= 自分から自分のイメージを相手に伝える努力
 ブランディング= 相手に自分のイメージを持ってもらう努力

 一見似ているようですが、左のイラストを見ていただければ分かるように、外部からの評価がその企業のブランドを構築するのです。
 企業が「うちはこれがすごいんです」「価値があります」とアピールするのはマーケティングです。企業が消費者にアピールするのは当たり前のことですから、これだけでは消費者はピンときません。
 外部からの評価を得るために、相手( お客様)に自分たちが大切にしている想いや考え方を理解してもらい、良いイメージを持ってもらうための活動がブランディングなのです。

ブランド力があるとお客様のほうで良いイメージを膨らませてくれる

 お客様が、「この企業(ブランド)はすごいんじゃないか」と思ってくれる仕組みをつくることがブランディングです。
例えば、ルイ・ヴィトン。下地にビニールクロスを貼り合わせたルイ・ヴィトンのトランクは、世界で最もコピー商品が多いともいわれており、数々の逸話に彩られています。ナチスが金塊を運ぶときに破けなかったとか、タイタニック号が引き上げられたときにトランクの中が濡れていなかったとか……。真偽のほどは問題ではありません。お客様がブランドに対して「勝手に良いイメージを持つ」という点が大事なのです。
 
 例えば、リッツ・カールトン。この世界的なホテルチェーンは、部屋の匂いにもこだわっています。優先順位が決して高くない匂いにすらこだわるということは、ベッドや食事や清掃に関してはそれ以上に気を配っているのではないかと、お客様にイメージしてもらうために、匂いにフォーカスしてブランディングしているのです。
 お客様に良いホテルだとイメージしてもらうために、設備からサービス、社員教育まで一貫してベクトルを合わせていくのがブランディング戦略なのです。


企業フィロソフィー とは自分たちの存在意義を語るもの

企業理念は未来視点で構成する

 企業理念をつくる際には、企業が一番大事にする想いを未来視点で構成する必要があります。
 現状視点でつくってしまうと、今以上のステークホルダーを集めることはできません。この先、どういう人が集まってきて、どういう組織をつくっていって、どういう風に社会で存在意義を出していくのか、それを考えるのが未来視点です。
 自分たちの存在意義を語ることが企業におけるフィロソフィーです。経営者や社員は、企業の存在意義を語れるでしょうか。自分たちが何を社会に提供しているのか、何を社会に表現しているのか、語れるでしょうか。

経営者の勘は当てにならない

 企業の存在意義とは、お客様が喜んで消費や投資をしてくれる理由です。その理由が明確でないと、自分たちが売りたいものだけをつくってしまったり、お客様からそっぽを向かれる値付けをしてしまったりしがちです。
 市場に合った価格でなければモノは売れませんし、理解もされません。市場が何を求めているか、お客様が何に対して興味を持ってくれるのか、そこに自分たちの商品やサービスが当てはまっているのかをきちんと分析する必要があるのです。
 多くの中小企業は、商品やサービスの価格を大体このくらいだろうと、経営者の勘で決めてしまいがちです。勘に頼ると、成功することもあれば失敗することもあります。勘は個人のスキルに依存しすぎる点でリスクが大きいので、経験とデータに基づいた科学的な分析が求められるのです。


「なんとなく経営」は もうやめよう

時代の変化についていくには市場調査は必至

 ブランディングというと、ロゴやパッケージ、店舗のデザインを有名なデザイナーや建築家に依頼しようという発想になりがちです。地方自治体に行くと、特にその傾向は顕著です。その人のデザインセンスに期待する部分もありますが、知名度のある人を起用したいという自己顕示欲や、何かあったときに名前が知られていれば安心という、保険料も込みで考えているからでしょう。

 昔はそれでも良かったのです。巨匠のデザイナーに「これが当たるんじゃないか」と言われて、それが通っていた時代もありました。今は、それが通用するほど甘くありません。データを収集して、分析して、ネットやSNSではどういう言葉がトレンドになっていて、どういうものを消費者が求めているのか。徹底的なリサーチをして、競合他社が何をやっているのか、自分たちがベンチマークすべき企業はどこで、その企業の売れ筋の根拠は何か、しっかりと市場をリサーチしないとダメです。

なんとなくやっている企業には、それなりのスタッフしか集まらない

 今後、企業の経営戦略とブランディングは一貫して考えていかなければなりません。商品やサービスはもちろんのこと、良い人材を集めるためには、人事評価制度や福利厚生などのインナーブランディングも、ブランディングの一環として考えなくてはいけません。
 
 例えば、我が社は何のためにこの福利厚生に取り組むのか、リクルーティングや人材育成は、どういう形なら我が社の企業理念に即しているのか、突き詰めて考える必要があります。単に世の中や社員が求めているからといって、それをそのまま提供したところで意味がないのです。よく「女性が働きやすい企業です」と、人材募集でアピールする企業があります。単に人集めのために謳っている企業と、社内のバックアップ体制が整い、女性役員の登用実績があり、女性がいきいき働ける社風が確立している企業では、内実はまったく違います。優秀な人であればすぐに見抜いてしまいます。
 
 例えばグーグルは、応募者を何回面接するか、産休から仕事に復帰するのはどれくらいが理想的かということも、検証して考えて考えて考え抜いて、その数字を出しているわけです。
 それが、インナーブランディングなのです。なんとなく「他社がやっているから」というのでは、優秀な人材は集まらなくなっています。商品提案も人材育成も、なんとなくやっている企業には、なんとなく買ってくれるお客様と、なんとなく入ってしまったスタッフしか集まらない時代です。


危機感を持ち チャレンジする企業だけが生き残る

ブランディングとは将来のために種を蒔くということ

 グローバルで勝ち残っていくために、今までの発想をすっかり変えなければならない―。そういう危機感を持つ企業だけが成長するのだと思います。現状維持を良しとせず、攻めよう、挑戦しようという体質があるかどうかです。現在、「これだけのネームバリューがあり、売り上げも安定しているので、リスクを冒したくない」という保守的な体質の企業は、ブランドへの投資などまず考えないでしょう。極端な話ですが、自分の代で事業を終わろうという工場やメーカーの経営者は、設備投資はしないですよね。でも次の世代に残そうと考えているなら、今何かやらなければいけないと、危機感を持って取り組むでしょう。
 将来の飛躍の種を蒔くという作業がブランディングなのです。次の世代や、今入ってきた新入社員のために何かを残さなければいけない、そのために投資するのがブランド戦略です。

専門家の発想に投資する

 経営戦略は、経営者の発想だけでは価値のあるものは生み出せません。例えば、30年前の野球と今の野球は全然違います。ですから、30年前に野球をやっていた人がそのときのままの知識や感覚でいたら、素人には教えられますが、一流の選手は育てられないのと同じです。
 経営者自身が現場の最前線にいながらも業界や自社の状況を熟知していないのなら、そこに精通した専門家を入れるべきですし、他社がどんなことをやっているのか、リサーチを徹底することも必要です。ところが、将来のためのブランディングに投資する企業は非常に少ない。経営状況が悪いわけではないのです。お金があるのにやらないのは、そこに価値を見いだせない企業が多いということでしょう。逆にお金がないけれど、危機感を持っている企業のほうが生き残りのために必死になって専門家を呼んだり、本を読んで勉強したりしています。長い目で見れば、両者の立場は逆転していくでしょう。
 創業何百年という老舗の大企業ですら、創業時の理念と現在の自分たちの役割をすり合わせてブランドを再構築する際には、外から専門家を呼んでブランディングについてディスカッションをしています。
 その時代のその社会に即した「ビジョン」「ミッション」「バリュー」を構築するには、他者とのディスカッションが必須であることを認識しているからで、伝統という名前の上にあぐらをかいた、独りよがりの社風になることを戒めているのです。
 同時に、外部の専門家を交えて議論することで、社員の心をブランド構築に向けて束ねていく効果も見込んでいるのです。


チャレンジする企業に面白い人間が集まる

自分の頭で考える仕事が多い企業か

 チャレンジしない企業、面白いことをやっていない企業は、基本的に社員が自分で考えて取り組む仕事が少ない企業です。
 自分の頭で考える仕事が少ないと、何が起きるかというと、「今のままでいい、むしろ考えない仕事がしたい」という人しか集まって来ないのです。
 このような環境では、チャレンジしたい人は会社を去ることを選択します。「もっと面白いことがやりたいけれど、会社がその方向を向いていないなら外に行くしかない」という人は出て行って、「まあ何を言っても変わらないし、そこそこブランドもあるから」という人が残るのです。

 ソニーブランドがなぜ凋落したかを考えてみましょう。ウォークマンで成功してお金もあったときに、人材に投資して世界中からトップクラスの若者を採用していれば、今のグローバルスタンダードが、リンゴマークではなくてソニーになっていた可能性があるのです。
 近い将来、ルーティンワークと呼ばれる仕事はAIに取って代わられてしまいます。人がする仕事は、クリエイティブで、発想したりものごとを提案していったりすることしか残らないといわれています。
 現在、面白いことをしようとする人間を育てる投資をしていない企業には、将来どんな人材が残るでしょうか。
 現状維持で良いと思っている企業、チャレンジしない企業、社員に挑戦させない企業は、まず人材面から細っていきます。
 マネジメント的に見ると、同質の人材を大量に抱え込んで、他人の言うことを唯々諾々と聞いたり、どんな無理難題でも我慢できるような辛抱強い社員をたくさん持ってしまったりすると、これからは企業にとってものすごく負担になってくるでしょう。


ブランディングとは その企業でなければできない仕事を追求していくこと

ファミリービジネスは、文化があるから残っている

 ブランディングとは、極論すればその企業でなければできない仕事を追求していくことに尽きます。トップは企業の方向性や理念から、その企業でなければ実現できないものを社会に対して表現し、その文化を背負っていく誇りを大事にすべきです。例えばエルメスだったら、エルメスの文化を背負っています。フランスの職人を使って自分たちにしか表現できないものを追求しているのです。
 日本はファミリービジネスが世界一多いといわれています。200年以上続いている企業も世界で一番多いようです。上場企業の半分くらいはファミリービジネスなのです。ファミリービジネスは端的に言えば、文化があるから残っているようなものです。社会における存在理由がその企業の文化であると、認められているのです。現在でも社会から必要とされているファミリービジネスとは、「自分たちでなければできない、自分たちだからこそ表現できる」というものが明確でないと、生き残っていけない時代なのだと思います。

目に見えないものこそ、価値のある文化

 今は3Dプリンターがありますから、エルメスと同じ布で同じ形で同じものをつくることは可能です。スキャンして材料を分析してつくれば同じものはできるのですが、でもそれはエルメスではないのです。そう考えると、エルメスは目に見えるものを売っているわけではないことに気がつきます。目に見えるものや形になっているものと、目に見えないもののどちらが高いのかと考えると、目に見えないもののほうが価格の大きなウエイトを占めているのです。
 今、成長途上にある企業は、小さいなりに自分たちにしかできないことに取り組んで、自分たちの文化をつくっていけばいいのです。家族には家族のルールがあり、組織には組織のルールがあります。なぜルールがあるのかといえば、そこで大事にしているものがあるからです。例えば、夕飯を全員で食べるのが大事な家族もあれば、週末に家をピカピカに磨くことを大事にしている家族もあります。それぞれが家族の文化なのです。
 
 企業においても、大切にする何かがあるのとないのとでは、ずいぶん違ってくると思います。うちの会社は何を大切にしているのか。経営者は社員に向けてしっかりしたメッセージを発する必要があります。
 企業は、家族と違って他人の集まりですから、方向性を示す図面が必要ですし、ゴールを設定してそこに向かうための考え方も合わせていかないとダメです。だから、皆をまとめるブランドコンセプトが企業には絶対必要です。


企業におけるすべての活動は、ブランドづくりにつながる

インナーブランディングとアウターブランディング

 企業ブランディングは、インナーブランディング( 社内浸透)とアウターブランディング( 社外浸透)の二つから成り立っています。この二つは別々にあるのではなく、互いに相補的であり、一方だけが存在するということはありません。いわば車の両輪のような関係です。
 インナーブランディングとは、社員に対する取り組みであり、主に日々の業務や研修においてブランドの浸透を図ります。企業理念に即した「実践行動」を促進しベクトルを合わせて質を向上させていくものです。
 アウターブランディングは社外の人間に対する取り組みであり、主に広報・広告活動でブランドの浸透を図ります。お客様の「経験価値」を豊かにして、自社へのブランドロイヤリティーを生み出すのが目的です。

社員の「行動」がお客様の「経験」をつくる

 経営者は企業理念( いわゆるビジョン・ミッション・バリューなど)をつくります。すべてはそこを起点にして始まります。企業の存在価値を明確にして、ビジョン達成に向けて社員一人ひとりに必要とされる働き方を分かりやすく伝えます。
 インナーブランディングでは、社員一人ひとりに企業カルチャーの浸透を図り、企業ブランドの社内理解と実践を促します。アウターブランディングでは、競合他社との差別化を図ります。企業カルチャーに沿ったサービス提供やビジュアル展開が必須となります。各種の施策で社外へのブランド浸透を実現します。
 インナーブランディングは、採用から社員教育、研修や人事評価制度、事業計画などであり、アウターブランディングは、広告宣伝、広報、営業活動にわたります。要するに、企業におけるすべての活動は、ブランドづくりといってもいいでしょう。この二つのブランディングが実現するのは、事業の成長と企業価値の向上です。社員の「行動」がお客様の「経験」をつくり、それがお客様の心の中に「ブランド」を生み出すからに他なりません。
 インナーブランディングにおいて重要なのは、企業が大事にしているカルチャーを社員に深く浸透させることです。カルチャーを明確化し、浸透させ、定着させるという順番になります。カルチャーの明確化とは、企業理念を落とし込んだ、カルチャーブックのようなツールを作成して表現します。
 カルチャーの浸透は、認知的理解、情緒的共感、実践行動の三つから成り立ちます。つまり、「想いを理解し、共感しているから、行動に移せる」わけです。いわば、社員の行動の質をカルチャーに沿って高めるQC活動といってよいでしょう。そしてカルチャーが浸透しているかどうか、定期的に調査を行います。


chapter 2

企業ブランドは社員がつくる

Members of an enterprise create its brand

企業ブランドを形づくっているのは、経営者でもなければメディアでもありません。その企業に勤めている社員です。
すべての企業のイメージは、社員の行動に反映されるといっても過言ではありません。それだけ、企業において人は大切なのです。
だからこそ、事業の目的や企業理念を理解させて、自発的に動ける社員を育てることが重要になります。


企業のイメージを 想起させるのは社員、 ごまかせないのが人

企業のエッセンスは社員の行動に表れる

 お客様を含めた世の中一般の人々は、何からその企業をイメージするのでしょうか。つまり外部の人は、どこを見てその企業を評価(ブランディング)しているかです。
下のグラフを見ていただければ一目瞭然です。企業ブランドをイメージさせるのは、経営者でもなければメディアでもありません。その企業に勤めている社員たちなのです。
 私がインナーブランディングの大切さを重ねて説くのは、グラフからも明らかなように、企業理念を社内に浸透させることが、社外に情報発信する以上にブランドづくりにとって影響を与えるからです。
 逆にこういうこともいえるかもしれません。すべての企業のエッセンスは、社員の行動に表れるのだと。
 こんな経験はありませんか。魅力的な広告を出していて、フォア・ザ・カスタマーを謳っている企業なのに、社員の態度が悪くて幻滅した……。社員の行動によって、すべては台無しになります。ごまかせないのが人なのです。逆のパターンもあります。たとえ店内が古めかしくても、社員のホスピタリティーがすごく高かったら、あえて味を出している戦略なのかと好意的に解釈するでしょう。 
 事業において、人がカバーする範囲は実に大きくて、他者に与える印象も強いのです。ですから社員が、自分の会社の事業の目的を理解して自発的に動けることが非常に大切になります。

マニュアルはオールマイティーではない

社員一人ひとりが事業の目的や理念、価値観を理解して動くということと、マニュアル通りに働かせることは本質的に違います。
 例えば東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、自分たちが「夢を売っている」ことに関して、スタッフの間で共通の理解が浸透しています。お客様を大切にする、お客様に楽しんでもらうというカルチャーが徹底しているのです。
 スタッフ以外の外部の取引先にも、その理念に対する理解と同時に、それを実現するためのクオリティーが求められています。
 当然マニュアルも存在しているのですが、それは理念に紐づいたものと理解されていますし、マニュアルの範囲外の出来事に対しては、ディズニースタッフとしてどうあるべきなのか、自分たちの価値観に照らし合わせて行動ができるようにカルチャーがしっかり浸透しています。
 ブランドへのロイヤルティーが社員の中にあれば、マニュアルの範囲を超えて、正しい行動がとれるということです。
 逆にいくらマニュアルやコンプライアンスが整備されていたとしても、何のためにそれを守るのか社員の中に落とし込まれていなければ、ブランドを貶める行為はなくならないでしょう。


企業カルチャーが 定着していれば、 社員は どう動くか分かる

マニュアルだけでは、残念な行動は防げない

 マニュアルはとても大事ですが、すべてのことに対してマニュアルだけで対応することは不可能です。
 ある外食企業で、中国工場の社員がナゲットの肉を蹴っている動画が流出しました。その企業では、世界最高峰といえるほどの詳細なマニュアルを完備しており、どこのお店に行っても味が変わらない、同じクオリティーの商品提供を可能にしました。今回そのような不祥事が起きたということは、結局、社員の中でなんのために自分たちはこの商品を提供しているのかという目的を共有する気持ちがすっぽり抜け落ちていたからでしょう。
 コンビニでも、アイスクリームケースの中にアルバイトがふざけて入ったりしてしまうのは、結局、その企業の価値観を浸透させる教育を怠っていたから起こったことでしょう。
 当たり前ですが、企業のマニュアルには「アイスクリームケースの中で寝てはいけません」とは書かれていません。常識で考えれば分かることです。そんなことを言い出したら、考え得るすべてのことをマニュアルに書かなければいけなくなりますし、それは不可能なことです。
 マニュアルには書かれていないけれども、理念や企業カルチャーがしっかり浸透していれば、そこで社員がどう動くか分かるということが大事なのです。
 SNSがすっかり個人の情報発信ツールとして定着していますから、これまでのように不祥事を隠蔽することも、ことが起こってから揉み消すということも難しくなりました。何をやってもバレてしまう時代なのです。
 社員やアルバイトをマニュアルで縛るよりも、自分たちが大事にしている価値観を浸透させたほうがリスク管理の上からも効果的なのです。


価値観が 共有できていれば、 お互いに 不幸は生まれない

「こんなはずではなかった」を防ぐために

マニュアルでしか社員の行動を縛れない企業では、マニュアルの隙をついて次々に起こる問題に対して、後追いで対応せざるをえなく、それは時間とコストを浪費し、かつブランド力の低下を招きます。
 企業理念の浸透に力を入れて、インナーブランディングに取り組んでいる企業では、その企業の価値観に共感して入社する人が多いので、社員は同じベクトルを向いています。詳細なマニュアルを導入するコストをかけないで済むのです。
プロ野球選手になった人が、結果を出せなくて1年目で戦力外通告されても文句は言いません。普通の企業で1年目の新卒社員が「お前、戦力外だな」と言われたら、それはひどい話ですが、プロ野球は実力だけの世界であることを選手も球団もお互いに理解しているからです。プロとして通用すると判断されれば契約が継続される、という方針を理解した上で入ってくるので、ダメなら戦力外通告されることは織り込み済みです。

価値観を共有できる人を採用する

 採用におけるマッチングも似たようなことがいえます。企業はあらかじめ、自分たちのブランドや理念、想いについて、入社希望者に明確に示す必要があります。そこで価値観を共有できる人であれば、入社してから「こんなはずではなかった」というミスマッチは起きません。
 企業の理念に共感できない人、価値観を共有できない人が入社してしまうのは、お互いにとって不幸を招きます。極端に生産性が低かったり、コンプライアンスで問題を起こしたりするのは、その社員の能力に問題があるというよりも、価値観を共有できない企業に入ってしまったから起こることが多いのです。
 採用に関する情報を発信する際には、等身大で自社のカラーをきちんと打ち出すことを意識しなければなりません。現実とかけ離れた情報を出しても、後でお互いにがっかりするだけです。社風やカラーが合いそうなので働きたい、という理由の人を多く集めるべきです。金銭的な条件のみで企業を選ぶ人は、他にもっと良い条件のところがあったら、そちらに移っていくでしょう。とりあえず誰でもいいから採用して、残りたい人だけ残ればいいというやり方では、結局誰も残らず育成のコストが無駄になるだけです。
 応募する人はさまざまな入口からあなたの企業を発見するのですが、最終的にはホームページを確認します。ですので、ホームページはしっかりと経営者の意図を反映したつくりにしなければなりません。企業や仕事に対する経営トップの想いを動画やテキストでしっかりと伝えましょう。
 独りよがりな内容や表現にならないように、専門のコンサルタントに依頼して第三者目線でまとめてもらうことも、一つの手段といえます。


個人が 成長することで 企業も成長する

一番楽しいのは自分が伸びていることを実感しているとき

 趣味の世界では、自分が伸びているときが一番楽しいです。将棋でも釣りでもゴルフでも、自分がうまくなっていることを実感している間は長続きします。伸び悩んでいるとか、停滞しているとか、これ以上は上達しないと感じたときに、他の趣味を探し始めるのです。
 社員にとっても、自分が成長しているかどうかは、とても気になることです。しかもそれを、企業や上司からの評価によって実感できるならば、仕事に対するモチベーションは上昇します。

社員の行動がブランドのコンセプトとズレていないか

 私たちは、社員教育もその企業のブランドのイメージに合ったやり方が必要だと考えています。つまり、どういった人材に育てたいかというコンセプトがあって、それに沿った社員教育のメニューをつくっていくことです。
 その場合、人材教育を専門とする外部の企業に依頼する必要はありません。外部の刺激という意味で、講師を呼ぶのはいいとは思うのですが、基本的には日々の行動が、ブランドのコンセプトとズレていないかどうか、フィードバックやコミュニケーションで確認することが大事です。
 学びにおいては、何のために学ぶのか目的がはっきりしていることが重要です。学ぶことで、自分の成長を実感できなければ意味がありません。
 人は楽しいときこそ集中力が増し、普段以上のパフォーマンスを発揮します。それをどうやって組織の中でつくっていくのか考えていきましょう。


評価とは 社員が自分の成長を 実感するためのもの

どう成長を描いていくべきか評価によって伝える

 評価制度は基本的に、社員一人ひとりがその企業の中で成長できていることを実感するためのものでなければなりません。
 企業の方向性―企業理念やブランドが指し示す方向がきちんと提示され、その組織の中で、去年よりどう成長したのか、これからどう成長を描いていくべきか、評価制度はそれを伝えるためのツールであるべきだと思います。
 評価というと減点方式になりがちです。しかし、毎週でも毎月でもいいのですが、少なくとも年に一度は「あなたはこれだけ成長した」ということを伝える、フィードバックすることがとても大事です。
 私たちは、個人が成長することをきっかけとして企業も成長していくと思っています。個人の成長なくして組織の成長もありません。

評価を伝える場は経営者の考えを伝える場

評価を伝える場は、同時に企業の理念や経営者の考えを伝える場でもあります。社員の考え方や行動が、企業の方向性に合っているかどうかを定期的にフィードバックして、ズレがあれば修正するのが目的です。企業と社員の間のいろいろなトラブルの多くは、コミュニケーション不足から起きているからです。
 評価に関するすれ違いもその一つです。査定の前にいくらでも話す機会はあります。「あなたは、このまま行くとこうなるし、こう変えなければいけない」というコミュニケーションがあってしかるべきなのです。それがないままいきなり評価となるので、ギャップが生まれてしまいます。


戦略的組織異動で 変化に強い社員を 育てる

変化に対応できる人材を育てるために

ブランド戦略を進めていく中でも、適材適所の考え方はとても大切です。
 例えば、営業が好きで、いろいろアイデアを工夫して成績を残している人が、管理職になって部下をマネジメントする段になると、全然力を発揮できないというケースがあります。研修を積めば何とかなるのではなく、そもそもマネジメント業務が好きではない場合、その人をマネジメント業務につかせるのは宝の持ち腐れになります。人材配置は、その人の優れているところを伸ばしていくことを第一に考えなければなりません。伸ばすためのアクションとして、戦略的に組織異動をするのが効果的だと思っています。異動によって、刺激を与えて自分の殻を破らせる意味があります。
 これからは、変化に対応することが組織にとっても社員本人にとっても非常に大事になってきます。社会や環境の変化に対応する力をつけなければならないし、そういう力のある社員を育てなければ、企業も変化に取り残されてしまうのです。

異動はその人の強みや特質を分かった上で行う

伸びている企業( 例えばニトリが代表的ですが)は異動が多くて3カ月ごとに部署を変わるそうです。何を目指しているのかといえば、変化に強い人間をつくるためです。人間は放っておくと現状維持をすることが自分の目的だと勘違いしがちです。そのやり方に慣れ親しむほど「変えたくない」という心理が働いてしまうのです。ニトリでは、「将来から逆算する」という思考法を用いて、現状維持の打破に努めています。思考の基準を現状ではなく、将来に置くことで、変化するのが当たり前のカルチャーをつくりました。「変化する・しない」ではなくて、「いつ変わるのか」を議論する風土づくりに取り組んでいるのです。ニトリは部門をまたがる人事異動を定期的に行うことによって、ともすれば部門最適に傾きかねない人事配置を、常に全体最適の方向に向かわせています。
 最終的には、適材のところに配属させるのが絶対条件ですが、日本の企業は特に、変化に対応できる人材育成を意識して行っていく必要があると感じています。終身雇用が前提の日本の企業と違って、海外は基本的に年契約で働くので、企業が変わるたびに違う環境に行きます。変化するのが当たり前という意識があるのですが、日本人にはそれがありません。
 これからの組織は、環境や状況が変わったときに、すぐに対応できる人材をどれだけ持っているかで勝敗が分かれます。そのために、社員に変化することやチャレンジすることに慣れさせておかなければいけません。ただ闇雲に異動させるのではなくて、適所に配置できるように、その人たちの成長が分かるような制度や仕組みをつくる必要があります。


新しいことに チャレンジする カルチャーが 企業を成長させる

なぜベンチャーは新規事業に強いのか

 大企業で新規事業を展開するためにつくられた子会社が、いつまでたっても軌道に乗らないケースをたくさん見てきました。その間に小さな資本でスタートした企業があっという間に上場する姿も見てきました。
 大企業は、資本力でも人材でもベンチャーに勝っているはずなのに、おかしな話です。結局、決裁を任されている幹部クラスが、新しいことにチャレンジする文化で育ってないからということに他ありません。
 いくらトップが新しいことに挑戦しようとアクセルを踏んでも、その後ろにはブレーキを踏んでいる社員がたくさんいるからです。
 大企業のベテラン社員は、論理的で経験も豊富ですが、その能力を、リスクをリストアップする方向に使ってしまいがちです。できない理由をロジカルに並べ立てるスキルばかりを磨いてしまっているのです。それよりも、自分で考えて自分で絵を描いて、これからの時代はこっちだからと旗を振って、一丸となって取り組むベンチャーのほうが、大企業を追い越していくのです。
 これからは、時代や環境の変化に対応できる企業、あるいは自分たちで先取りして変化を起こせる企業にならないと、生き残ることが難しくなるでしょう。そのためには社内に、変化することが当たり前というカルチャーを醸成しなければなりません。

変化に強い人間が人事を担当しないと、変化に強い組織はできない

 変化することをルーティンの中に取り込んでいくためには、変化を楽しむ姿勢と、成長を実感する仕組みが不可欠です。
 成長を実感する仕組みとは、評価制度と連動した日々のコミュニケーションです。これは日報のような形でコメントを残すものや対面での上司との確認作業も含まれます。
 日本の場合、人事部の社員はずっと人事畑を歩いていることが多いですが、そこを変えなくてはいけません。
 営業や広報も経験した変化に強い人間が人事をやらないと、変化に強い組織はできません。自分が変化するのが苦手ですという人が、他人を変化させるということがおかしいのです。「出張も転勤もしたことがありません」という人が人事をやったら、人の気持ちなんか分からないですよね。
 前項でも話しましたが、異動は、その人の強みや特質を分かった上で行わなければ意味がありません。クリエイティブに強い社員であれば、最終的にクリエイティブで力を発揮できるようなローテーションをしなければなりません。それをまったく関係なしに、誰も彼もを同じようにぐるぐる回転させるのは能がないのです。


変化のルーティンを 仕事の中に組み込む

社員が成長を実感できるような仕組みづくりがインナーブランディングの中心

ブランド構築とは、その企業でなければできない仕事を追求することだと前述しましたが、それを実現していくのは社員です。志を同じくする人を集めて、同じ方向を向いてやっていくわけですから、採用が非常に大事になります。採用段階において、自分たちの理念や考え方、想いやゴール、そこに至る戦略を明確に伝えて、それに共感できる人を採用すべきです。
 採用後の人材育成においては、社員一人ひとりがそれぞれの目標設定にたどりつくことができるようなフォローが必須です。それは社員に日々の成長を実感させることにつながります。
「あ、私たちはこれができるようになったんだ」という風に、前向きな気持ちにさせる、モチベーションを高めていく仕組みづくりが必要です。
 社員一人ひとりの小さな成長と企業のブランディングは密接に結びついています。人材採用の窓口と、成長を実感させる仕組みがしっかり連動しないと、お互いに不幸なことが起こりやすいのです。

採用の窓口と成長を実感させる仕組みを連動させる

 日本人あるいは日本の組織が特に苦手としているのが、変化への対応や新たなことへのチャレンジです。企業の文化がチャレンジングではなかったら、自然とそこに所属する個人も同じ色に染まって保守的になってしまうでしょう。人は、どんな些細なことでも変化を嫌う傾向にあります。ですから変化の乏しい生活をしていると、変化に対応できなくなってしまいます。自分自身を変化に強い人間、チャレンジングな人間に変えたいと思ったら、日常の本当にちょっとしたことから変えていきましょう。
 炭酸水が好きだったら、一つの銘柄に絞らないで、いろんな炭酸水を試して、その上で自分の定番を決めるとか、帰りの道順を変えてみたり、ランチのお店を変えてみたり。いつもとは違うジャンルの本を読んでみるとか、映画を見るとか。なんでもいいから新しいことをやってみるのです。
 変化することを習慣化するのです。変化を苦にしなくなるというのは成長です。成長を実感できると、また新しいことへの挑戦が楽しくなります。
 私たちは企業の評価制度をつくっている中で、社員自身が日々の小さな成長を実感することを重視しています。本人が成長を実感しているときは仕事自体が楽しいのです。その成長がなくなったとき、停滞しているときに、企業を辞めたり、コンプライアンスに違反するようなことをしたりすることが多いのです。
 社員が成長を実感できるような組織づくりや仕組みづくりが本格的に必要で、それがインナーブランディングの中心といっても差し支えないと思います。


絵を描ける人が リーダーである

ゴールに向かって全体像を示すのがリーダーの仕事

 リーダーとは、どうあるべきでしょうか。
 私たちは、リーダーは絵を描く人だと思っています。絵とはビジョンです。
 その図面をしっかり描く。例えば家だったら、図面がしっかりしていれば大工さんがその通りに建てることができます。業者にも材料を発注できます。でも、〝なんとなく〟「こんなものをつくりたいんだよ」では、誰も動けません。ゴールと、そのために何をやるのかの全体像を示すのがリーダーの仕事です。大企業のすごいところは、経営者がビジョンをはっきり示さなくても、社員が動けるところです。

社長がイメージできないことは誰も実現できない

 しかし成長期の企業や小規模な企業は、何か目標がないとそこに行きつけないのです。ウォルト・ディズニーも言っていますが、自分が夢に描いたり、イメージできること以外は、実現できないのです。
 ビジョンを実現した経験があると、人は実現をイメージできるようになります。入社当初は、大きなプロジェクトを実現できるイメージがまったく持てませんが、経験を重ねると、自分でもできるとイメージできるようになります。自分たちはできるのだと社員に対して絵を描くのが、経営者の仕事だと思います。。
 成長しない企業というのは、社長が青写真を描けていないのです。社長がイメージできないことは誰も実現することはできません。企業が社長の器以上に大きくなれないというのはこのことを指しているのです。


トップは トップでなければ できない仕事をする

経営者はゴールを見失ってはいけない

 絵を描いたならば、経営者は最後のゴールを見失わないこともすごく大事です。
 例えばPRプロダクトを製作するプロジェクトがあるとしたら、PRプロダクトをつくること自体が途中からゴールになってしまいがちです。
 本当はそのPRプロダクトによって、より多くの人に自分たちの想いを理解してもらうのがゴールのはずです。つくるのはゴールではなくスタートのはずです。でも途中から、プロセスが大変だから、とにかくそれを仕上げなくてはいけないとなり、本来のゴールから逸れてしまうことがあります。自分たちの最終的なゴールはどこなのか、絶対に見失わないというのはすごく大事なことです。特に経営者もプレイヤーの場合は、ゴールを見失いがちになるので注意が必要です。

誰もが自分にしかできない仕事をすべき

 基本的に、トップはトップにしかできない仕事をすべきだと思います。管理職も同じで、その人にしかできない仕事をしなかったら、意味がないです。もちろん、働いているスタッフも、自分でなければできない仕事をすべきです。それをただ普通にやるのであれば、その人でなくてもいいということになります。私は社員に対して、必ずその人でなければいけない何かを仕事の上で表現することを求めています。
 成長期の企業では、トップが営業をするケースが多いのですが、そこで、営業をするなというのではなく、その企業のその状況に合わせて、トップでなければできない営業をすべきです。例えば社長は細かい事務処理をしなくてもいいですよね。経費精算に時間を使うのであれば、自社の方向性を考えたり、社内体制を考えたり、次のステージに行くためにどうしたらいいのか勉強するのが仕事です。
 だから、社長に秘書がいないというのも本来ダメだと思います。自分の時間をつくってくれる人がいて、自分は経営戦略に専念して、本人でなければできない仕事をやり続けるのが理想だと思います。
 社長の仕事とは何でしょうか。社長とは、企業の存在意義を証明する人です。それは他の誰にもできない仕事です。企業がどんな風に社会に貢献していくのか、その方向性を決めるのは社長です。どんなに優秀な企画部長でも、提案はできても決めることはできません。社長が社会との一番大切なパイプなのです。
 自分たちの進む方向を決めたならば、それを社員が腹落ちできるように、共感できるように伝えなければなりません。
 企業において、社長と社員はお互いに役割を演じている面もありますが、一方で個人としての感情も持ち合わせています。個人としての社員が共感できるのは、社長個人の想いが投影されたビジョンだけです。


経営者のマインドを 変えることから 始める

経営者は裸の王様になりかねない

 経営者自身が企業の成長に蓋をしてしまうケースも多々見受けられます。私たちは、経営者の限界が企業の限界になることを危惧しています。ですので、良いアドバイザーを置いたり、専門家に相談したりしながら、経営者自身も成長していかなければいけないと考えています。
 ある程度の企業であれば、業界団体や経済団体などに出ていって、そこで年功序列の体験を味わったりしますが、基本的に社内で怒られることはないですし、指摘されることもないわけです。これは、本当に自戒しないと裸の王様になりかねません。自分の弱点を知り、課題をしっかり持って行動しないといけないのです。
 企業ブランディングにしっかり取り組んでいくというのは、経営者のためでもあるのです。
 社員一人ひとりに企業カルチャーの浸透を図り、理解と実践を促すわけですから、経営者自身がお手本にならざるをえません。


社長よりも 直属の上司の 働き方のほうが 影響力がある

社員は直属の上司に将来を投影する

  インナーブランディングで大切なのは、社員が自分の会社やブランドが好きかどうかということです。他社を落ちて仕方なく入社してきた人と、方向性やコンセプトや経営者の考え方に共感して入社してきた人では、まったく違います。
 企業の魅力はいろいろありますが、人にフォーカスしたところでいえば、社長にすごいカリスマ性があるのと、自分の直属の上司がイキイキと働いているのでは、断然後者のほうが良い影響を与えます。
社長がすごく良い生活をしていようが、それを目標に追いかける人は少ないからです。自分の直属の上司が充実して仕事にやりがいを感じているほうが、自分の将来イメージを投影しやすいのです。

チャレンジしている上司は魅力的に見える

 学生の頃に、「この人はすごいな」と思っていた人が、久々に会ってみると、ずっとそこから変わってないことを感じて幻滅したことはありませんか。「あ、この人、まだそこにいるんだ」と。
 人間の何に魅力を感じるかといえば「成長」の要素がとても大きいと思います。上司でも同僚でも、チャレンジしている人は魅力的です。切磋琢磨していろいろな環境に飛び込んで、進化している姿はまぶしく見えます。しかし、何年も前と同じことを言って、同じことをやっている人に魅力は感じません。
 特に企業の場合は、チャレンジしない限り衰退していきます。今の時代に現状維持というのは緩やかな衰退を意味するからです。その中にいるスタッフだって、成長しなければ周りから置いていかれます。
 当然上司も変化に対応できる能力を持っていないと、部下から幻滅されます。新しいことに挑戦しようというときに、自分はもう古い人間だからと及び腰になっている上司は、下から見たら本当に嫌になるのです。
 自分自身がチャレンジしている上司は、部下のチャレンジに対してもサポートを惜しみません。部下は上司にとって、ただ仕事をやらせる社内の下請けではありません。共に設定した目標を共有して戦っていくチームメイトなのです。
 私たちが直面しているのは、激烈な変化です。AIやロボットに仕事をとられようとしているときに、そもそも年齢が上だからとか経験があるからというのは、アドバンテージになりませんし、なったとしてもすぐに追いつかれてしまうアドバンテージでしかありません。
 企業におけるダイバーシティーも加速しつつあります。マーケットの変化と同じように、労働環境も刻々と変化していきます。経営マネジメントの観点から言えば、そうした環境変化についていけない幹部社員こそが、成長の阻害要因としてクローズアップされてくるでしょう。


chapter 3

世界で勝ち抜くためのブランド力

Brand power to prevail in global competition

商品やサービスの力だけでは、企業ブランドを維持することはできません。
企業理念に紐づいた経営者のメッセージや社員の働きやすさ、人事評価制度、商品、サービスに込められた想いなど、企業活動のすべてがブランドをサポートするのです。
その企業のロゴを見たときに思い浮かべるストーリーがつくれること。
それがトータルなブランド戦略であり、世界でも勝ち抜けるブランドといえるでしょう。


グローバルで 勝つためには 進化を止めないこと

進化を止めた企業から脱落していく

 一時期、一世を風靡したけれど、今は影も形もないというブランドはたくさんあります。あれだけ百貨店でスペースを占めていた国内アパレルのDCブランドは、今ではほとんど姿を見かけません。こんなことになるとは当時誰も考えなかったでしょう。
 今までのように、ある一定程度までブランド力を構築したら、その延長線上でそのままいける時代ではなくなったということです。ブランドのバリューは常に進化させないと陳腐化してしまうのです。
クルマで言えば、お客様や社会や地球環境に対して、新しい取り組みをしている姿勢を見せ続けなければ支持を得られない時代なのです。新しい製品や新しい機能で付加価値を提供する努力を怠っているところから脱落していきます。それは、クルマ以外の商品やサービスも同じことです。
 進化するということは、ブランドの価値をお客様に合わせてブラッシュアップしていくことだと思います。お客様にとって、その商品やサービスを利用することの価値はどこにあるのか、常に問い続けていくことです。
 ブランドを進化させることに対しての投資も必要です。ブランド展開を将来にわたって続けていくという気持ちがないと、世界では勝ち残っていけないのです。

不可欠なトータルブランド戦略

 情報社会が飛躍的に進展することで、ビジネスにおける先行者優位の期間がますます短くなってきています。昔は「特許で飯が食えた」と言われていましたが、現在は、特許申請をしている間によそから新しいものが出てきて、もう価値がなくなるくらいのスピード感で時代が進んでいるのです。
 そうなったときに、製品やサービスの力だけでは、ブランド力を維持することができません。トータルなブランド戦略が不可欠となります。トータルなブランド戦略とは、企業理念に紐づいた経営者のメッセージ、社員の働きやすさや人事評価制度、製品やサービスに込められた想いなど―、つまり、企業におけるすべての活動です。一般の人が、その会社のロゴを見たときに思い浮かべるストーリーがつくれること、それがトータルなブランド戦略です。
 お客様は単なる機能だけでブランドを購入しているわけではありません。極論してしまえば、商品やサービスの機能的価値だけを見るならば、どの商品も同質的でありお客様はほとんど違いを見いだすことができません。そこで、企業はブランドの感性的価値を高めることに力を注いでいます。グローバル企業の勝ち組は、人それぞれに特徴があるように、商品やサービスの「パーソナリティ」を明確化することで、顧客の経験価値を高めているのです。


ブランド構築は 一気通貫で行う

インナーブランディングとアウターブランディングはつながっている

企業のブランドづくりは、社内外を通してすべてのステージで、一気通貫で行わなければなりません。表現は違っていても言っていることは同じでなければならないのです。
 企業理念を内外に浸透させていくときに、社内に浸透させるためのソリューション( インナーブランディング)と市場リサーチや外にPRするチャンネル( アウターブランディング)などを一気通貫で行う仕組みが必要です。
 デザイン会社がブランディングの一部だけを提供するケースがよくありますが、それだけではうまくいきません。家をつくるとき、デザイン性だけでなく、実際は機能性や動線、遮音性や通気性など、住む人のことを考えてつくります。それらを後回しにして、「まずは見た目をかっこよくしましょう」といって行ってしまうのが、デザイン先行のブランドづくりです。これは長続きしません。
 ホームページで募集採用のページをつくるにしても、実際に働いている人の仕事内容や評価の仕方を熟知している会社がつくるのとそうでないのとでは、著しく違ってきます。


CIはステークホルダーに伝えるメッセージにリンクしている

 ロゴマークは、つくるだけなら簡単ですが、その後の企業理念の浸透や社員教育まですべて一貫して行う必要があります。
CI( コーポレート・アイデンティティー)をつくったのであれば、それは人事評価や社員の給料まで連動している必要があります。あるいは、ステークホルダーに伝えるメッセージに全部リンクしているべきなのです。そしてそれを定期的に測定してマネジメントしなければ意味がないです。
 企業理念が浸透しているかどうかを、測定したりマネジメントしたりするためには、社員の日々の行動や業務の中でどれだけ浸透しているか数値化することと数値目標を立てていくことが必要です。
 企業理念の浸透度調査は三つのセクションから成り立っています。①認知的理解、②情緒的共感、③実践行動です。
 認知的理解では、企業フィロソフィーについてどれだけ理解しているのか自由記入式の設問で調査します。情緒的共感は、企業フィロソフィーと商品や会社に対してどれだけ好意的に受け入れているかを測定します。実践行動は多面評価の仕組みを取り入れて数値化します。
 外に対しても自分たちのブランドの浸透度をある一定期間調査して、市場から何を求められていて、競合他社とどう差別化していくのかをブラッシュアップしながら戦略を立てていくことが大事です。


ブランドづくりは 最強の 営業ツール

研修やワークショップだけで会社が伸びるわけがない

 研修やワークショップの開催は、やらないよりはやった方がマシと言えます。しかし全体のステージをイメージした上でやっていればいいのですが、そこだけにフォーカスしている会社もあります。ワークショップや研修に過度の期待をかけて、社員に気づきを与えるという具合に。
 もちろん刺激にはなるし、何かのテーマを見つけるきっかけにはなるので、必要だとは思います。ですが、目指す方向性も決まっていない中で、「何かを考えろ、話し合え」というのでは、現状の振り返りだけで終わってしまい、将来を変える力にはつながっていかないのです。

良いステークホルダーを集めるための活動

インナーブランディングとアウターブランディングを通じて企業理念の浸透を行うには、通常2年ぐらいのスパンが必要だと思っています。しかも2年経ったら終わりではなく、何度も見直し、手を加えていくべきものです。
 私は、ブランド構築のためのこの活動は、見方を変えれば営業そのものであると感じています。なぜなら、良いお客様、良い社員、良いパートナー、良いステークホルダーを集めるための活動に他ならないからです。
 会社全体を貫くブランディングが必要なのは、すべての業務がつながっているからです。例えば面接は採用業務ですが、広報でもあります。会社の説明を聞いて帰っていただくのですから、立派なPR業務です。


企業理念の浸透には 定期的な調査が必要

振り返りで問題点や今後の課題を浮き彫りにする

企業理念を社員に浸透させて、企業カルチャーと呼べる域にまで高めるには、それなりの時間がかかります。また、10年、20年という長いスパンでその企業カルチャーの品質を保つには、定期的な振り返りが必要です。
 企業理念を事業の中のさまざまなフェーズに落とし込んで、社員教育や人事評価制度に反映していくことをやり続けるわけです。そしてこれがうまく機能しているのか、社員に浸透しているのか、コンプライアンスの部分も含めて定期的な調査をして、問題点や今後の課題を浮き彫りにしていくのです。
 定期的な振り返りは経営の根幹に関わってくるので、毎年行う必要があります。よく、全社的に1年間の報告会を行う会社があります。そこでは、売り上げの表彰や何かの発表をしたりするのですが、イベント自体を企業理念を伝えるためのツールとして位置付けるべきで、企業理念にリンクしていないとただ単に表彰の場で終わってしまいます。

企業理念を浸透させるためのコミュニケーション

企業理念を浸透させるためには、何より上司と部下のコミュニケーションが大事です。そのスタイルはいろいろあっていいと思います。
 対面で話すのが一番効果的ですが、それが可能でなければ、ネットを利用してもいいです。対面ではなくても、やらないよりははるかにいいですし、実際、距離が離れているなら、今はいろいろな仕組みがあるので、そういうものを活用してもいいでしょう。
 コミュニケーションがなぜ大切なのかというと、齟齬を生じさせないためです。方向性が合っているかどうか、上司と部下がすり合わせて、それを記録に残すことで組織としてコミットしているという仕組みが必要なのです。例えば評価の段階になったときも、部下が自分では70点だと思っていたのに、上司は60点と思っていた場合、10点のズレがあります。このズレが生じないように、定期的にフィードバックをして、「今こういう状況だから、このままだと60点くらいになっちゃうよ。頑張らなきゃいけないね」とすり合わせをしていれば、ズレは生まれないわけです。逆に自己を過小評価することもあります。これは過大評価と同じように問題があります。過小評価しているのは、自分がどの位置にいるのか分析していない、自分にきちんと向き合っていない、あるいは会社の基準を理解していないということです。
 上司ときちんとコミュニケーションを取っていると、今自分がどういう段階で、その次にどういうことをしなければいけないのかということが分かりますから、過小評価は付けません。現時点の自分を越えて次のステージに行こうというときに、過小評価する人はいないからです。


社是や ロゴデザインは 企業理念の 翻訳

社是は全員が理解できるようにかみ砕いて表現する

経営者が企業理念をつくる上で難しいのは、既成の立派な言葉、自分が心酔している経営者の座右の銘のようなものを持ってきても、意味がないことです。
 社長室に貼ってあるような四字熟語や漢語で書かれた社是は、何十年も経営に携わった経験と勉強の中から腑に落ちてたどりついた言葉です。
 それを掲げた人が、20代の頃にそんな四字熟語を知っていたという話ではないのです。何十年もかけてその言葉に行き着いているのに、社員にいきなり理解しろというのは無理な話です。社員も何十年も経験を積み上げてその言葉にたどりついていくものなのです。
 社是があるのであれば、それを別の言葉でもっとかみ砕いて、社員全員が理解できるように客観的につくっていかないと意味がないのです。

会社のロゴデザインも企業理念の翻訳

経営者には〝翻訳のスキル〟が求められます。現時点のステークホルダーや、将来のステークホルダーに向けて、創業者の想いを分かりやすく伝えていく必要があるからです。社是も会社のロゴデザインも企業理念の翻訳です。社是は社長室に掲げただけでは浸透しません。翻訳が必要なのです。
 例えばデザインにおける翻訳というのは、コーポレートロゴやキャラクターのコンセプトやカラーを、企業理念とリンクさせることです。赤を使うのであれば、赤を使う意味が必要なのです。後付けでも構わないので、ちゃんとしたストーリーをつくるべきだと思います。

無形のものに 投資できる企業だけが グローバルで 成功できる


スターバックスは思いつきでロゴマークを変えているわけではない

 スターバックスのロゴマークは、創業から現在までに少なくとも4バージョンあります。創業時( 1971年)のもの、1987年バージョン、1992年バージョン、2011年バージョンです。
 チェーン展開を始めたのが1986年ですので、同時期の翌年にロゴを変更するというのは納得できるのですが、その後の二回の変更は、果たして必要があったのかという疑問を持つ人もいます。
 店舗のロゴを変えるということは、印刷物から看板からカップから何から全部変えるわけですから、かなりのコストがかかります。しかも2011年時点では、世界中に相当数の店舗があったわけです。
 スターバックスは、それだけのコストをかけてでも、自分たちのブランドを維持していくという選択肢を選んだのです。思いつきでロゴを変えているわけではありません。思いつきで何百億円もの予算は通りません。
 企業は、投資した分のリターンを取らないと会社が潰れてしまいます。もし、ロゴを変えることによって何百億円というコストがかかるのであれば、ロゴ変更によって、それ以上のバリューや価値を生むと見込んでいたはずです。
 スターバックスは、価値を生むと確信しているから投資をしているのです。ブランド戦略の投資に関して、意気込みや戦略が、他社よりも一歩も二歩も先を行っています。
 グローバルブランドで勝っていくためには、それ相応の投資や覚悟が必要です。かけた投資に対して、どうリターンを取っていくのかということを、ビジネスとして考えられる企業が勝つのだと思います。

無形のものに投資できる企業だけがグローバルで成功できる

スターバックスが変えたのは、それだけではないと思います。ロゴ変更をきっかけとして、ブランドに対する想いや価値を徹底的に見直しているのです。今後、ブランドバリューを上げられるという見込みや勝算があるから、ロゴマーク変更に投資をしたわけです。これは、実はロゴマークではなくてブランドという無形のものに対する投資です。
 ほとんどの企業は、このような無形のものに対する投資を行っていません。グローバルブランドとして成功するためには、無形のものの価値をどれだけ高めていくのかという戦略ができていないと難しいと思います。
 ブランド戦略というとデザインに目が行きがちですが、デザイナーがすごいものをつくってくれたからその企業が伸びるというほど甘い時代ではありません。リブランディングで成功する企業というのは、デザインの裏側で戦略の練り直しやビジネスモデルの再構築などを行っているのです。


海外だからこそ 自社の価値感を わかりやすく伝える

どういうスタンスで仕事に取り組んでほしいのか明確に伝える

 企業が海外に進出する際に大事なのは、どんなに日本で知名度があったとしても、海外では社員や顧客に対して、どんな会社でどんな価値観を大切にしている会社なのか、より分かりやすく伝えることです。
 大変なのは、「分かりやすい」というレベルが人によってまちまちだということです。
 日本では、文化的なバックグラウンドが共通しているので、10を説明するのに10話す必要はないのですが、アメリカにしろヨーロッパにしろ、いろんなルーツを持つ人が住んでいるので、文化的な背景がそれぞれ違います。背景が違うということは、受け取り方も違ってくるので、より丁寧な伝え方が必要になります。日本で社員や顧客に接する以上に、自分たちの理念や価値観や方向性を前面に示さなければなりません。
 グローバル展開をしている企業の多くは、人が定着しないという悩みを抱えていますが、日本人とはメンタリティーが違うからとあきらめる前に、どういうスタンスで仕事に取り組んでほしいのかということを、それぞれの国の言葉で明確に伝えるべきです。
 仕事の取り組みにおいて、日本人だから、アメリカ人だからなど国籍は関係ありません。事前にきちんと自社の方針を説明して、理解してもらう手間をかけて、それに共感してくれる人に来てもらえばいいのです。会社の方針や大切にしている価値観を明確化して、評価の基準も明示することで、モチベーションもそこにつながっていきます。
 成長や達成感を実感させるコミュニケーションの大切さは、日本においても海外においても同じだということです。海外では特に、ダイバーシティーを前提に社会は動いています。その中で、なんとなく社員にきてもらうことは無理ですし、なんとなくお客様に買ってもらうことも無理です。
 「自分たちの会社はこういうビジョンを持っています。こんな価値を提供します」とはっきり言えなければ、社員には来てもらえないし、お客様も買ってはくれないでしょう。
 人それぞれだからこそ、共通の目標が必要なのです。自分たちの会社は、社会のこういう方向性にコミットしていくという構えが求められるのです。
 しかも、ビジョンは普遍的である必要があります。日本人だから受け入れられるような特殊なビジョンなど存在しないのです。

ミッションを理解して海外に行く人が少ない

 日本企業が海外に進出する際に問題なのは、駐在員の任期が短すぎることです。仮に3年で交代になった場合に、そのうちの1年間くらいは、場に慣れることで費やしてしまいます。言葉もやっと覚えてきてコミュニケーションもスムーズにいきだした頃には交代です。
 適材ではない人を行かせるのも問題です。マネジメントの経験がないのに、英語が話せる、海外留学経験があるからというだけで人選される場合があるのです。
 英語を話せるに越したことはありませんが、昔の駐在員の話を聞くと、現地に行ってから必死で言葉を覚えた人も結構多かったようです。それでもその人たちが責務を果たすことができたのは、自分がミッションを成し遂げるために来ていると自覚していたからです。
 せっかく海外に派遣されたのに、ミッションを感じるよりも「行かされた感」が強くて、とにかく3年間辛抱すればいいと思っている人が、大企業にも少なからずいます。これはもったいないことです。
 海外でマネジメント業務をすることについての勉強もしていなくて、しかも英語ができるといってもどの程度のレベルなのかということです。
 逆のことをイメージしてもらったら分かると思うのですが、中国人やアメリカ人が1年間くらい日本への留学経験があるからといって、いきなりあなたの上司になるでしょうか。


かつての大企業が ダメになった 理由から学ぶ

ルールだけグローバルスタンダードに合わせてしまう愚

 あくまでも私の考えですが、かつての大企業が停滞に陥る理由は、ルールだけをグローバルスタンダードに合わせてしまうことが一因ではないでしょうか。
 トヨタなどは、ISO( 国際標準化機構)規格をやめてしまいました。自分たちが定めている基準のほうが上回っているので、わざわざ低い規格に合わせる意味がないからでしょう。
しかし多くの企業は、自社の定めた基準や製品のクオリティーも高いのに、世界基準に合わせようとしています。それが実務と合っていなくてもです。ISOを取ったら信用につながるといいますが、それ以前に、信用を高めるためにいろいろ努力をしてきたシステムとの間で違和感があってもやるわけです。
 プライバシーマークもしかりです。プライバシーマークの協会がどれだけ電子的な情報セキュリティに特化しているのかといえば、まったく古いわけです。それなのに、いまだにプライバシーマークを取ろうとして、そこにお金を払って、その対応に人手や時間をとられている企業があるのですから、おかしな話です。
 同時に、ルールばかり押し付けると、形で仕事をするようになります。このルールの押し付けから、コンプライアンスや本来の企業の危機管理に対する認識の薄れが始まってきます。
 ルールさえ守っていれば大丈夫、形だけクリアしているのだからいいでしょうという考え方です。それが進むと、ルールが本人たちの思考を止めます。もちろんルールは大事で必要ですが、自分の頭で考えないことで字義通り形骸化しているのが、企業におけるコンプライアンス違反です。

会社の方向性に合わせてつくる

 前述したように、企業理念や経営者の考え方が社員に浸透して、同じ方向を向いていればいいのですが、ルールや取り決めだけで物ごとを進めていくと、会社の方向性とは違うものが動いてくるのです。
 なぜかと言えば、グローバルスタンダードの規約やルールは、その会社の理念や方向性に合わせてつくられているわけではないからです。本来、コンプライアンスや会社のルールも、会社の方向性と合わせてつくらないと、ダブルスタンダードが起こるのです。
 アメリカの優良企業として知られるジョンソン・エンド・ジョンソンは、全社員に理念の浸透を図り、どこまで浸透しているか調査を行っています。
なぜかと言えば、一番はコンプライアンスを守るためです。同社は医療機器や医薬品を取り扱っているので、消費者の健康に非常に大きな責任を負っています。そのことを全うするためにも、社員の倫理感を重視しているのです。
 会社と社員の方向性にギャップが出てくると、必ず問題が発生します。例えば、「この日をノー残業デーにしよう」と経営者が言っても、流行に便乗しただけのルールの導入であれば、他の曜日の残業時間が増えるだけの話です。やるのであれば、自分たちの方向性に合わせてやるべきです。うちは生産性を追求する会社だから、世間に先駆けて週休3日制にしてしまおう、というなら面白いではありませんか。「こうしたい」という想いが先にあって、それに合わせるためのルールづくりであればいいのですが、行政から言われたからとか、とりあえず形だけ導入する、ということには何の意味もないのです。宿題を強制されている子どもと一緒です。
 本来は自分が知識を習得するために学習するのですが、その意味を理解しないと、とりあえず終わらせればいい、提出できればいいという風になってしまいます。とりあえず終わらせればいいという文化が身に付いてしまうと、企業の場合は、コンプライアンス違反や会社のブランドを窮地に陥れることにつながっていくのです。


ダイバーシティーへの 取り組みも ブランド戦略の一環

何のためにダイバーシティーに取り組むのか。ゴール設定が大事

 日本の社会は、大きな構造変化の時を迎えています。今後、少子高齢化が進んでいくと、日本人だけで高齢者を支えていくのは不可能になります。
 もっと多くの外国人に来てもらうしか手はありません。外国人が来れば文化もどんどん変わっていくでしょう。今まで通用していた日本人同士の暗黙の了解が使えない時代になってくるわけです。
 企業がグローバル化やダイバーシティーに取り組まなければならないのは、単なる流行ではなく、時代の変化に対応するために必須です。
 女性を活用するとか外国人を採用するといった場合に、企業ごとに到達すべきゴールの設定が不可欠です。ただ単に多様性を高めようという議論では、意味がないのです。
 一番良くないのは、仮に外国人の雇用を国が政策として打ち出してガイドラインをつくり、それに対する助成金を出すとなったときに、助成金ほしさに、自社の方針とは関係ないところでガイドラインを導入することで、社内がダブルスタンダードになることです。
 本来は、「うちの会社もグローバル化していくので、外国人を採用して付加価値を生み出していこう」という戦略の一環として取り組むべきものです。
 何のためにダイバーシティーに取り組むのか、ゴール設定が大事になるということは、ますます企業理念も大切になってきます。ダイバーシティーをブランディングに結びつけていくということです。


コンプライアンスと ブランディングは 表裏一体

品位の高い会社ほど社内の不正頻度は低い

下の表は、品位係数( Integrity Index )と社内の不正頻度の関連を表したものです。品位係数とは、倫理観に対する企業文化を可視化したもので、係数が高いほど品位がある、イコール企業文化が浸透していると考えてよいでしょう。
 結果は明らかです。品位係数が高いほど、社内の不正頻度は低かったのです。逆に品位係数が低い、つまり企業理念が社員に浸透していない企業では、さまざまなコンプライアンス違反が起こっています。
私たちは、各企業で企業理念にリンクしたコンプライアンスの調査も行っています。そこでも会社とベクトルが合っていない人は、潜在的なリスクがあるという結果が出ています。不正を働く社員は、会社が進んでいこうとする方向とベクトルが合っていない場合が多いです。

コンプライアンス違反を正当化しない企業文化をつくる

「不正の3原則」というものをご存知でしょうか。①機会―不正を犯すチャンスがある、②正当化―不正行為を正当化してしまう、③動機―不正を犯す動機がある―、人間はこの三つの原則が揃った時に不正に走りやすいというものです。
 世界の多くの企業において、IT技術への投資で「機会」の抑え込みに取り組んでいますが、完全な機会ゼロを実現するには至っていません。また、「動機」は、人間の欲求に基づくものですから、これも完全に抑え込むことは難しいです。
 残る一つの「正当化」は、私は抑え込むことができると考えています。「不正は必ずばれる」という意識と「何が正しいことなのか」についての認識を組織全体に浸透させることによって、社員は不正を正当化することができなくなるはずです。「会社のために」不正に手を染めるケースも多々見られます。売り上げの数字を改ざんしたり、重大な問題を隠蔽するなどがこれにあたるでしょう。この場合には、「会社を思う自分」を正当化してしまっているわけです。
 大企業で組織ぐるみの違法行為が明るみに出るたびに思うのは、これを違法であると認識していた人は大勢いただろうに、ということです。企業理念や社員がとるべき行動規範が浸透していない組織や形骸化している組織では、社員は勝手に上役の意思を「忖度」して行動するので、不正がなくならないのです。
 コンプライアンス違反をする社員がいる企業と、そうでない企業では何が違うのかを考えていくと、企業理念を浸透させて、違反する人たちが発生しないような企業文化をつくっていくことが、一見遠回りのように見えて、実は一番効果的であることが分かります。


chapter 4

地域ブランディングを成功させる条件

Conditions to make regional branding successful

日本の人口減少が叫ばれる中で、グローバル化と地方創生は企業や自治体にとって大きな課題です。
日本にはグローバルでも輝けるモノがたくさんあります。それらをどのようにすれば世界へ発信することができるのか。
これからの地域ブランディングは、ビジネスでの豊富な経験と発想力、グローバルの視点を持った人材が必要になります。


地域ブランディングの 問題点を把握する

地域ブランディングは何にフォーカスすべきか調整が必要

地方自治体でブランドづくりというと、キャラクターづくりに終始してしまって、ぼんやりとしたコンセプトのものができあがってくるケースがほとんどです。「ゆるキャラ」をつくることが地方活性化だと勘違いしてしまっているのです。
 企業の場合は、集客する、売り上げを伸ばす、人材を集めるなど、ある程度目的がはっきりしていますが、地域ブランディングにおいては、目的が明確ではないことが多々あります。一見、目的がはっきりしているように見えても、実際に話を聞くまでは分かりません。話を聞くと人によって違う答えが返ってくるからです。ですので、何にフォーカスすべきか調整が必要になってきます。

地域ブランディングは何にフォーカスすべきか調整が必要

 企業のコンサルタント以上に、地域コンサルタントは難しいというのが実感です。企業の場合はそれなりに専門知識を持った人が担当することが多いのですが、地域がブランドづくりをしようという際に、市や県の職員などブランドづくりの専門ではない人たちが精査をして代理店などに発注します。彼らも専門家ではないので、安全策を選んで他の自治体が依頼しているところに安易に頼んでしまうケースも見受けられます。そして多くの場合、コンセプトを詰めていないので、結果どこも似たようなプランになってしまうのです。
 地域コンサルタントの案件に関しては、何をしたいのか、誰がリーダーなのか、分からない状態からのスタートになることが多いです。
 ビジネスをしたことがない自治体の職員が責任者になると、どういうことが起こるのか。自分にとってリスクが少ないコンサルタントや業者に依頼しがちです。しかし、リスクを取って価値を出すのがビジネスですから、新しいことに挑戦しなければ変化を起こせるようなプロジェクトは生み出せません。今うまくいってなくて、なんとかしようと思っているときに、うまくいっていない担当者の発想で決めても変わり映えしないでしょう。
 繰り返しますが、価値のあるブランドというのは目に見える形で存在しているわけではありません。目に見えないものに投資をしなければいけないときに、普段からチャレンジをしたことがない人間に何かを決裁しろというほうが無理なのです。
 普段準備をしていない人が、いきなりフルマラソンを走ったら体が壊れます。それと一緒なのです。普段からやったことのないことをやらせたりするようなことが、地方自治体で起きています。すると一部の知ったかぶりの人たちが現れ、自分たちの利害関係に都合よくものごとを進めているのが地方の問題なのです。


地域ブランディングは 周囲を巻き込み 気持ちのベクトルを 合わせる

美濃焼の産地=「セラミックバレー」での取り組み

 私たちは、岐阜県にある美濃焼の産地を、「セラミックバレー」と名付けたブランド戦略に関わっています。日本における陶磁器のマーケットが縮小する一方で、世界のマーケットは拡大しています。その世界マーケットにどのようにしてアプローチしていくのか、さまざまな企業の実践をお手本にしながら、美濃焼のブランドづくりを進めています。
 陶磁器業界の人たちだけを対象にしているわけではありません。他にもいろいろな産業があるので、彼らの協力も得る必要があります。ブランディングによって、その地域全体に還元できる仕組みでなければ意味がないのです。
 焼き物をきっかけにその地域にお客様が来たら、飲食店や他の産業にもプラスになるように、動線を考えてあげないと長続きしません。展示会やフェスティバルなどをするのであれば、事前にそうした方たちとつながりをつくり、終了してからも継続的な関係性を構築するのです。

重要なのは「地域の人々」を巻き込む

 地域のブランディングをする場合のメンバーは、そこに住む人全員と考えます。そうなると当然、いろいろな考え方や立場の人が関わってきますから、意思決定者も多くなり、調整力やまとめる力が必要になります。
 気持ちのベクトルを合わせる作業を先にしておかないと、うまくいかないのです。地域ブランディングでは、どこまで裾野を広げて一般の人々を巻き込むかが肝になります。私はそこも含めてブランディングが必要だと考えています。


地域ブランディングは 知恵や経験に お金を使う

売る側の「だろう」という安直さが通らない時代

 地域ブランディングでは、「とりあえずつくってみました」「よそも売れているから、うちも売れるだろう」という安直な考え方が壁になることがあります。例えば地方の物産展や道の駅に行くと、その土地の名物と謳いながら、どこにでもありそうなものが置いてあります。野菜があって、乾物があって、かまぼこ類があって、時々ソーセージがあって……。あとは、ソフトクリームを置いておけばOKといった感じでしょうか。
 どんなお客様をターゲットにしているか一目瞭然です。お土産では消費者に1回買ってもらえればおしまいで、リピート商品になっていないのです。
 価格の設定もそうです。コンビニやスーパーでは100円、200円で買えるものが、土産物だと500円、1000円取るわけです。なぜかというと、お土産だから財布のひもが緩むだろうという考え方です。
 昔はそれで良かったかもしれませんが、今は売る側の「だろう」という甘さが通らない時代です。
 同じ価格であれば、大抵の食材はコンビニのほうが美味しかったりします。そう考えたときに、自分たちの商品にどうやって付加価値をつけていくのか。
 ソフトクリーム一つとっても、ここまで足を運んでもらって本当に美味しいものを食べてもらおうと努力しているのか。地元の野菜や果物を使用したソフトクリームをつくるけれども、つくっただけで満足していませんか、ということです。
 地元の野菜を使うなら、その野菜を使って本当に美味しいものをつくるためのブランディングのプロが必要なのです。「よそがやっているから」では勝ち、そして残れないのです。

ブランディングのプロならいろいろな可能性を考えることができる

 地域の人たちにも、本当に美味しいものをつくりたいという気持ちは絶対にあります。ただやり方が分からないだけです。
 私たちのようなブランディングのプロであれば、地域に貢献したい〝名実ともに〟一流のシェフをつなげられるし、いろいろな可能性を考えられます。お金をたくさん使わなくてもブランディングはできます。
 村をあげて本当に美味しいソーセージをつくるのなら、例えば、美味しいといわれるレストランを何軒も回り、一緒に共同開発してほしいと依頼すべきなのです。どこにも負けない何かをどこまで追求できるかが勝負です。
 しかし多くのところは、「これくらいでいいだろう」と妥協してしまいます。これが本当にブランディングを邪魔しているのです。
 地方に行ってがっかりするのは、言い訳が多いことです。「自分たちには無理」とか「知らないから」とか。知らないのであれば、調べるべきです。
 自分たちでできないと思ったら、知恵と経験があるところに依頼すればいいのです。ノウハウにお金を払うという感覚がないので抵抗感があるのでしょう。しかし、ハードをつくるわけではないので、莫大なお金がかかるわけではないのです。
 地域ブランディングにおいて、グローバル視点が欠けていることも、もったいないと感じることの一つです。実際、日本には農産物でも伝統産業でも、今まで世界で通用しないと思われていた分野で、世界から引き合いのあるものがたくさんあります。
 一方では名物、名産といいながら自己満足で完結している部分があり、もう一方では国際的な競争力がありながら外に出て行こうとしない消極性が同居している状態です。グローバル視点がないと、可能性を自ら殺すことになりかねません。
 今世界で起こっていることと自分の事業というものを、正しい感覚でとらえてつなげて考えることが必要です。

地域ブランディングは 「世界」の視点から

一緒に汗をかける人、世界を知っている人が必要

 ではどうすれば間違いのない専門家を選ぶことができるのか。
 まず一つには、地域に足を運べない人間はダメです。マメに足を運んで、その地域の人たちの話しに耳を傾け、見るべきものに手間をかけられる人でなければ務まりません。地方の人たちにしてみれば、確かに何か変えてもらいたいけれど、本気で取り組んでくれるのか疑っているのです。
 まず信頼関係をつくるまでにずいぶん時間を費やします。一緒に飯を食い、酒を飲むところから始めて、何回も足繁く通って、やっと一緒にやりましょうとなります。
 同時に、世界を見聞していて、いろいろな企業とコラボレートした経験も必須です。発想の幅を持っている人です。
 そういう人は限られてくるので、自治体のブランディングは難しいのです。頭でっかちも困るし、かといって、視野が狭くてもダメです。

ローカルにはグローバルで輝くものがたくさんある

 世界を見ると、これからは地域の活性化において、必ず「海外でも売れるだろうか」という視点が求められます。
 今の時代には、マーケットを日本人だけに限る必然性がありません。本当に良いものをつくっていても、日本人がその良さを理解しないこともありますし、一過性のブームで終わって長続きしないということもあります。それならば、目の肥えた海外の人を相手にしたほうがいいです。
 自分たちのものが、海外の人から評価されるとは思ってもいない人が大半ですが、ローカルにはグローバルで輝くものがたくさんあるはずです。


地域ブランディングは 発信したい 「想い」が核になる

地域にとって本質的にプラスになることを提供していく

地域ブランディングに携わっていると、地域にとって本質的にプラスになることを提供していくことがすごく大事だと実感します。「打ち上げ花火ですごいイベントをやりました」と言っても、大抵はその一発で終わって何も残りません。「何か格好良い」で終わらせずに、人々がその地域に足を運んだり、行動に移させる力がないと、地域がうるおったり、本質的なプラスは生み出せないのです。
 上辺だけではなくて、その地域の産業や伝統文化を残していくにはどうしたらいいだろうかというときに、根元を支えるためのサポートをすることが地域ブランディングだということを忘れてはいけないのです。
 私たちの地域ブランディングは、そこにフォーカスしています。地域の産業や伝統文化の継承をスムーズに行うために、投資を募ったり、世界にPRしたり、周囲をうまく巻き込んで、外部から「いいね」と言ってもらえるモノをつくっていくことが、地域ブランディングなのです。
 私たちは、地域の若い経営者を集めて勉強会を無料で開催しています。親から引き継いだ仕事を今度は次の世代に残していくために、彼ら・彼女らが何をしなければいけないかということを一緒になって考えています。
 これは私たちのビジネスとしては成り立っていないのですが、そこまでやるくらいでないと、地域ブランディングの仕事はできないのです。自分たちの持っているノウハウを本当に活かせるかどうかということも含めて、社会貢献的要素が強いです。

どこの国であろうと、人は「想い」に共感する

 私たちが今まで企業の海外進出のサポートや日本ブランドを世界に売り込んだりする中で感じているのは、良いモノを持っていけば売れるのではないということです。モノではなく「想い」を持っていくことの重要性を感じています。どこの国であろうと、人はその想いに感銘を受け共感をするのです。
 外国人がつくった日本酒をイメージしてみてください。最初は「外国人がつくった日本酒なんて」と抵抗があるでしょう。しかし、米や水のことを日本人よりも真摯に研究してつくったという想いが伝わってきたなら、評価が全然違ってくるでしょう。その地域の人が取り組んでいる姿勢や想いをしっかりPRしないと、いくら製品が良くても伝わらないのです。
 私たちには企業のサポートで培った実践とノウハウがあります。地域や自治体にそれを還元して貢献できるところに、私たちが存在する意味があると思っています。地域のブランディングで学んだことを、今度はビジネスに活かすことができるので、それが私たちがいただく対価になります。


お金以上のサービスを 提供することが 信頼に結びつく

ブランディングは目に見えないもの

 私たちがいろんな企業や地域のブランディングのお手伝いをしていく中で心掛けているのは、クライアントさん自身に成長してもらうことです。クライアントさんのブランド力が上がることが一番大事だと思っています。
 商品カタログで言えば、商品をきれいに見せて製品の良さを知ってもらうのがカタログの役割です。私たちは製品にあたるクライアントさんや、そのクライアントさんのブランドをきれいに見せるとか、素晴らしく見せる、良いイメージを持ってもらうことに特化している会社です。

私たちでなければできない仕事ができているかどうか

 クライアントさんが払っているお金以上のサービスを提供することが信頼に結びつきます。ブランディングは別に形があるものではないので、目に見えないものを売っているわけです。
 払っている対価以上に何かを得ている、払っている対価以上にサービスを受けていると思ってもらえるようなことにしっかり取り組んでいかないと、次の仕事につながらない仕事なのです。
 私たちでなければできない仕事ができているかどうか。別にB社でもC社でもよかったねという仕事であれば、次につながったり、企業のブランド力を上げることにはつながりません。
 日本人は、まずいものを食べても「まずい」とは言わずに、「ごちそうさまでした」と言います。仕事が終わって「ありがとうございました」は誰でも言います。でも感謝されて終わりというのは、本当に満足していないからです。


経験値や感覚に 頼らない

バロメーターはリピート発注

「イマジナだからよかったね」という仕事を続けない限り、私たちを必要としてくれるお客様もいなくなります。数社の相見積もりの中で、私たちを選ぶ人はいるかもしれませんが、私たちを求めて来てもらうためには、私たちだからできることを絶えず考えてサービスの付加価値として提供していかなければならないと考えています。
 自分たちが、付加価値のあるサービスを提供できているかどうかのバロメーターとして、既存のお客様が新しいお客様を紹介してくれるかどうかが一番のものさしになります。リピート発注や紹介によって初めて、自分たちが認められていると実感します。

お客様やユーザー視点から徹底的に分析する

コンサルティングは目に見えない仕事なので、極論すれば根拠はありません。例えば、「これをこういう風にしたら格好良くなるよ」と言ったところで、それが有名なデザイナーであれ売れっ子のコンサルタントであれ、何の根拠があってそれを言っているのかということです。その多くは経験値や感覚なので、毎回当たるとも限らないわけです。多くの場合、発注者の自己満足で終わってしまいます。「あのデザイナーに頼んで、さすがにすごいのができあがった」と言うのですが、本当は付加価値アップのために貢献したかどうかが検証されないとまずいのです。おしゃれとビジネスは違うからです。
 経験値や感覚に頼らないためには、自分たちの付加価値を上げるための戦略について、お客様やユーザー視点から徹底的に分析する必要があるのです。どうしたらお客様がお金を払う価値があると認めてくれるのか、値段設定も含めて突き詰めて考えるべきです。他社がこれくらいだからとか、平均これくらいだからといって決めるのは、本来おかしいと思います。
 私たちのブランド戦略は、大きく分けて四つのステップから成ります。
 第一に「現状整理と課題の設定」があります。ブランドの強み弱みを浮き彫りにします。
 第二に「ブランド戦略の指針策定」があります。ブランドに顧客が何を期待しているのか、顧客にとってのブランドの意味を再確認します。
 第三に「行動計画の策定」があります。スローガンやPR手法について検討します。
 そして第四が「価値観形成のための施策展開」です。商品やサービスに関わるクリエイティブの開発や広報、イベント、外部に向けたコミュニケーション等々が展開されます。
 ブランディングは目に見えない領域だからこそ、どんなプロセスを通ってゴールを目指して、その投資がどんな風に回収されるのか、イメージできるようにプロジェクトを進めていくことが大事なのです。


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